「礼!!!」
「始め!!!」
「おいやぁっ!!!」
号令の後に田山が雄たけびを上げた。
構えた田川が大きく見えた。
日本拳法部に初めて見学に行ったときから、
田山からはいろんな話を聞かされていた。
長く付き合っている彼女の話や、
中学の時はケンカ番長だった話など。
リアルを充実していることをリア充というのだが、
田山の彼女の話はリア充だったので正直うざかった。
そんな嘘が多そうな田山の自慢話の中にこんな話があった。
田山の兄は大坂高校の日本拳法部出身で、
在学中に三段を取得していて大会でもいい成績を残してきたという話と、
田山自身も中学の時に初段を取得しており黒帯を持っているという話だ。
日本拳法の昇段試験のシステムは、
例えば初段を取る場合は、
5回の試験中に合計4勝するか、
1回の試験で連続3勝するかのいずれかによって取得できる。
そして初段という黒帯を取得するのは、
だいたい高校2年ぐらいで、
高校生の間に三段を取るということは本当に猛者である証だった。
いや猛者ではない。
鬼神だ。
そして昇段試験は中学3年生から社会人まで年齢によって対戦相手が分かれるわけではないので、
大学生VS高校生や大学生VS中学生という組み合わせの可能性も高かった。
なので中学時代に初段を取得する者も化物クラスである。
田山はそれを為したと自分で言っていた。
ただ田山からは周りには黙っていてほしいと言われていたが。
ちなみにこのとき、
三年の主将の堤下さんと本郷さんは初段だった。
後に登場する豊野さんと樋吉さんの二人の三年生は二段だった。
二年に有段者はいなかった。
経験の浅すぎる当時の俺にとって、
田山は堤下さんや本郷さんと同じ実力があると認識していた。
そんな田山が今自分の目の前で構えている。
俺はビビってまた動けなかった。
そして田山から仕掛けてきた。
ボンッ!
田山の右ストレートが顔面に直撃した。
その時妙な違和感を感じた。
今まで有段者の先輩たちの凄まじいパンチや蹴りを受けてきたが、
先輩たちと同等の実力を持つはずの自称有段者の田山のパワーは明らかにそれ以下だった。
(俺が初めてやから手加減してくれてんのかな?)
初めはそう思って手が出せずにいた。
しかし田山のパンチを何発か受けているうちに、
田山の実力がそれほど高くないことに気付いた。
(もしかすると・・・)
俺は賭けに出た。
自分の右の拳を力一杯ぶん回してみた。
ボカンッ!!
案の定田山の顔面に直撃した。
田山が後ろに下がった。
俺は反撃を開始した。
そして俺と田山のケンカが始まった。
もう型など関係のないただの殴り合いだった。
お互いが未熟だったせいか、
パンチに威力が無い分打ち合いが続いた。
そして田山がついに組みついて来た。
とっさの出来事で俺は気が動転した。
呆気にとられているとそのまま田山に投げられた。
そして仰向けで倒れた俺の顔面を強烈な踏みつけが襲った。
頭全体に強い衝撃が走った。
それもそのはず。
下はコンクリートなのだから。
意識が一瞬遠のいたときに、
終わりの相図がなった。
ボロ雑巾の状態だったが、
俺は不思議と心地よかった。
田山「大丈夫か?野口。」
俺「ああ、いけるで。」
田山「最後楽しかったよ。ありがとうな。」
ボコボコにされながらも、
いつか強くなって俺も強敵達と格好良く闘えるようになる。
そう思うと苦しみが何だか楽しみに変わっていくような感覚だった。
ジャンプの漫画の様に。
この仲間たちと強くなりたい。
純粋にそう思うようになっていた。
そんな矢先だった。
次の日の練習に向かう前に、
田山が俺に言った。
田山「野口。オレ、日拳やめるわ。」
つづく
「始め!!!」
「おいやぁっ!!!」
号令の後に田山が雄たけびを上げた。
構えた田川が大きく見えた。
日本拳法部に初めて見学に行ったときから、
田山からはいろんな話を聞かされていた。
長く付き合っている彼女の話や、
中学の時はケンカ番長だった話など。
リアルを充実していることをリア充というのだが、
田山の彼女の話はリア充だったので正直うざかった。
そんな嘘が多そうな田山の自慢話の中にこんな話があった。
田山の兄は大坂高校の日本拳法部出身で、
在学中に三段を取得していて大会でもいい成績を残してきたという話と、
田山自身も中学の時に初段を取得しており黒帯を持っているという話だ。
日本拳法の昇段試験のシステムは、
例えば初段を取る場合は、
5回の試験中に合計4勝するか、
1回の試験で連続3勝するかのいずれかによって取得できる。
そして初段という黒帯を取得するのは、
だいたい高校2年ぐらいで、
高校生の間に三段を取るということは本当に猛者である証だった。
いや猛者ではない。
鬼神だ。
そして昇段試験は中学3年生から社会人まで年齢によって対戦相手が分かれるわけではないので、
大学生VS高校生や大学生VS中学生という組み合わせの可能性も高かった。
なので中学時代に初段を取得する者も化物クラスである。
田山はそれを為したと自分で言っていた。
ただ田山からは周りには黙っていてほしいと言われていたが。
ちなみにこのとき、
三年の主将の堤下さんと本郷さんは初段だった。
後に登場する豊野さんと樋吉さんの二人の三年生は二段だった。
二年に有段者はいなかった。
経験の浅すぎる当時の俺にとって、
田山は堤下さんや本郷さんと同じ実力があると認識していた。
そんな田山が今自分の目の前で構えている。
俺はビビってまた動けなかった。
そして田山から仕掛けてきた。
ボンッ!
田山の右ストレートが顔面に直撃した。
その時妙な違和感を感じた。
今まで有段者の先輩たちの凄まじいパンチや蹴りを受けてきたが、
先輩たちと同等の実力を持つはずの自称有段者の田山のパワーは明らかにそれ以下だった。
(俺が初めてやから手加減してくれてんのかな?)
初めはそう思って手が出せずにいた。
しかし田山のパンチを何発か受けているうちに、
田山の実力がそれほど高くないことに気付いた。
(もしかすると・・・)
俺は賭けに出た。
自分の右の拳を力一杯ぶん回してみた。
ボカンッ!!
案の定田山の顔面に直撃した。
田山が後ろに下がった。
俺は反撃を開始した。
そして俺と田山のケンカが始まった。
もう型など関係のないただの殴り合いだった。
お互いが未熟だったせいか、
パンチに威力が無い分打ち合いが続いた。
そして田山がついに組みついて来た。
とっさの出来事で俺は気が動転した。
呆気にとられているとそのまま田山に投げられた。
そして仰向けで倒れた俺の顔面を強烈な踏みつけが襲った。
頭全体に強い衝撃が走った。
それもそのはず。
下はコンクリートなのだから。
意識が一瞬遠のいたときに、
終わりの相図がなった。
ボロ雑巾の状態だったが、
俺は不思議と心地よかった。
田山「大丈夫か?野口。」
俺「ああ、いけるで。」
田山「最後楽しかったよ。ありがとうな。」
ボコボコにされながらも、
いつか強くなって俺も強敵達と格好良く闘えるようになる。
そう思うと苦しみが何だか楽しみに変わっていくような感覚だった。
ジャンプの漫画の様に。
この仲間たちと強くなりたい。
純粋にそう思うようになっていた。
そんな矢先だった。
次の日の練習に向かう前に、
田山が俺に言った。
田山「野口。オレ、日拳やめるわ。」
つづく