私がロシアンセーブルを愛しすぎて毛皮屋を続けているのは毛皮業界では有名で、なんで?と聞かれる事もよくありました。

 

まず、感触。触った時に手から脳にビッビッビと喜びが送られてくるのです。この、触感に依る美しさと喜びはそうそう感じられるものではありません。その上に、きれいな茶系の色とつやが出ていて、まさに毛皮の王様です。

 

 

ただ、残念ながらロシアンセーブルならどれでもその感覚を得られるかというと違います。ご存知のように天産物は工業製品とは違い品質はマチマチですので、ガサガサしたり痩せていたりすると、脳には良い刺激が届かず、特別な気持ちにはなれません。

 

毛皮屋は過去にはどちらかというと国内商売に限られていたので、海外に行き、多くの毛皮原料に触る機会は少なかったようです。1960年代から海外のオークションに参加する日本人が少し出て来た位です。

(私が毛皮業界に入ったのは1975年です。)

ですから、毛皮の本当に良い品質を分かる毛皮屋さんは多くはありません。

 

チンチラも、毛皮の中では最高の感触を持っていますので、触れると嬉しくなります。ファッションスクールに講義に行って、生徒さんに触れさせると、99%の人が満面の笑顔になり、”うそー!”、ちょーやばい!”と大騒ぎになります。人生で初めて触覚で美を感じた瞬間です。(1%の人は触れられませんので、強制はしません。)

 

私は、毛皮製品メーカーも卸もやりましたが、最も好きなのは毛皮原料卸です。大量の毛皮原料をメーカーが必要としていた頃は、仕入れの為に一年で7か月は海外のオークションに行っていました。(残念ながら日本ではメーカーが減ってしまい、それほど多くの原料は使われなくなってしまいました。)

 

それでもコロナ前は、一年に5回位は海外オークションに行っていたのですが、一昨年の6月以降は一度も行けなくなってしまいました。

 

コロナ禍が早く終わり、またロシアのサンクトペテルブルグのオークションに行き、最高のロシアンセーブルを捜したいと心から思っている今日この頃です。