ラングドックはいかが?? | 当世だめ人間気質

当世だめ人間気質

以前から続けていたブログ、「だめ人間の暇つぶしです」の別館「当世だめ人間気質」です。

本館ブログでは、クラシック音楽ネタを書いています。
こちらの別館ではそれ以外のネタをアップするつもりです。

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久々の別館ブログ。本当に久しぶりです!

 

久しぶりのアップなのに、非常にマニアックな話になってしまってなんなんですが、、、、

 

本館ブログでもたま〜に口が滑ってバラしたりしていましたが、だめ人間さんは一応文系研究者のぴよっこで、専門はフランス関係です。ですから、一応、日本語の次によく触れるのはフランス語(のハズ、、、)。

それにも関わらず、自他ともに認める大のフランス嫌い。もちろんフランス語も大っ嫌い。(そもそも語学は苦手、、、)。フランスという名前がつくだけで、何もかも嫌、、、(涙)。(ごめんなさい、ごめんなさい、、、、。)

フランス系のクセにフランス嫌いとか豪語するあたりも、なんかフランスっぽいメンタリティーを感じてしまって、そんな事を言ってしまう自分も嫌、、、(笑)。

 

けれども、、、まあ、専門がね、、、フランス関係なので、嫌いじゃ済まないんですよ。。。

自分からフランス語やフランス文化に触れて行かないと、どうしてもいつまでたっても素人、、、。

ところが、フランス嫌いだめ人間さんはフランス文化になんか触れたくもないという致命傷、、、(涙)。

 

そこでですね、、、

苦肉の策といいますか、なんといいますか、、、。

 

一つの逃げ道なんですが、、、、

フランス内部の反フランスというね、、、。つまり、反中央フランス、、、、反北フランス。。。

 

ええ、、、どういうことかと言いますと、だめ人間さんは、、、南仏贔屓なのです!!それも、「太陽いっぱいプロヴァンスの花畑♪」が好きな訳ではなく、対北フランス(およびフランス語)の「南仏語」圏(オクシタン、ラングドック)がお好きなんです!!!

はい、南仏語。これ、一応私の趣味の一つです(苦笑)。。。

 

俗ラテン語の一派であるフランス語、元々は大きく分けて北フランス語(オイル語)と南フランス(オック語)の二種類がありました。オイル語、オック語というのは、ダンテの俗語論の分類にありまして、英語なら「Yes」に当たる肯定を現す副詞が「オイル(Oïl)」か「オック(Oc)」か、という分類です。(ちなみにイタリア語は「Si」ですよね。ダンテの俗語論ではOïl、Oc、Siの3つの分類がされています。ちなみに、ラテン語のSicとかHocとかの訛りです。)で、オイル語の「オイル(Oïl)」というのが所謂今のフランス語の「ウィ(Oui)」になるワケで、現在のフランス語というのは北フランスのオイル語なんです。

 

で、ですね、私はというと、オック語の愛好家なわけです∵ゞ(´ε`●) ブハッ!!

(現代フランス語、及び北フランス文化が嫌いすぎてか、それに対向する南仏語が好きってことになるのでしょうか(苦笑)。)

 

ところで現在、南フランスに行くとそこの人達はオックを普通に話しているのかといいますと、ほとんど話してはおりません。オック語(ラングドック)及び南仏文化というのは、12世紀に北フランス、オイル語文化圏の人々(とローマ・カトリック教会)によって、徹底的に破壊され、根こぎにされた文化及び言葉なんです。

それだけではありません。なにより(ご存知の方も多いかと思いますが)フランスというのは悪名高いフランス語インペリアリズムとも呼ばれるように、アカデミー・フランセーズによる言語統制といいますか、地方言語の抑圧で有名です。戦後になってようやく地方言語&文化への暴政が明るみに出て、それに対する反省が(やっと)少しづつ起って来たという状況。ですから、オック語も、地方に残ってたとしても、ずっっと長きにわたって、表では「フランス語」を話し、書くように強要され、オック語という土着の言葉は恥ずべき物のように扱われ続けていたわけです。

(舞台は異なりますが、そんなフランス語インペリアリズムによる、非中央フランス語圏の人間の歪んだアイデンティティをシニカルに描いたのが、ラングドック出身のドーデの「最後の授業」だったりするわけですけどね。)

 

なんでまた、いきなりこんなお話を始めたかといいますと、、、、

 

昨日、フランスのアマゾンからこちらが届きまして、、、↓

、、、やっちまったぜ、、、、。

衝動買いしてしまいました、、、。

これ、2014年に新しくでた現代オック語の教材です。

 

アシミール(Assimil)というのは、フランスで昔からある大手語学教材メーカーで色んな言語があるし、フランスだけでなくドイツや英語圏etc.でも展開している有名なところです。そのアシミールが2014年にオクシタン(オック語)の新しい教材を出しましてね、、、。

 

(出たときの(オック語の)特集番組。↓)

これ、フランス語で字幕が出ている部分、全部オック語です。(この中で出てくるグザビエさんのオック語、めっちゃ理想的に美しいと思います。)

 

いや〜、これ14年に出た時からずっと狙ってたんですよ、、、ほんと、ずっと欲しかったのは欲しかったんですけど、、、現代のオクシタンを勉強したって、1ミクロンも何の役に立たないし、何とか我慢していたんです、、、。(愛用の古オック語の教科書があるし、、、)

でもですね、、、先日フランスのアマゾンで自分の専門関係の本をいくつか注文するのに、ついつい誘惑に負けてポチってしまいました、、、。ええ、きっとストレスからの衝動買いでしょうね(笑)。。

 

でも、届くのにまた時間がかかりましたよ、、、。到着予定はゆうに超えているし、、、。フランスのアマゾンはイギリスやドイツと比べても、いっつも遅いんですよ、、、。だからフランスのアマゾンは使いたくないんだ!!!(出たっ!フランス嫌い(苦笑)。。。)

 

それにしても、、、

これ、、、↓

パッケージを開けると、テキストとCD4枚にmp3が入ったCD1枚というたっぷり音声付き、、、。綺麗なオック語発音聴き放題!!嗚呼、もう幸せです!

 

テキストの中はこんな感じです↓

うふふふふふ、、、(*´艸`*)

 

で、先ほどの私の口調だと、単なる対北フランス、反中央フランスでラングドック贔屓なんて言っているように聞こえるかも知れませんが、決してそうではありません!!

 

ラングドックという言葉自体が、もの凄っっっく魅力的な言葉なんです!!

 

先ほど少し触れたダンテの俗語論の3つの分類に出てくるように、中世の頃は南仏全土はラングドックの文化圏でした。そして、むしろ北フランスのオイル語圏よりも先に華々しく文化が開花したのは、南仏のオック語文化だったのです。

例えば、ルターが聖書をドイツ語に訳する300年以上前に、南仏では俗語であるオック語訳の聖書が既に流布していたそうです。(←すごいでしょ?!)そして、当時のヨーロッパ文芸の最先端はオック語文学と言っても過言ではない!!

つまり、時代はダンテより前、ルネサンスの前です。イタリアの俗語で開花するルネサンスより一足先に同じラテン語の俗語であるオック語で、非常に高度な詩法を有した文芸が花開いたのです。その一番の実りが、所謂トルバドゥールの詩です。

 

トルバドゥールというのは、南仏語であるオック語という俗語で詩作し歌う人達をさします。

(対してミンネゼンガーは同じような存在ですが、ドイツの吟遊詩人。トロヴァールはトルバドゥールの影響を受けて北フランス語圏(オイル語圏)に現れた人達です。混同してはいけないのは、トルバドゥールというのは宮廷歌人であって、所謂ジョングルールやミンストレルのような旅芸人の一派(一種の非差別職)とは異なるということ。)

 

で、ですね、、、私の一番の趣味、、、私の一番の趣味は「詩」です。(クラシック音楽じゃないんですよ!)世界中の詩の韻律を味わいつくすこと、これが私が一生の趣味としてしていることです。(古典的な意味ではこれも「音楽」の定義に入りますけど。)色んな言葉に手を出すのも語学が好きなわけでは決してなくて、全て詩を朗読して韻律を味わうためです。リートに手を出したのだって、もちろん詩の朗読の延長。最初にイタリアオペラにハマったのも、実はリブレットから(笑)。ハンガリー語だろうがフィンランド語だろうが、現地に旅行に行きたいからなんて理由は1ミリもありません。(そもそも外出が好きじゃないし。)ただただ、その言葉で書かれた詩を、韻律を味わいながら声に出して読みたいからです。

 

ということで、オック語だってもちろん例外じゃありません。オック語の詩は、、、、もうほんと、、、、美しいんです、、、。:゚(。ノω\。)゚・。 

 

もっと他に挙げたい詩はいっぱいありますが、とりあえず今日は、オック語で書かれたものの中で(たぶん)最も有名な詩、ベルナルト・デ・ヴェンタドルン(Bernart de Ventadorn、フランス語ではベルナール・ド・ヴァンタドゥール)の詩を挙げておきます。

「Can vei la lauzeta mover」という詩で、古楽でもよく取り上げられるのですが、そのときは「雲雀の渡りを見た時」とよく日本語訳されています。

 

ヴェンタドルンの詩自体はもっと長いのですが、最初の3連だけ。

(参考に翻訳を付けておきますが、大学書林の瀬戸先生の訳で、語学的正確さを優先したものなので、色々ご自身で補って読んでみて下さい。)

 

Can vei la lauzeta mover

De joi sas alas contral rai,

Que s'oblid' e・s laissa chazer

Per la doussor c'al cor li vai,

Ai! tan grans enveya m'en ve

De cui qu'eu veya jauzion,

Meravilhas ai, car desse

Lo cor de dezirer no・m fon.

 

(ひばりが 喜び勇んで

太陽の光に向かって 羽ばたくのを見るとき

心のなかにつきささるような 甘美さに

われを忘れて ひばりが墜落するにまかせるとき

ああ なんという嫉妬の念が 湧き起こることか

喜びにひたっている人を見ると それが誰であれ

われながら不思議である すぐにでも

この心が 欲望で溶けさってしまわないのが)

 

Ai, las! Tan cuidava saber

D'amor, e tan petit en sai!

Car eu d'amar no・m posc tener

Celeis don ja pro non aurai.

Tout m'a mo cor, e tout m'a me,

E se mezeis e tot lo mon;

E can se・m tolc, no・m laisset re

Mas dezirer e cor volon.

 

(ああ 愛については 知っていると

思っていたのに 何と知らなかったことか

愛を抑えることが できないのだから

愛しても 得にならないであろうひとにたいして

彼女は私から心を奪い 自分を奪い

そして私自身と またすべての人を奪ったのだから

そして私から彼女自身を奪って 残したものは

ただ欲望と 燃える心のみ)

 

Anc non agui de me poder

Ni no fui meus de l'or' en sai

Que・m laisset en sos olhs vezer

En un miralh que mout me plai.

Miralhs, pus me mirei en te,

M'an mort li sospir de preon,

C'aissi・m perdei com perdet se

Lo bels Narcisus en la fon.

 

(それからは自分で自分を 抑えられなくなった

あのとき以来の ことだ

あのひとが私を 私の眼でもって

私の大好きな ひとつの鏡のなかにみせてくれて以来

鏡よ おまえのなかに 私は自分を見たあと

深い深い溜息が 私を殺したのだ

そして私は自分を失ったのだ 美しい

ナルキッソスが泉で 自分を失ったように)

 

(本当はテキストの異同や表記法の違いなどややこしいのですが、オック語の原文は私の愛用のオック語と英語の対訳、Lark in the Morning, The Verses of the Troubadours, Robert Kehew (Ed.), The University of Chicago Press, 2005 を使っています。瀬戸先生の訳は瀬戸直彦編著『トルバドゥール詞華集』大学書林、2003年に収録。)

 

せっかくなので、歌っているものを、、、↓

(ヴェンタドルンは楽譜が残っていて、音楽も復元できるものがいくつもあります。)

(発音はなんかちょっと違和感を感じる部分もありますが、細かい事はおいといて、、、)

 

どうですか??信じられないくらい美しくないですか??!!

やっぱりヴェンタドルンの歌なんかは、美しい男声で聴きたいものです。しかもこの旋律、、、。

というか、オイル語(フランス語)と全然違うでしょ???

 

比較対象に困るなら、ひとまず、ギョーム・ド・マショーとでも比較してみて下さい。

ギョーム・ド・マショーは1300年生まれで時代は少し下りますが、トルバドゥールの北フランス版とも言えるトロヴァールの末裔みたいなもんです。

 

そして、押韻の美しさに気付いて頂きましたか??

北フランスそして、イタリア(ダンテ以前なんでね)より先に、初めて押韻した俗語というのはオック語なのですよ!!しかも、ラテン語での果てしなく高度な詩論(と修辞学)の研鑽以後のオック語の押韻には、モダニズムを経た現代の我々が見てもびっくりするような高度な詩法や押韻法がたくさんあります。(この辺がだめ人間さんのハートを鷲掴みなところです(*´艸`*))

 

(ちなみに、私としては第2連目の豊かな母音の使い方なんかクラクラきます。そして、それを受けての第3連目で畳み掛けるように、激しめの子音を重ねて来るあたり、心臓がえぐられる感じというか、、、もう鼻血が止まらないレベルです。。。しかも、内容とぴったり一致してるし。。。嗚呼、、、。)

 

今日はこれ以上はもうやめておきますが、オック語の魅力「その1」としては、その(特に中世の)文芸の豊かさということ。

ただ、(特に中世の)オック語文学の為ということであれば、古オック語だけやっていればよいわけで、現代オック語なんて手をだす必要はないんですよ。で、私も今までずっと、現代オック語には(ほとんど)見向きもせずに、古オック語だけを見ていたわけです。

 

でもですね、、、

はい、ここで、オック語の魅力「その2」に繋がってきます。

 

オック語の魅力「その2」は言葉自体に関することです。

 

私がオック語という言葉が大変好きである理由として、まず第一に現代のフランス語と違って、ラテン語と同じようなアクセントがあること。(←ほんとコレ!!)

そしてさらに言うならば、伊語や西語とは違う母音をもっているということ。

つまり、その言葉自体、特にその音声自体が魅力的で好きなのです。とにかく美しいんですよ。スペイン語と似てる感じはしますけど、やっぱり違います。

 

で、ここで問題になってしまうのですが、古オック語は古語なわけで、当然発音に関しては結局最終的にはどうしても解らないとしか言えないところがある訳ですよ。(ラテン語とかと一緒ですよね。)これがやっぱりどうしても問題でして、、、。

 

ということで、私はオック語の音声が好きな訳ですが、発音に関して古オック語の世界では最終的に断言できないところが残る、でラテン語なんかだったらもうどうしようもないわけですけど、オック語には幸いにも一応、現代のオック語というものがある、、、。じゃあ、せっかくあるんだったら現代のオック語の発音をちゃんと勉強してみたほうがいいんじゃないの、、、??

ということで、今回のassimilを購入するという決断に到ったわけです。(購入する口実を見つけただけでしょ、、、(笑))

 

(現代のオック語を話す人々↓)

これは、少し前のものですが、オック語話者の人達によるデモの様子からですね。

オック語はついに現代になってようやくその市民権を少しづつ得て来ているのではないでしょうか。

(そういえば、数年前、フランスの政治家のフランソワ・バイルがトゥルーズ(ラングドックの中心です。オック語でトローサ)での選挙演説かなにかで、南仏の文化や言語について演説していた時、途中からオック語で語り始めて大喝采を受けていた事があった気がします。(なんか拙い感じでしたが(笑)。)まあ、私はフランスの政治話なんて大嫌いなので知りませんが、、、でも、あれには正直、私でさえ、、、ドキドキしてしまったぜ、、、(苦笑)。)

 

とにもかくにも、オック語、、、ラングドック、オクシタン、、、。

語りたいことが山ほどありますので、せっかくなので、これから別館ブログではちょこちょこと我が愛しのラングドックネタを取り上げようかと思います。

 

とりあえず、次はまずダンテとラングドックの関係あたりからにしましょうか、、、

いや、やっぱりトゥルバドゥールの巧みな詩法についてか、、、う〜ん、、、

そうだな〜、、ダンテとラングドックの関係、英語圏に置けるラングドック受容の重要人物であるエズラ・パウンドとT.S.エリオットの南仏にちなんだ関係、そこに絡んでくるダンテのこと、そしてパウンドとW.S.マーウィン。マーウィンとヴァンタドゥールとか、、、。

ラングドック史ということなら、ラングドック文化の開花とイスラーム文化、リチャード獅子心王とトルバドゥール、イタリアルネサンスとオック語文化との関係、そしてアルビジョワ十字軍とラングドック文化殲滅の話。

その後の15世紀のトゥルーズでのラングドック文芸復興運動、近世のオック語やミストラルらの南仏語文学、現代のラングドック事情etc、、、語りたい事は山ほどあります(笑)!!

嗚呼!!それから何と言っても、これからラングドックを勉強したい人の為の読書案内&語学学習案内も!!というか、オック語の分類についても必要ですね、、、。

とりあえず、お楽しみに!!(誰も興味ないか、、、)

 

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うう〜、、、、途中で下書きに保存した瞬間に記事がすっかり消えて、泣きたくなりました。。。でもオック語愛のもと、再度頑張って書き直しました。。。ヴェンタドルンの詩と翻訳も、せっかく入力したのに一回全部消えたし、、、。もっぺん書いたのも、またなんか消えるし、、、。何なんでしょう。。。新しいエディタ、使い難いです。。。何度も書き直しとなると誤字脱字が多いかもしれませんが、どうぞご了承下さいまし。

 

というか、明日の予習が、、、、忙しいのに、ブログでオック語愛なんかを延々と語ってる場合じゃありません!!!やばい、、、時間が、、、、。

それでは、また!!!

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