AC長野パルセイロレディース vs 岡山湯郷Belle @南長野運動公園総合球技場(長野県)
3勝2敗の長野(5位)と、3勝1分1敗の湯郷(4位)の勝ち点差は「1」。


試合前には、大会スペシャルゲストの澤穂希さんによるイベントが行われていましたお願い

子供達は恥ずかしがりながらも一生懸命質問していましたが、みんなシャイですね

全員がドヤ顔で手を挙げるぐらい積極的になってほしいですが(笑)

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この対戦は、様々な縁があるカードでもありました。
湯郷の初代監督でもある本田美登里監督率いる長野には、かつて湯郷ベルに所属していた選手が何人かいます。
FW横山久美選手、ラマンガ国際大会で正GKを務めた林崎萌維選手、そして同じくGKの池ヶ谷夏美選手。
リーグ戦で既に8ゴールを決め、得点ランキングトップを走る横山選手の「1試合で1点じゃ足りない」という強気なコメントも頼もしいです。


「湯郷からの移籍組は想いが強いので、非常に締まった試合をしてくれると期待しています」と試合前に話していた本田監督。「ホーム戦の時はやろうと思いました」と、両手の爪を彩った綺麗なパルセイロカラー(オレンジ×紺色)のネイルも印象的でした。

長野は昨シーズン、2部リーグを首位で終え、2007年(当時は前身の「大原学園JaSRA」)以来8年ぶりに1部に昇格。得点王に輝いた横山久美選手(35得点/27試合)を筆頭に、昨季オフにレッズレディースから加入したDF坂本理保選手、MF齋藤あかね選手、FW泊志穂選手の活躍が光りました。
南長野に新しく完成した素晴らしいスタジアムと、各年代の代表経験を持つ若い選手たちが中心となった勢いのあるチームで、今季の戦いぶりが楽しみなチームの一つでもあります。「長野旋風を巻き起こしたい」と開幕前に意気込みを話したのはキャプテン(坂本理保選手)。実際、ここまでの5試合で昇格1年目とは思えない堂々とした戦いぶりで首位と勝ち点4差の5位につけています。


特筆すべきは、リーグ最多の「15」得点と、こちらもリーグ最多の「11」失点。試合を観る側にとっては、「取ったら取り返す」スリリングなスコアです。

2013年から指揮をとる本田美登里監督は、この数字についてこう話していました。

「見ていて楽しんでいただけるのは非常に嬉しいですが、やっている方は辛くて仕方がないです(笑)得点を多く取れている理由が、失点が多い理由にもつながっています。今まで(2部で)やってきたことを1部でもやろうとする中で、得点のところでは通用しているところがありますし、当然失点の理由も分かっています。失点については今後、選手たちのレベルを上げていくことで抑えていきたい。今はまだ1部の速さに戸惑っている部分があります。開始15分で失点しないようにしよう、ということを、ずっと1節から3節まで言ってきて、それができたところで、4節目でちょっと調子に乗って、開始20分で3失点。相手をリスペクトした新潟戦ではスコアに現れていました(3-1で勝利)。うちの選手たちは本当に、自分たちの立ち位置を、今の成績として捉えているのではないかと。3位の時は3位から目線で(笑)本当に、若さと強さでいっているので、リスペクトというか、謙虚な姿勢がないんですよ。「慎重に行け」という言い方をした時に、新潟戦のような戦い方ができるんですね」


良さも、未熟さも含めて、本田監督の言葉から、長野というチームの魅力がほとばしるように伝わってきました。


「なでしこリーグは10チームそれぞれに特徴があると思うんです。その中で、我々は下から上がってきた新参者のチームですが、INACのようなプレーはできないし、ベレーザのようなサッカーはできない。長野は長野なりに、お客さんが楽しんでもらえるような、ワクワクハラハラドキドキのサッカーをしたい。90分見終わって『はぁ~!』と肩の力が抜けるぐらいがいいですね(笑)長野の方々にまだまだ女子サッカーが馴染んでいない分、そういった形で楽しんでもらえるような試合ができればいいなと思っています。そのために、とにかく自分たちの特徴を出すサッカーをしていきたい。オリンピックに行けなかった分、どうやって女子サッカーを盛り上げていくの?と考えた時に、私たちは長野という地方都市から盛り上げていきたいなという想いがあるんです」

勝って上位に浮上したい長野。意地を見せたい湯郷ベル。
会場には、今シーズン最高の3648人が入りました。

両チームのフォーメーションは…


【長野】4-4-2

   横山久美 泊志穂

     児玉桂子
大宮玲央奈     牧井毬音
     國澤志乃

矢島由希 木下栞 坂本理保 野口美也

     林崎萌維



【湯郷】4-4-2

   松岡実希  高橋千帆

作間琴莉        森迫あやめ
    宮間あや 乃一綾

北浦美帆 高橋佐智江 野間文美加 中島千尋

      福元美穂


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試合は、慎重な入りを見せた湯郷に対し、長野は前半からエンジン全開。

1分 長野 大宮選手が左サイドを持ち上がってセンタリング。ゴールに向かうボールは、バーの上を越えます。

8分 長野 右サイドのスローイン。泊選手から受けた児玉選手のパスを受けた横山選手が、相手を背負った状態で振り向き、左に流れながらシュート!左足から放たれた巻き気味のシュートは、横に飛んだ福元選手の届かない位置にポストをかすめながらネットを揺らし、長野が早くも先制!体重を相手に預け、一見バランスを崩したようにも見える体勢でしたが、しっかりと軸足を傾けて狙い澄ました見事なシュートでした。1-0

11分 長野 左サイドからスローインを受けた横山選手が振り返りながらロングシュート。これは福元選手がパンチング。

13分 湯郷  作間選手が左サイドからクロスを上げ、森迫選手が飛び込みますが、タイミングが合いません。

22分 湯郷 ペナルティエリア外から、宮間選手がミドルシュート!コースは読めていましたが、球威のあるやや無回転気味のシュートを、U-23日本女子代表の林崎選手はあえてキャッチせず、パンチングを選択。

23分 湯郷 宮間選手から森迫選手へのパス。受けた森迫選手は中に切れ込みながら裏に走った高橋選手へスルーパス。前がかりになった裏をついたスピーディーな攻撃でしたが、オフサイドの判定。

26分 長野 ゴールから25mぐらいの位置で受けた横山選手が振り向いてミドルシュート!球に勢いはつかなかったものの、打つシュートすべてが枠に飛び、ストライカーの怖さを見せつけます。


これまで、前半30分間の失点がなかった湯郷にとっては、出鼻をくじかれた形。宮間選手が中盤で時間を作り、パスを狙います。宮間選手から前線の2トップへのルートはかなり警戒されているため、中盤を経由するために攻撃を組み立てたいところですが、なかなかタイミングが合いません。ただ、その状況でも周囲の選手たちの動き出しを待って時間を作るためのドリブルやキープを入れるなど、複数人に囲まれてもまったく焦らない宮間選手のテクニックはさすが。


27分 湯郷 松岡選手が左サイドに展開。作間選手がフェイントを交えてDFをかわし、縦に突破。センタリングにファーの松岡選手がヘディングで合わせ、同点に!長野のマークのズレを見逃さず、松岡選手は完全にフリーになっていました。 1-1

40分 湯郷 左サイドで仕掛けた作間選手が倒されて得たFK。宮間選手のボールは、GKとDFの間に入る絶妙のポイントへ。落下位置に4人が飛び込みますが、林崎選手がいち早くパンチングで逃れます。

1-1で迎えた後半。

51分 長野 横山選手のセンタリングに中で木下選手が合わせますが、頭で合わせたボールは枠の上に逸れます。

55分 長野 泊志穂→神田和帆

56分 長野 左サイドからのスローイン。受けた横山選手が右に流れながらシュート。難しい体勢からのシュートにも見えましたが、バーを叩きます。体幹が相当強いのではないかと思います。

57分 長野 混戦からボールを奪った児玉選手が右に流れながらシュート。足元をかきわけて地を這うようなグラウンドのシュートに、GK福元選手は死角でタイミングがずれたようにも見えました。ネットが揺れ、長野が追加点!2-1

59分 長野 GK林崎選手のロングフィードから生まれたチャンス。横山選手がくさびのパスを受けてターン。一度はトラップが大きくなりボールを離しますが、自らそのボールを奪い返してドリブルで持ち込み、福元選手との1対1。落ち着いて右サイドネットを揺らし、長野が2点をリード!3-1

65分 湯郷 森迫あやめ→岸野早奈

68分 長野 横山選手のスルーパスを受けた大宮選手のシュートは福元選手がパンチングで逃れます。

81分 湯郷 高橋千穂→細川元代

81分 湯郷 福元選手のロングフィードに抜け出した岸野選手のゴールで湯郷が1点差に!3-2

88分 長野 カウンターのチャンス。神田選手のスルーパスに抜け出した児玉選手が仕掛けますが、湯郷DF陣が2人で囲んでブロック。

90分+アディショナルタイム 長野 横山選手のスルーパスに抜け出した神田選手のシュートは福元選手がブロック。

90分+アディショナルタイム 長野 ループ気味に放たれた横山選手のループシュートは福元選手がキャッチ。

ここで試合終了。
予想を裏切らない打ち合いとなったゲームは、3-2で長野パルセイロレディースが勝利!


湯郷は左サイドで作間選手が仕掛けて得るチャンスが多く、宮間選手からのパスを受けるポジショニングの良さもあり、ホットラインができていました。ただ、ボールを持った選手に対して周りの選手がマークを外せていない場面も多く、いつもは多彩な宮間選手のパスも、相手に読まれて奪われる場面が多かったです。失点の場面は、組織というよりは個人でやられてしまうシーンがまだ多かったです。

湯郷ベルの櫻井監督は試合後

「クリアするところはクリアをするという、プレーを切るところがはっきりしませんでした。横山選手だけじゃなくて泊選手もそうですが、上手いターンからスピードに乗れる良い選手。一発で(相手の懐に飛び込んで)取りにいってしまうと剥がされてしまう。そこに気を付けようということは言っていたんですけれど、後半の2点はそれでやられてしまった。選手は対応しようとしましたけれど、相手の方が上でした。(2トップを生かせていないことについて)それはずっと課題です。あえて前の2枚を使って攻撃を作って、サイドに振る形があってこそ、中央からの攻撃も生きると思っているので。(サイドのクロスから点を取った)1点目の形で合うようなポイントを増やさないとゴールは増えないと思います」

と話していました。

「若い選手には伸び伸びとやってもらいたいですが、こういう試合の厳しさも、試合に出ないと分からないことなので。それを感じてほしいですし、同じ歳の選手にやられることへの悔しい気持ちを持ってほしいと思います」

と、3節(ベレーザ戦)後に宮間選手が話していた言葉は、この試合にも当てはまる気がしました。


若く、経験の浅い選手が多い湯郷の「伸びしろ」は、上位に浮上するための鍵になりそうですね。


一方の長野はやはり、横山選手の存在感が群を抜いていました。これだけ点を取っているのですから、当然どのチームも警戒しているのですが、ゴールを決めるための「形」をいくつか持っていることで、DFは寄せきれず、絞りきれない印象です。ペナルティエリア付近でボールを受けてからシュートを打つまでの判断が速く、ドリブルのリズムも独特。マークする相手DFに「簡単に飛び込ませない」間合いを持たせ、それによって横山選手自身がパス、シュート、ドリブル…と、選択肢を増やせるのでしょうね。

前線ではその横山選手に大宮選手、泊選手が絡み、荒削りな面を補ってあまりある”勢い”がゴールを生み出す原動力になっていると感じました。特に後半のシュートへの意識は高く、終わってみればシュート数は10(湯郷が6本)。88分のシーンのように、終盤になっても後ろの選手が追い越していく運動量も魅力でした。

「ゴール前では『勝手に(好きなように)やって』と言ってます。ただ、どの選手にもしつこく言っているのは、「ボールを持ったら前を向け」ということと、「なんでシュートじゃなくてパスなの?」ということ。そこはうちのチームの特徴として出したい部分でもあります」(本田美登里監督)

アドバイスを送るところと自主性に任せるところの境界線が明確だからこそ、ゴール前で迷わず「自分らしさ」を選択できるのでしょうね。

元日本女子代表のサイドバックとして黎明期を支え、指導者としても長く女子サッカーを支えてきた本田監督。湯郷ベルの初代監督でもある恩師について、宮間選手は試合前、こんな話をしていました。

「本田監督は女子サッカーの大先輩で、私たちにこういった場を築いてくださった方でもありますし、選手に選択肢を与えてくれる監督だと思います。長野は良い選手も多いですし、魅力的なチームだと思います」

と。
本田監督は試合後、目に涙を浮かべていたようにも見えました。

「2部から上がってきたチームが、これだけのサポーターの中でプレーできたことに感謝します。プロの監督として、勝ち点3を取ることにこだわって、実現できたことが良かったです。
(2位INACとの勝ち点差は1。首位のベレーザとは勝ち点差4。上位を射程圏内に捉えました)全っ然そんな風に思っていないですから。ただ、自分たちが対戦した仙台とINACが引き分けたりしているのを見ると、なるほどと思い(参考になり)ますけれど、どのチームも失点が少ないんですよね。相性で言ったら、今のうちは完全にカモにされる状態。それは恐れています。(強豪との連戦は)しんどいですよ。ただ、その中でももちろん自分たちの良さは出していきたいと思います」


決勝ゴールを含む2得点(6試合連続ゴール)を決めた横山選手。

「本当に、2年間お世話になったチームに勝てたこと、このスタジアムでみんなと一緒に戦えたことを嬉しく思います。(2部で)優勝した時と同じような雰囲気でサッカーができて幸せでした。常にこのぐらいの雰囲気で一緒に戦いたいので、よろしくお願いします」

長野だけでなく、湯郷サポーターへの感謝も込められた言葉に聞こえました。


試合だけでなく、スタジアムの雰囲気も心に残ります。
試合前に場内ビジョンに流れる映像で、1部に昇格するまでの戦いぶりをドラマチックにBGMと共に流して会場の雰囲気を高める演出が素晴らしく、ゴール裏の一体感が高まっていく感じも良かったです。観客席とピッチも近いので、サッカーファンには嬉しいスタジアムですね。


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見に行きたいと思わせる選手がいて、素晴らしいスタジアムがあり、魅力的なサッカーがある。
今後の長野の進化に期待したいと思います。



花花花花花



他会場では、ベレーザがコノミヤに4-0で勝利、ジェフLと新潟Lが1-1で引き分け、INACが浦和に4-1で勝利。伊賀がベガルタに1-0と勝利。
順位表は
こちらです♫



帰りに長野駅前でお蕎麦を食べました。
試合中は意外と肌寒く、熱い出汁が沁みました。

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