なでしこリーグ8節
浦和レッズレディース vs 伊賀FCくノ一


浦和駒場スタジアムで行われた一戦を取材してきました。

開幕戦でベレーザと引き分けて以来、6連敗中の浦和(10位)。
気になるのは6節INAC戦、7節仙台L戦と、セットプレーからの失点が多いこと。
7試合を終えて、3得点15失点と、得点を増やすきっかけもほしいところです。


一方の伊賀は、ここまで2勝2分3敗の8位。
7試合を終えて3得点5失点と、積み重ねて来た前線からのハイプレスからのカウンターがはまり始めている印象で、ベレーザと並んで最少失点の守備の堅さが光ります。

両チームのスタメンは…

【浦和L】

       白木星 吉良知夏
加藤千佳              柴田華絵
       栗島朱里 筏井りさ
  北川ひかる 高畑志帆 長船加奈 乗松瑠華
         平尾知佳

ケガで欠場の猶本光選手に代わってボランチに入ったのは筏井選手。

【伊賀】

     杉田亜未 ローレン・ボハボーイ
下條あや              小川志保

     櫨まどか  那須麻衣子
畑中美友香 大橋実生 宮迫たまみ 武田ありさ
         久野吹雪

伊賀はボハボーイ選手が3試合連続の先発となりました。

前回の伊賀戦レポートはこちら

{9B202641-9F64-46DF-B51B-08E0ADA24D2D}


試合は序盤から、プレスの掛け合いに。
浦和は狭いスペースも相手のプレッシャーを技術でいなせる選手が多く、細かくつなぎながら積極的に縦パスを入れていきます。

4分 浦和 左サイドを持ち上がった北川選手のクロス。ニアに吉良選手、ファーに柴田選手が飛び込みますが、わずかに合わず…

9分 伊賀 ハーフウェーライン付近からのFK。杉田選手のキックにボハボーイ選手が合わせて後ろに逸らしますが、枠の左へ。

30分 浦和 右サイドのスローインをフリーで受けた柴田選手がペナルティエリア右角からシュート!巻ききれずにポストの外へ。

40分 伊賀 左サイドからのFK。一瞬のタイミングで抜け出した櫨選手がオフサイドラインギリギリで受けてシュート!完全にフリーになっていましたが、GK平尾選手が弾きます。

45分 浦和 ディフェンスのクリアを、筏井選手がワントラップで落としてミドルシュート。タイミングは良かったのですが精度は低く、シュートは枠の右へ。

0-0で後半へ。

後半も浦和が相手陣内に押し込む時間が続きますが、高いラインを保つ伊賀に対し、浦和はオフサイドに引っかかるシーンが目立ちます。

60分 伊賀 下條彩→サラ・ジャクソン

65分 浦和 加藤千佳→塩越柚歩

66分 浦和 中盤でためを作った栗島選手が、裏に走った北川選手のスピードを生かす絶妙のスルーパスを送ると、北川選手のグラウンダーのクロスに白木選手が飛び込みますが、僅かにタイミングが合わず…。

70分 浦和 左CK。北川選手が蹴ったボールは一度はクリアされたものの、セカンドボールを長船選手が拾って落とすと、北川選手が今度はダイレクトでクロス!高く浮いたボールに高い打点で合わせたのは高畑選手。体ごと押し込むような気持ちの入ったゴールでした。⚽️1-0

75分 浦和 乗松瑠華→臼井理恵

点を取らなければいけなくなった伊賀は、前線のボハボーイ選手とサラ選手を生かしパワープレー気味に攻めますが、先制した浦和は臼井選手を投入し、5バックで守備を固めます。
長身の3バック(高畑選手、長船選手、臼井選手)の厚い壁に、伊賀の攻撃はことごとく跳ね返されます。

76分 伊賀 櫨まどか→竹島加奈子

84分 浦和 栗島選手から、右サイドをオーバーラップした塩越選手へ。塩越選手がマイナス気味に送ったボールは味方に合わず。

85分 伊賀 小川志保→園村奈菜

88分 浦和 最終ラインのパスを奪った白木選手から迎えたチャンス。柴田選手からの展開。右サイドをオーバーラップした塩越選手が一人抜いてマイナス気味のパス。吉良選手がフリーで打ちますが、伊賀DFがクリア。

89分 浦和 白木星→後藤三知

ここで試合終了。伊賀は最後まで浦和の赤い壁を破ることはできず…浦和は連敗をストップして、今シーズン初勝利を飾りました!


浦和はスローイン時も各選手がポジションを変えながらスペースを作るなど、攻撃面で工夫し、トライし続けた姿勢が光りました。一方、伊賀も中盤の櫨選手や那須選手が球際での強さを見せ、中盤は両チームともスペースを消して相手の侵入を許さず。その中では、サイドからのクロスや裏を狙ったパスが増え、最終ラインがいかに集中を切らさず冷静に対応し続けられるか、という点も勝負の分かれ目となった印象です。


殊勲の決勝ゴールを決めた高畑キャプテン。決めた直後には大きなガッツポーズで喜びを爆発させ、一目散にベンチに走って喜びを分かち合っていました。

「初勝利がこんなに遅くなってしまったことで(応援してくれるみなさんに)申し訳ない気持ちと、一つ勝って次につなげられるという嬉しさがあります。(ゴール直後の感情について)あんまりよく覚えていないんですけれど、苦しんだ分今日の勝利は嬉しかったですし、こういうシーンを増やしていきたい。流れの中の点も取りたいですが、これまでも苦しい試合で勝てた時はセットプレーで点が取れていたこともある。そこに立ち返って臨んだ結果だったので良かったです。(監督からの指示について)試合をやるのは自分たちですし、このような状況にしてしまったのも自分たちなので。自分たちが変わらなければ状況は変わらない。一人一人が変わろうとした結果が勝利につながったと思います」


10代~20代前半の若い選手が多いレッズレディースで、キャプテンでありDFリーダーとしてチームを鼓舞する高畑選手の負担は決して小さくないと思いますが、その言葉にはすべてを受け入れて、前を向いている落ち着きと責任感が感じられます。


また、見応えがあったのは浦和の左サイド、伊賀の右サイドのマッチアップ。
小川選手(伊賀)のスピードに乗ったドリブルや裏への抜け出しに対し、北川選手(浦和)も一歩も引かず、逆に相手の勢いを利用して縦に抜く回数も多く、浦和のチャンスの起点になっていました。決勝ゴールをアシストしたクロスは、味方からの強いボールをそのままクロスでゴール前に放り込むという、難しいキックでした。

「中にヘディングが強い選手がいるので、ちょっとずれても競り勝ってくれると信じて(クロスを)入れました。連戦で体の疲れもありましたが、負けられないという気持ちの方が強くて、走りきることができました。(マッチアップする相手が経験のある選手でも気後れすることはない?)失うものがないので、どんな相手でも潰せる、勝てるという気がしていました。これまでは負け続けていることで、気持ちの面でチームが落ちていくこともあって。責任も感じて、本当におかしくなるんじゃないか、というぐらいメンタルに影響もありましたが、今日勝てたことでスッキリしましたし、次につながると思います。(代表入りへの意気込みについて)できるだけ早く入りたいですけれど、慌てずに自分を持って、一つ一つ成長していくことが大事だと思います。今年はU-20女子W杯で優勝することを目標にやってきているので、そこは変えずにやっていきたいと思います」


そして、ようやく連敗を抜け出した指揮官、吉田監督。

「内容自体は良くはなかったですし、ボールも動かせなくて、選手も精神的に難しい状況だったと思いますが、とにかく結果にこだわろうと話をしました。今週は中2日で時間がない中、ずっと取り組んで来たセットプレーで点が取れたのは良かったです。(先制後5バックにシステムチェンジしました)5バックは去年もやっていましたし、勝ちきる時には採用していますが、今年はまだ一度もリードしたことがなかったので(使う場面がなかった)。今日勝っても、崖っぷちであることは代わりません。2部に落としては絶対にいけないので、次も絶対に勝ちにいきます。(ボランチの組み合わせについて)筏井はボールを動かせる。栗島は守備に特徴がある。そこでバランスを取りました。ボランチは猶本がいない中でもうまくやりくりしていかなければいけません。(猶本選手のケガによる離脱について)彼女が間違いなくゲームを作る選手で、彼女がいない中でサッカーを構築しなければいけない難しさはあります。チームとしてそれではいけないんですけれども。今は辛抱しながらやっていきたいです」


攻撃面でゲームメイクを担った柴田選手は、ホッとした表情でした。

「中でも外でも全員が声を出し合って最後まで走り切れました。点が取れない中で、今日も泥臭くてきれいな点ではなかったですけれど、チームでみんなが気持ちを出し切った結果のゴールだったと思います。でも、勝った次の試合が大事だと思うので、準備をしっかりしていきたいと思います」


初の無失点&勝利に貢献したGK平尾選手は、各年代代表のGKが揃う中で切磋琢磨し、前節からスタメンの座を得ました。U-20代表のGK候補でもあり、今後トップでの活躍が期待される1人です。

「今年はまだゼロに抑えられていなかったので、チームの自信になったと思います。(今シーズンは外から試合を観る時間も長かったが)自分が出たらどうプレーしよう、というイメージは常に持って見ていました。シュートストップとクロスの対応は他の選手に負ける気がしないので、もっと伸ばしていきたいです。コーチングも、リーダーシップを取ってやっていきたい。練習中にも自分からアクションをして、チームメートと話すようにしています。(代表入りへの意気込み)目指しているのはなでしこジャパンに入ることなので、常に最大限にアピールして長所を見せていきたいと思います」


浦和は攻守ともに、連携も形になっていて、チームとしてのまとまりも感じていたのですが、「あと一歩」のところのミスによる失点が響いて「結果」が伴わない印象がありました。そのもどかしさを一番感じていたのは選手自身だと思います。猶本選手不在のボランチを埋めた筏井選手はこう話していました。

「攻撃で人数をかけられるし、良い精度のクロスも上げられるけれど、あと少しのところで合わないということがこれまでの試合でもありました。苦しかったですけれど、勝てるチームはそういうところでやり続けられるチーム。私が前に抜けることでサイドが中にドリブルできたり、2枚目の選手が見えてきたりもするので、縦への揺さぶりの動きを増やそうと意識しました。後半少しバテてしまったので、それを継続することが課題です」


連敗の泥沼をようやく抜けて、「ようやく片目が開いた」(吉田監督)レッズレディース。
一昨年の年間女王の意地をかけた追い上げが始まりそうですね。


伊賀はショートカウンターと遅攻を使い分け、遅攻の場面では低めのアーリークロス、グラウンダーのライナー性のクロス、ボハボーイ選手を狙った高めのクロスなど、強めのクロスで高さを蹴り分けて的を絞らせないクロスの種類の豊富さが光りましたが、最後までネットを揺らすことができませんでした。


中盤で攻守を支えた那須選手は

「移動も含めてからだが重いのはありましたが、それを差し引いても勝ち点が取りたい試合でした。去年からも、勝ち点3取れそうなところで終了間際に引き分けになってしまったり、上位相手に引き分けられそうなところでアディショナルタイムに入れられて負けたり。取りこぼし、といったら相手に失礼ですけれど、そういうところで積み上げていけたら、自分たちの位置も変わるんじゃないかなと感じています。前節のベレーザ戦(●1-2)から、前線からの守備はハマるようになってきていると手応えを感じています。でも、今は守備陣が頑張ってくれているので目立たないかもしれないですけれど、攻撃の時に中途半端な横パスを取られたりすることによって、失点につながるようなミスもある。そういうミスを減らして攻撃の回数を増やしていきたい。
(練習時間について)昼の明るい時間から練習ができているし、他のチームに比べても仕事が早く終わる分選手同士で長く喋れたりすると思うので、そういう時間にどれだけ費やしていけるかも大事だなと思います」


と話していました。ピッチ内外でもチームのまとまりを感じさせるチームだけに、どこで上昇のきっかけを掴むのか、見逃さないようにしたいと思います。





明日は長野に遠征予定ですウインク