村上春樹氏、米紙インタビューで自身の文学論語る | 映画探偵室

村上春樹氏、米紙インタビューで自身の文学論語る


「東洋経済」紙より
村上春樹氏「妻が悪い書評だけ読み聞かせる」
10月に「騎士団長殺し」の英訳版が発売
(以下、転載:下線は館長)

10月に英訳版が発売された村上春樹(69)の『騎士団長殺し』には、ひとりでに鳴る不思議な鈴に始まり、絵画の中の身長60センチの男の体を借りたイデア、恐ろしい二重メタファーと対する闇への旅が描かれる。作者自身も書いているように、不合理なことが多い。
しかし、それこそが村上春樹だ。絶大な人気を誇る彼の小説は、現実と超現実、日常と幻想、日々の生活と思いがけない出来事の間の境界をさまよう。非常に壮大で複雑な『騎士団長殺し』は説明するのは困難だが、恋愛の不可解さ、歴史の重み、超越的な芸術、とらえることのできないものの探求といった村上作品におなじみのテーマに多く触れている。
『騎士団長殺し』のアイデアはどこから得たのか
村上の作品はこれまで50言語に翻訳され、彼は長編小説のほか短編、ノンフィクションを執筆し、英語書籍の日本語訳も手掛ける。
10月初旬、ニューヨーク市に数日滞在した村上は、セントラルパークの周りを1時間ジョギングした後、出版社でインタビューに応じた。
「エミリー」と書かれたスターバックスのカップを手に(アシスタントが購入したのだ)、村上は創作プロセス、アイロンがけの楽しみ、規律正しさとストイックな日々の執筆活動が彼の不思議なイマジネーションをどう解放させているのかを語った。
――『騎士団長殺し』のアイデアはどこから?
わからない。私の頭のどこか奥深いところから拾い上げた。突然に最初の1つか2つの段落を書きたくなった。その後の展開はまったくわかっていなかった。書いたものを机の引き出しにしまって、あとはただ待つだけだった。
――その後のストーリーはどうやって?
ある日、書けそうだと思えるアイデアが浮かんだ。そして書き始め、書き続けた。待てばそのときはやってくる。アイデアは必ず浮かぶという自信が必要だ。私が自信を持っているのは、ほぼ40年書き続け、その術を知っているからだ。
――あなたにとって執筆は困難?
自分のものを書いていないときは翻訳をしていて、待つ間にするのに非常に良い。書いてはいても、自分の小説ではない。訓練もしくは肉体労働のようなものだ。ジョギングをしたりレコードを聴いたり、アイロンがけなど家事もする。アイロンがけが好きで。執筆しているときに心が乱れるようなことはない。基本的に書くのは楽しい。
――自分の作品の書評は読む?
書評は読まない。多くの作家はそう言うものの、うそをついている。でも私はうそをついていない。だだ、妻はすべての書評を読み、悪いものだけを大きな声で私に読んで聞かせる。悪い評価を受け入れるべきだと彼女は言う。良い評価は忘れろと。
メタファーを説明したり、分析することはできない
――あなたの作品は非現実や幻想にあふれている。あなたの生活も?

基本的に書くのは楽しいという
 私はリアリスティックな人間、現実的な人間だが、フィクションを書くときは自分の内にある奇妙な秘密の場所を訪れる。私がしているのは自己の探求だ。自分の内面の。目を閉じて自分の中に飛び込むと、異なる世界が見える。宇宙を探検するように自分の内側を探検する。非常に危険で恐ろしい場所なので、戻り方を知っておくことが大切だ
――作品に込めた意味について語るのは得意ではないようだ。
人々はいつも作品について質問する。これはどんな意味があるのか、あれはどんな意味なのかと。でも私にはまったく説明することができない。私は自分自身のこと、そして世界のことをメタファーとして語るが、メタファーを説明したり分析したりすることはできない。ただそのスタイルを受け入れるしかない。1冊の本は1つのメタファーだ。
――『騎士団長殺し』は、約10年前にあなたが日本語に訳した『グレート・ギャツビー』に敬意を表したものだとあなたは述べている。『グレート・ギャッツビー』はアメリカンドリームの限界を描いた悲劇的な物語とも読めるが、あなたの小説にどんな影響を?
『グレート・ギャツビー』は私の愛読書だ。学校を出て17歳か18歳のときに読み、ストーリーに感銘を受けた。夢について、そして夢に破れたときに人はどう行動するのかを描いていたから。それは私にとって重要なテーマだ。アメリカンドリームに限らず、一人の若者の夢、夢全般だ。
――あなたはどんな夢を見る?
夢は見ない。月に1度か2度だけ。もっと見ているかもしれないが、夢をまったく覚えていない。でも私は夢を見る必要がない。書くことができるから。
(NY Times、執筆:Sarah Lyall、翻訳:中丸碧)
(C)2018 The New York Times News Services

この記事に寄せられたコメントは下記。これらの方々の感想以外に、探偵は村上春樹の文章を基に「小説の書き方」や「小説家とはどんな生き物か」を研究しているわけで....
コメントいろいろ
• NO NAME511ba57d021b
コメントの知的レベルがあまりにも低すぎて閉口。
別に村上春樹氏の作品が大好きというほどではないが、読んだことがないのに作品に関する意見を書くことを恥だと思わない神経がよくわからない。
そのあたりは経済誌というメディアの読者の特性という話かも知れないが。
2018/11/8 17:15
• NO NAME9f42826a78d6
 ドナルド キーン氏などの話を読んでいると、ノーベル賞の裏側(特に、文学賞)の裏側が少し見えてくる。つまり、作品や、著者の評価で決まるのでは無いということ。
 それを意識してかどうかは知らないが、「騎士団長殺し」には、ノーベル財団に媚びたような表現があるのが気になった。
 ところで、多崎つくるの影が、騎士団長殺しには、見え隠れするのですが、つくるの続きを待っています。
2018/11/9 09:03
• NO NAME80a2d2f12a40
村上春樹のすごさは、「自分にも書ける」と素人に思わせる文体の発明だと思います
 そして彼が発明した文体によって、自分探し中のフリーターの独りよがりな妄想を、時代を超えた同世代の人間でも感情移入しやすい小説に昇華することに成功した、ということではないでしょーか。
 80年代から90年代にかけて、村上春樹もどきなドラマのタイトルや、村上春樹もどきなドラマが作られたけれど、成功したものはなかったように思います。
 そのあたりが村上春樹のすごさなんじゃないでしょーか。
 個人的には風の歌を聴けと1973年のピンボールは素晴らしいと思います。
 まさしく自分が10代の頃、妄想した中二病でホーニーな男の子だった頃の夢を小説にしてくださった。そんな作品でした