山田太一の名作ドラマ - 『沿線地図』と... | 映画探偵室

山田太一の名作ドラマ - 『沿線地図』と...

原作 Amazonレビュアー、モデラートMIYAUCHIさん

5つ星のうち5.0世の中の本質的な問題を普遍的な物語として描いた秀作
2015年12月5日
山田太一のドラマ作品は、いずれも見応えがあるものが多い。
この『沿線地図』は1979年の金曜ドラマで全15回シリーズとして放映された。
すでに「それぞれの秋」、「男たちの旅路」、「岸辺のアルバム」などで、
核家族やマイホーム主義の問題、引いては戦後日本社会の根本的な問題を浮き彫りにし、
日本中の視聴者に考えるべきテーマを突きつけた。一見平和に見える日本人の日常性の中に、
根本的な大きな矛盾点が存在することを指摘してくれたのである。

戦後の日本は、ひたすら経済的に豊かになることを目的としてきた社会であり、
当の日本人自身がその考えに疑問を抱くこともなく、ひたすら働き続けてきた。
お手本としたのは、いうまでもなくアメリカの経済至上主義であった。
このような思考回路は現在にも引き継がれ、それに素直にしたがって日本人は生きてきた。
その結果外側からみれば、それぞれの家族は衣食足りて、マイホームを持ち、
仕事にも恵まれて幸福そうに見えるが、ほんとうの幸せとは何なのだろうか…?
経済的繁栄の中で暮らことができれば、万事が幸せなのだろうか?
山田太一の問題提起は、そのことから説き起こされる。

経済的豊かさは、高学歴と一流会社への就職という現実によって有効に実現し、
そこから幸せな結婚を生み出すことができ、幸せな一生を送ることが可能になると、
平然と信じられてきたような風潮があり、日本はいまだに学歴偏重主義であるともいえる。
主人公高校生の志郎は、東大を目指して順調に学業に邁進しているふつうの真面目な少年であり、
一橋大学出の銀行マンの父親から「人生の半分は入った大学で決まる」と言われる。
これはある意味、世の中のある立場にいる多くの人々にとっては本音というものかもしれない。
しかし、志郎は道子という女子高生に出会い、世の中の見方が次第に変わってゆくのである。

志郎は、それまでの勉強と読書三昧の人生から、人間の幸福とは何なのかを、
道子とのつながりを通して考え始める。そして、自分にとって価値ある人生は、
世の中によって決められた利己的な損得のルールに従うことではない、
という人生を選び取ることになる。そして、志郎と道子は高校を退学して、
駆け落ち同然で家を飛び出し、同棲生活をはじめる。
そのような人生を選び取ったことにより、彼らに果たして幸福な未来はあるものだろうか?
現実の厳しさを知る大人としては、この状況を簡単に肯んじられるものではないとはいえ、
しかし、彼らがまちがった道を進んでいるという確信を持つことができないまま、ただ
茫然自失となるだけでなのである。

人生とは何なのだろうか? 人の幸福とは何なのだろうか? 人を愛するとはどういうことなのか?
私たちは、実に危うく脆い常識を支えとして生きているに過ぎない。
そのような常識が突き崩された時、その後の人生の価値の所在はどこにあるのか?
この問い掛けは普遍的な問題であり、誰に対しても、いつの時代にも通用する根本的なテーマである。
むしろ現在では、益々この問題が先鋭化してきているように思われる。
いやむしろ明るい未来などとうの昔にあきらめて、皆が刹那的に目先の人生のためだけに
汲々として生きているだけのように見えるほど深刻になっている。

『沿線地図』はどのような家庭にも起こりうる、人生の本質に満ちた物語が見事に成立している。
テレビドラマもすばらしかったが、このようなドラマをまったく放映しない今では、
この小説を読むことで、考えてみるのもよい気がする。ドラマにはない巧みな表現が
小説の中には随所にあることを予め申し上げたい。
しかし、テレビドラマは素晴らしかった。脇役を固めていた名優たちの多くは故人となってしまった。
時代の推移を感じてしまうが、素晴らしい演技者たちであった。
そして道子を演じた真行寺君枝の魅力的な存在感はまさに道子のはまり役であり、
今でも長く心に残っている。

Wikipediaによる解説:沿線地図
本作のDVDは発売されていないようだ。Youtube上には下記の動画のみがあった。

テーマソングとして使われた「もう森へなんか行かない」、フランソワーズ・アルディ


第12話から

https://youtu.be/2TIwqz0aPI4

第14話から


河内桃子と河原崎長一郎


切ない、非常に切ない。映画やテレビを観るようになってからずっとファンだった河内桃子さんがこんな役を演じるなんて、と思ったものだった。私の中では本作にも出演している児玉清なら似合いの夫婦だろうなあ、というイメージがある。いつもブログを拝見させていただいているtetsu8さんの「お宝映画・番組私的見聞録」の中の「東宝俳優録22 河内桃子」の記事にこの『沿線地図』が漏れていることが輪をかけて切なかった。この「浮気の構図」はやはり山田太一の「岸辺のアルバム」でも強調されており、まさか、まさかの八千草薫と竹脇無我によって演じられた...

「岸辺のアルバム」


探偵も喜寿を迎えた。ながらえば実感があるようでないようで、しかし、気がつけば遥かな時間が過ぎていた...「ながらえば」

思いがけず、Youtube上に奇徳な方がいて録画しておいたという動画をUpしてくださった。NHKアーカイブズでも視聴可能なようだが、その便宜の無い方のために下記のURLを貼り付けておく。

「ながらえば」

Narito Omaezaki さん
2016/05/30 に公開
ビデオデッキが古く途中で壊れそうでしたが、何とか映像を残せました。良かった・・・。
(感謝です、洋画に用があり)

nao mizusawa さん、1 か月前
昭和のTVドラマのクオリティの高さよ!!!世界に誇る名優・笠智衆の晩年の演技に心震える。アップを感謝致します。
内容紹介
山田太一原作、笠智衆主演による秀作3作品のDVD化!
老人、老夫婦の生き方、息子たちとの絆を通して、現代日本の高齢化社会が抱える問題をあらためて探る。

【原作】 山田太一
【音楽】 湯浅譲二
【演出】 伊豫田静弘
【出演】 笠智衆、長山藍子、中野誠也、佐藤オリエ、堀越節子、宇野重吉 ほか

寝たきりの妻を名古屋の病院に残し、富山に転勤する息子一家と暮らさなければならない老夫。しかし妻に会いたいという思いは日ごとに強まり、ある日彼は名古屋へ向う列車に飛び乗ってしまう。だが、ふとしたことから途中下車を余儀なくされた彼は、そこで、今しがた老妻に先立たれた旅館の主人と知り合うことになる―。(昭和57年11月放送)

ドラマ/セル/65分/4:3/モノラル/片面一層/カラー
内容(「キネマ旬報社」データベースより)
山田太一原作、笠智衆主演で贈る、1982年にTV放映されたドラマ。妻を名古屋の病院に残し、富山に転勤する息子一家と暮らすことになった老夫。彼はある日、妻に会いたい一心で名古屋行きの電車に飛び乗り、そこで老妻に先立たれた男性と知り合う。