田園は美しく.... アンドレ・ジイド原作 『田園交響楽』 | 映画探偵室

田園は美しく.... アンドレ・ジイド原作 『田園交響楽』

館長が旧作の仏語版を持っているということから、蔵出しの形になりますが...


ジイドの「田園交響楽」

予告編
https://youtu.be/wPkVD4Ga35s


全編通しは下記をクリック:

La Symphonie Pastorale

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ブログ「Ceciliaの部屋」さん
声楽をはじめ、様々な音楽と関わってきました。興味の赴くままに綴っていきます。

1946年のカンヌ国際映画展で大賞を取った作品のようです。特に予備知識なく観てみました。アンドレ・ジイドの小説を少女時代から何度も読んでいて、ブログに書いたこともあります。
いろいろ突っ込みどころ満載なのですが、タイトルの「田園交響楽」にまつわる部分が映画ではまったく描かれていません。小説では主人公の牧師(小説では語り手)が自分が引き取って育てている全盲の美少女ジェルトリュードを音楽会に連れて行くのですが、そこで演奏されるのがベートーヴェンの「田園交響楽」なのですね。全盲の少女が色を音によって理解していこうとする場面です。実の子供たちを音楽会に連れて行ったことがない牧師は帰宅して妻からなじられ、そのやり取りを耳にしたジェルトリュードが涙するという重要な場面ですが、これを入れると長くなるので難しかったのでしょうか。
あと、小説では冬の場面だけということはなかったですが、全体通して雪景色であるのが特徴的でした。ロケをするのに何ヶ月もかけるわけにはいかなかったという事情でもあったのでしょうか。まあストーリーの上では問題がないように思えました。
女主人公のジェルトリュード、もっと少女っぽい人が良かったですね~。ミシェル・モルガンという女優さん、年齢的には適役だとは思いますが、私の今までのイメージが崩れたかも・・・。私が少女時代のイメージを引きずりすぎていたのが悪いのですが。日本人女優で言えば常盤貴子がもっと痩せてきつくなった感じに思えました。
「田園交響楽」を聴きに行く場面はないですけれど、個人的に興味を持ったのはジャック(牧師の息子)がジェルトリュードにパイプオルガンを教えている場面の曲とか、教会で婦人たちが合唱練習する場面で歌わる"Tochter Sion"(ヘンデルの「勇者は帰る」ですね。得賞歌のアレ。)などの讃美歌です。
小説を読む際にはプロテスタントとカトリックという要素も考える必要がありますが、映画ではそういう面はほとんど描かれず、全盲の娘が「牧師を愛していたが、愛していると思ったのは”ジャックの顔をした牧師”であった」こと、禁欲的であるべき牧師が妻子がいながらこの少女を愛してしまい、深みにはまっていくところが特に強く描かれていたように思えます。
字幕なしでよくわからないフランス語だったため、この程度のことしか書けないのが残念です。

そうそう、牧師館の内装とかインテリア、水道などに惹かれました。白黒映画ですが、どんな風にペイントされているのだろうとか考えながら見ていました。ヨーロピアンカントリーに興味がある方が喜びそうな牧師館です。


「あの交響曲のようですの?」というセリフの根拠はベートーヴェンの第六、第二楽章「小川のせせらぎ」のことですね。
https://youtu.be/HuyfrecN_cA



日本では東宝の山本薩夫が原節子主演で映画化しています。

なすびの感想・評価
2016/11/25 20:00
3.8
仏文の授業でみた。原作がアンドレジッドだから。
日本版田園交響楽!全く期待してなくて、あんなキリスト色強いのにどうやって日本で作るんだよ…と思ってたけどいい意味で期待を裏切られた!!意外とすんなりストーリーが日本に組み込まれてて、ちゃんと牧師だし(そうかこの時代にもちゃんと教会はあるのか)部屋にキリストいたし、美しい話がそのままだった!!
フランス版より台詞が原作に忠実!実は私がとても大好きなシーンが2つとも映像化されてて(フランス版ではされてない)すごく喜んだ!蝶々について尋ねるシーンとベートーヴェンの田園交響楽を聴きに行くシーン。あの2つを文句なしに再現しててよかったなぁ。フランス版はよりドラマ要素が強くて悲劇感が満載だったけど、こっちはそれより小説に近くゆったり話が流れて行く。息子が弟だったり娘が1人しかいないし幼いしだったりちょこちょこ原作通りではないけど逆にいい味出してた。娘のみちこちゃんが可愛いのよねー!「おとうちやん」って何回も言うんだけどほんとにかわいい。台詞も昔の子供の喋り方かわいいね、「お雪の中からきたんだから雪子ちゃんにしましょうよ」ってまあなんと美しい日本語…。こんなに好きなんだからそろそろ昔の日本映画もハマりたい!ハマりそうな予感はあった!古いカメラワークが逆に愛おしい。ページをめくるように場面が変わるとことか。ちょっと古すぎて映像悪いところあったけどまあまあ仕方ないね。
原節子初めてみたけどそんなに言うほど可愛くなかった…?あご長くね?あとぽっちゃり?また違う作品も見たいけど。でもフランス版のミシェルモルガンといい声が透き通るようで美しい!適役!盲の演技の時は眼を閉じてたのがもったいないくらい目がキラキラしてた。着物の柄も可愛かった。てか牧師さん美男じゃない?けっこう整って好きな顔だった。弟は…ずっとタバコ吸ってるの気になりすぎたしちょっとちゃらくさせすぎ。フランス版みたいにもっとイケメンで優しくてよかったのでは…?
ん〜〜!ラストはモヤっとさせる終わり方…もうひと踏ん張りなんかしてほしかった。それにしてもあんな雪の中よく撮影したなぁ…とても寒そう。全体的に面白かったし美しかったしなんか気に入っちゃった!ジッドも気に入るわけね!!

山本薩夫の「田園交響楽」



その他にこちらもぜひ
「瞳をとじて」 [DVD]
萩原流行 (出演), 福地亜紗美 (出演), 葉山陽一郎 (監督)

内容紹介
●萩原流行、最後の主演映画!

●ノーベル文学賞作家アンドレ・ジッドの不朽の名作『田園交響楽』がついに映画化!

●萩原流行演じる神野智明が、悲恋の末に選択する生き様は圧巻の極致!


【古都鎌倉 盲目の少女をめぐる愛と狂気の物語】


【見どころ】
親にむごい扱いを受けてきた盲目の少女と、彼女を教育する立場ながら許されぬ思いを抱く中年男のてん末を、鎌倉の美しい景色を背景に描く恋愛悲劇。ノーベル賞作家、アンドレ・ジッドの小説「田園交響楽」を基に、『サル』『湘南ものがたり』などの葉山陽一郎がメガホンを取る。生徒であるヒロインを愛してしまう主人公を、『修羅がゆく』シリーズや『WARU ワル』などの萩原流行が熱演。盲目の少女役に『鈴木先生』シリーズなどの福地亜紗美がふんする。許されぬ愛によって身を滅ぼす主人公の生きざまに圧倒される。





最後に第一楽章「田舎に着いたときの楽しい気分」を