昨日12日(土)より、シアターN渋谷ほかで全国順次公開されたエミール・クストリッツァ監督最新作の映画『マラドーナ』!!


試写会で観てきたんですが・・・

マラドーナ氏の様々な表情や知られざる真実など、ぎゅっと詰まった90分間でした☆
サッカー選手としては知らない人がいないレジェンドですが、この映画の中では違う「顔」でも魅せてくれます。

おすすめです☆

というわけで、以下『マラドーナ』レビュー(長文)ですにへ

★★★


松原渓オフィシャルブログ「Kei Times」powered byアメブロ-『マラドーナ』


「神の子」、マラドーナは、どんな半生を生きてきたのか。
この作品は、サッカー選手・マラドーナのサクセスストーリーではない。
「神」ではない、「人間」マラドーナの真実に迫る人間ドキュメンタリーだ。

名門ボカ・ジュニアーズからスペインのバルセロナに渡り、ナポリで黄金時代を築いたマラドーナは、1986年、世界中にその名を知らしめることとなった。
「マラドーナの大会」と言われた、ワールドカップ・メキシコ大会。
「将軍」と呼ばれたフランスのミシェル・プラティニ、「リンクス(山猫)」と呼ばれたイングランドのゲーリー・リネカーら、錚々たる背番号「10」が華やかに競演したこの大会で、アルゼンチンの10番は圧倒的な存在感を示してチームを優勝に導き、世界の頂点に立った。

中でも有名なのは、準々決勝のイングランド戦の2ゴールだろう。

相手ゴール前でGKと競り合った際に生まれた「神の手」ゴール。マラドーナが突き上げた手に当たって入ったようにも見えるが、ゴールは認められた。

「半分はわたしの頭、半分は神の手が決めた」(マラドーナ)
このゴールをめぐる論争に終止符が打たれることはないだろうが、「神の手」という言葉はマラドーナだからこそ妙な説得力を持ったのだろう。
今年、W杯欧州予選のプレーオフ(フランス×アイルランド)で、本戦出場への明暗を分けたアンリのゴールが再び論争を巻き起こすことになった。
映像は「手」が触れた瞬間をしっかりと捉えているが、時間は戻らないし、判定は覆らない。
人と人が交わるスポーツである限り、間違いがなくなることはないのだろう。
ただし、今回のことで解決策があるのだとすれば・・・それは、アンリ自身がマラドーナに匹敵する活躍を見せることなのかもしれない。

そして、その直後の「5人抜きドリブル」によるゴールは、間違いなくワールドカップ史上に燦然と輝く名ゴールだ。
当時世界トップクラスと言われたイングランドの屈強なディフェンス陣を小柄なマラドーナが軽やかにかわし、ゴールネットを揺らす・・・。
「5人抜き」だけなら他にも成し遂げた選手は多いだろうが、なんと言ってもマラドーナの凄さは、ワールドカップの大舞台で、徹底的なマークを受けながら、あれだけの華を見せつけたことだ。
23年前の映像だけに荒さも目立つが、ゴールの鮮やかさは十分に伝わってくる。

しかし・・・
一躍時の人となり、「神の子」と呼ばれたマラドーナを待ち受けていたのは、その成功に反比例するかのような挫折と転落の日々だった。

アルコール依存、薬物中毒に加え、様々な不摂生を重ねた末に体重は激増。
国内では政治家に並ぶ影響力のある人物だっただけに、メディアもスキャンダルを見逃さなかった。
それでも、「私は多くの過ちを犯したが、サッカーボールは汚れない」(マラドーナの引退会見での有名な一節)という言葉にもあるように、彼の現役時代の功績が汚されることはなく、マラドーナと同じ貧しい地域の出身の子供たちにとって、彼が偉大なヒーローであることに変わりはなかった。
ナポリではいまだに彼がつけていた背番号10は永久欠番とされているし、国内では「マラドーナ教」も実在するというから驚きだ。


監督は、エミール=クストリッツァ。
世界三大映画祭(カンヌ/ベルリン/ヴェネツィア国際映画祭)の全てで監督賞に輝き、パルム・ドール(カンヌ国際映画祭の最高賞)に2度輝いた、ヨーロッパを代表する実力派だ。
サッカー日本代表元監督のイビチャ・オシム氏と同じ、サッカーの歴史では多くのテクニシャンを輩出した旧ユーゴスラビアのサラエボ出身のクストリッツァ監督は、プロを目指していた時期もあったそう。自身も熱狂的なマラドーナファンだそうで、本編の中では2人が楽しそうにパスを交わすシーンも見られる。
マラドーナの様々な表情や言葉を引き出したのも、長い撮影期間を含めて2人の間に育まれた友情によるものが大きいと感じた。

2005年4月に始まった撮影期間中に、マラドーナはなんと40キロも体重を落としたそうだ。
インタビューに答えるその目は、かつてW杯への夢を語った少年の目と同様に生気に満ちている。
マラドーナの父親としての素顔も新鮮だったが、彼が思いがけない側面を持っていることに驚いた。

「サッカー選手になっていなければ、彼は革命家だったろう」とクストリッツァ監督は言う。
自分のルーツを大切にするマラドーナは「反帝国主義」「反権力」の立場を明確にしており、右腕に彫られたチェ・ゲバラを自慢げに披露し、フィデル・カストロ(前キューバ国家評議会議長)やベネズエラのウーゴ・チャベス大統領との交流も描かれている。

☆☆☆

あのゴールから23年。
マラドーナは監督として再びアルゼンチン代表に復帰し、チームは10大会連続15度目のW杯出場を決めた。
果たして彼は、母国を再び世界一に導くことができるだろうか。



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