昨日は照りつける太陽で焦げてしまいそうな熱さの一日でした。
取材に行ったのは、チャレンジリーグの上位対決、オルカ鴨川(首位)vs 大和シルフィード(2位)の天王山@富津臨海陸場競技場(千葉)。



オルカ鴨川のユニフォームやグッズを身につけ、チームカラーの青いTシャツを来た方がたくさん。
「父の日富津ファミリーデー」ということで、ファミリーで来ているお客さんも多く、その数なんと1410名!


{2E74302B-2F4B-4D56-BBD3-279CE63C35D2}


富津や君津など、4つの中学校の生徒の皆さんも応援に来ていました。

ここまでリーグ8連勝中、勝ち点24で首位を独走するオルカ鴨川。2014年に創設され、わずか2年でチャレンジリーグまで上がってきた新進気鋭のチームです。
チャレンジリーグは、なでしこリーグ3部にあたるカテゴリーですが、以前1部リーグで活躍し、チャレンジリーグで再スタートを切っている選手も増えていますね。
オルカ鴨川も、創設時はなでしこリーグ経験者6人を含む17人でスタート。選手兼監督としてチーム立ち上げに携わった北本綾子監督は、元浦和レッズレディースのFWで、なでしこジャパンにも名を連ねたストライカー。
昨年まで現役選手でもありましたが、今年から監督に専念。
タッチライン際でチームを鼓舞する背中は、今にもピッチに入って走り出しそうな雰囲気を醸し出していました。

スタメンは…

【オルカ鴨川】

 永木真理子  松長佳恵

佐藤衣里子 松長朋恵 今井さゆり 中島亜弥香

木原梢 高橋奈々 柴田里美 中村真実

     有馬静佳

特に、ディフェンスラインに経験豊富な選手が並びます。GK有馬選手は元エルフェン埼玉、DFラインの中村選手と高橋選手は元ベガルタ仙台レディース、木原選手は元浦和レッズレディース、柴田選手はドイツのMSVデュイスブルクから。前線では双子の松長姉妹(元伊賀)のホットラインも。
ここまでの8試合で奪われたゴールは「0」という驚異的な記録を継続している原動力ですね。



一方、アウェイの大和シルフィード。
大和は2011年W杯優勝メンバーの大野忍選手、川澄奈穂美選手、上尾野辺めぐみ選手の出身地でもあり、川澄選手と上尾野辺選手の出身チーム。



【大和シルフィード】

  三堀静香 石渕優紀

堀良江 橋本紀代子 山崎友希 松山智

内海結衣 岡森香沙音 四方菜穂 千田満里奈

    中澤唯


シルフィードはオルカに比べると若い選手も多いのですが、DFラインを統率するのは、アジア選手権などで活躍した元なでしこジャパンの四方選手。
小野寺志保選手(2nd GK)は、アトランタ五輪、アテネ五輪に出場したなでしこジャパンのレジェンドの一人でもあり、こちらも頼もしいベテラン選手たちがチームを精神的に支えています。

スタンドでは鮮やかなオレンジ色のユニフォームを身に付けたシルフィードサポーターも熱い応援で盛り上げていました。

{2D2BCC93-131B-4392-922A-69433D8249F5}

{0F470A6E-3709-4AB9-AF93-E94BF65DD354}



ボールを持つと勢いを持って前に運ぼうとするシルフィードに対し、オルカはラインをしっかりコントロールして、ペナルティエリアの手前で死守。

中盤の攻防は一進一退でしたが、ミスが少なかったのもオルカ。奪ってからの組み立てでは、佐藤選手と松長選手を中心に、カウンターを仕掛けるところとタメを作るところのメリハリが効いていて、その緩急や判断は鴨川が一枚上手の印象でした。



3分 鴨川 左サイドの佐藤選手が左サイドからファーサイドを狙ったシュートはゴールを横切って枠の外へ。

15分 鴨川 中島選手のFKを今井選手が頭で叩き付けますが、シュートは僅かに枠の左へ。

16分 鴨川 こぼれ球を今井選手が30mの距離からミドルシュート。GK正面。

18分 鴨川 CK。佐藤選手のキックに高橋選手が高い打点で飛び込み、先制!ゴールパフォーマンスはウサギのポーズ。

24分 大和 三堀選手の落としを石渕選手が右サイドの角度のない位置から狙いますが、サイドネットへ。

37分 鴨川 バイタルエリアで受けた松長(佳)選手から松長(朋)選手へのスルーパス。これがニアサイドに決まり、オルカに追加点。
深い切り返しから頭の後ろに目がついているような、絶妙のスルーパスに、双子ならではの阿吽の呼吸を感じました。決めた朋恵選手は「得点をとること」を今シーズンの目標にあげていたそうで、9試合目にして目標達成。

ハーフタイム、父の日イベント。千葉県鴨川市のイメージキャラクター、たいようくん(鯛)と、鴨川シーワールドのオルタン(イルカ)も。

{62753CA3-3F0C-41A6-A335-D159711C8394}


「大和シルフィードの皆さん、遠路はるばるありがとうございます!」と、アットホームなスタンドが居心地良かったです。

HT 大和 橋本紀代子→冨山瞳

シルフィードは中盤に体の強い冨山選手が入ったことで、中盤でボールを失う回数が減り、ゲームを組み立てる回数が増えた印象でした。

51分 大和 ダイレクトパスを4本つないでプレスを交わし、一気に前線へ。松山選手の縦パスに石渕選手が追いつき、シュート性のグラウンダーのクロス。ファーサイドに三堀選手が走りこんだものの、タイミングが僅かに遅れてシュートはバーの上へ。

押し込まれる時間帯が増えたオルカは、柴田選手が後方からのロングパスを狙いますが、シルフィードは高いラインを保ちながらも、ロングボールに対しては四方選手が素早い読みで相手より先に体を入れて、クリア。このあたりのゲームコントロールに、経験から来る駆け引きの面白さを感じました。

ここからは、両チームの監督が交代カードを次々に切っていきます。
チャレンジリーグの交代はGKを入れて5人まで。

61分 鴨川 佐藤衣里子→西尾麻奈美
62分 大和 千田満里奈→梶原絵那
64分 鴨川 中島亜弥香→村岡真実
70分 鴨川 永木真理子→平野里菜
70分 大和 石渕優紀→米田早希

71分 大和 入ったばかりの米田選手がチャンスを作ります。ゴール前の混戦から決定的なチャンスを迎えた米田選手でしたが、シュートはオルカDF陣が体を投げ出してブロック。

77分 鴨川 交代で入った平野選手がDFを置き去りにし、裏のスペースに出されたボールに追いつくと、枠を捉えた鋭いシュート。GK中澤選手が鋭い反応で弾き出します。
「決めたかった」と、平野選手は試合後に悔しそうに話していましたが、スピードスターの真骨頂、という場面でした。昨年まで所属したINACでは度重なるケガで出場機会に恵まれませんでしたが、今後、オルカでそのあり余るスピードがどう生かされていくのか、楽しみですね。

81分 大和 四方菜穂→西野菜々華

88分 鴨川 後半は押し込まれる時間帯も多かった鴨川ですが、試合終了間際に松永佳恵選手のシュートが決まって、リードを3点に。

89分 鴨川 今井さゆり→石井友莉奈

ここで試合終了。

試合を振り返ってみると、攻撃面ではパスの正確さや勝負どころでの大胆な判断、守備面ではラインコントロールの丁寧さや呼吸などが、3点の差に現れていたように思います。
ただ、シルフィードも後半はチャンスを作る場面が増え、ゴールが生まれそうな場面もありました。
そういった経験の差、様々な技術の差を実感できるのも、今季のチャレンジリーグの面白さだと思います。

シーズン6ゴール目で得点ランキング1位に躍り出た、オルカの松長(佳)選手。
「苦しい時間帯もディフェンスラインの選手たちが体を張って守ってくれていて、前で絶対に点を取りたいと思っていたので、自分が決めることができて嬉しいです。ここまで来たら全勝したい。熱さに負けずに戦います」
朋恵選手のゴールをアシストした場面もそうですが、お互いの目の合わせ方や声の揃いかたなど、いろんな面でシンクロしているのが印象的でした。「キャプテン翼」の立花兄弟のような双子の呼吸もオルカの武器ですね。

開幕から9試合連続無失点。守備の要となった柴田キャプテン。
「危ないシーンもたくさんありましたが、GKも含めて全員が集中してゼロに抑えられたのは自信になりました。失点ゼロにこだわって練習をしていますが、ここまで(無失点が)続くのはいろんな運もありますし、日頃のみんなの集中力とか練習の成果が出せていると思います」(柴田選手)

北本監督も、守備面については運もあることを強調していました。
「後半は厳しい戦いでした。連戦の疲れもある中、最後まで頑張って走ったことで最後の1点が入ったと思います。今日の試合を見て分かったと思いますが、1試合に危ない場面が結構あるんです。ラッキーとか、相手のおかげ、とか。GKとかDFが最後のところで頑張ったところもありますが、そこに行くまでがボールウォッチャーになってマークを外してしまう、とかそういうこともまだまだ多い。気持ちでなんとか収まっているのと、あとは神様のおかげですね」

最後はユーモアたっぷりに話していましたラブ


オルカは来週からアウェイ3連戦。
「ホームのような雰囲気を作ってくれるみなさんがついているので、勝ち点3ずつゲットしていきたい」(北本監督)

驚異的な無失点記録はどこまで続くのか、こちらも見所ですね。

一方、敗れたシルフィード。

「0-3と完敗でしたけれど、ちょっと何かが転がれば、可能性もあったのではないかな?と思いました。後半はチャンスもあって、それを前半の速い時間帯に出せていたら、と。速いプレッシャーの中で、みんなが怖がってしまっていました。誰かがそのプレッシャーを交わせて、時間を作るプレーが1つ2つ出ると、みんな「やれるかも」という気持ちになれるんですよね」(四方菜穂)

ポジショニングなどで光るプレーを見せていた四方選手は、精神面の課題を挙げていました。ベレーザの前黄金時代を思い出すような、的確なカバーリングと組み立てが見られて個人的にも楽しめました。

昨日は出場機会のなかった最年長のベテランGK小野寺選手の言葉にも力がこもりました。
「ボールを失ってしまう場面が多かったし、つなげるところでズレたりしてしまう。その点、オルカは一人一人の個がしっかりしているから、体をぐっと入れられて、相手ボールになってしまう場面もありました。他のチームはどこかに穴を見つけられたりもするんですが、(オルカは)選手同士の距離感がサッカー的にしっかりしていて、「きちんと」サッカーをしてくる。それに対してまだ慣れていないんですよね。プレッシャーを速く感じてしまうのも、チームとしての課題です。チームとしては、今年必ず昇格したいと思っています」

国際舞台でプレーしたハイレベルな感覚を知っている選手が同じピッチに立っていることは、オルカもシルフィードも、周りの選手の成長を促しているのでしょうね手描きふうクローバー


試合の後は、オルカの試合に出ていない選手(+交代で短い時間出た選手)が、帝京平成大学との練習試合を同じピッチで行いました。
帝京平成大女子サッカー部の監督は、矢野喬子さん!
先日のなでしこジャパンのアメリカ遠征第1戦の解説、分かりやすかったですきらきら

北本監督と矢野監督。浦和レッズレディースOGによる監督対決浦和レッズも見応えがありました。


創設3年目で快進撃を続けるオルカ鴨川。
地元に支えられ、大きくなっていくチームの進化が楽しみです。

「まず、U-15の育成に力を入れたいです。育成は、大学生、高校生、中学生で構成されていますが、U-15を切り離して来年以降チームを作っていきたい。今年から作りたかったんですが、人数が足りなかったのと、まだまだサッカーが盛んではない現状があります。やっとオルカという名前を知ってもらった段階だと思うので、今後はスクールなどどんどん普及活動をして、チームを作りたい気持ちがあります。10年~15年かかるかもしれないですが、地元のスーパースターを作りたい。それが地元への貢献でもあると思うからです」(北本監督)