探偵最後の難題:「情報エントロピー」とは何か? | 映画探偵室

探偵最後の難題:「情報エントロピー」とは何か?

探偵が物理学の世界に接して、いや全宇宙・全思想を相手にしようと身構えたとき、究極の難問である「時間とは何か」という問いが立ちはだかった。その「時」読んだのがこの本でした。
 

あの松岡正剛先生もこの本を読んで、「k中間子の振る舞いにおいて、時間は逆行することがあるのだ」というくだりに差し掛かったとき、おもわず「ふ、ふ、ふっ」とほくそ笑んだ、そうです。
松岡正剛の千夜千冊 - 「時間の矢」
一方で、あの超有名なことわざTime Flies Like an Arrow (光陰矢のごとし)が「時間蝿は矢を好む」とも訳せると知って「やったあ」と思った(注)探偵がいた...
そこから始まった旅は松岡先生と同じく、あちらの本を読み、こちらの論に耳をかたむけ幾星霜。下右は元東大全共闘議長山本義隆氏による「熱学思想の史的展開」。氏はあの闘争時は東大理学部の学生で(探偵は一度お目にかかったことがある)、物理学専攻だったのですね。東大を去った後は予備校の講師をしながら、熱力学のみならず物理の解説書を多数書いておられます。
Wikipedia: 山本義隆
ー1960年(昭35)東京大学理科一類入学、1964年 (昭和39年) 東京大学理学部物理学科卒業。
 その後、同大学院で素粒子論を専攻、京都大学基礎物理学研究所に国内留学する[1]。湯川秀樹の研究室に通う、将来を渇望された研究者であったが、学生運動に没入した[2]。学生運動の後は大学を去り、大学での研究生活に戻ることはなかった。

 

左は最近図書館から借りてきた本で、難解な理論を(上記山本氏の徹底して数式を辿る理詰めの解説と異なり)「数式を省いてイラストや「巧みな表現」を使い、よく纏めていると思います。
内容(「BOOK」データベースより)
 難解、無味乾燥、とっつきにくい…エントロピーに悩んだのはあなただけじゃない。物理学史に輝く天才たちもまた、理解に苦しんだ。カルノー、ボルツマン、ギブズらはいかに闘い、自然が隠しもつ神秘を見つけだしたのか?この理論はなぜ、宇宙を支配するのか?彼らの試行錯誤を追体験することで、あなたの目の前にもエントロピーが姿を現す!

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
鈴木 炎(Suzuki Honoh)←スゴイ名前ですね(館長
富山大学理学部化学科准教授。専門は溶液化学・レーザー光化学。理学部化学科の学生を対象とした化学熱力学、並びに経済学部の学生を対象とした一般化学の講義を担当している。
 そして今回の本命は「エントロピーと情報理論」。右はその端緒となったクロード・シャノンの「通信の数学的理論」。訳を手がけた植松友彦氏もこの世界のパイオニアです。
ー1959年東京都生まれ.1982年東京工業大学工学部電気電子工学科卒業,1984年同大学院修士課程修了.工学博士.東京工業大学工学部助教授,北陸先端科学技術大学院大学助教授を経て,現在,東京工業大学大学院理工学研究科集積システム専攻教授.
 
Wikipedia: クロード・シャノンの「通信の数学的理論」
植松友彦著  イラストで学ぶ「情報理論の考え方」
注:ここからマイナー技術翻訳家である探偵の「翻訳不可能論」が産み出されたのでした。それがチューリングの「決定不可能性オートマトン」への興味につながり、それが完璧なアルゴリズムは存在しないのか、という疑問が導かれ...と果てしなく続く旅が始まったわけです。