あの人の今 - エンツェンスベルガ― | 映画探偵室

あの人の今 - エンツェンスベルガ―

数の悪魔
前回の山本義隆氏も同様だが、世界の歴史を見ると激動期に中心的役割を演じた科学者、あるいは、その政治的な活動以後に本来の科学の道に進んだ人、は少なくない。このエンツェンスベルガ―も当時の西ドイツの学生運動を注視していても、科学特に数学に興味のなかった人はその後に思いを馳せることはなかっただろう。

エンツェンスベルガ―
Enzenns
エンツェンスベルガ―は70年代に全世界的に「吹き荒れた」学生社会主義運動の精神的主柱として私の記憶にあります。西ドイツの学生の先頭に立ったドゥチケ(下の写真)の記憶と共に。
アルフレート・ウィリ・ルディ・ドゥチュケ
ドチケ、ドケチではない 山本義隆氏は東大全共闘の議長でしたが、専門は物理学でした。私が学生運動から得たものは「思想の根源に科学を据える」でした。直接的に、あるいは早急に結論には至らなくても、しっかりした基礎つまり哲学を含む真理の探究を土台に据えること、です。物理学も数学も「定理」を扱いますが、一般には誤解されているように思います。それは机上の空論に過ぎないとか、観る(受け取る)人間の思考的立場によりそれは変わる、というものです。

そうではありません。物理学や数学の「定理」は永久に不変であり、「美しいもの」なのです。「机上の空論に過ぎない」とは言い換えれば観察者の立ち位置に左右されない不変の真理であるとも言えますし、永久(あるいは絶対に)にという意味は、哲学の真理は時を重ねて深化・拡大することはありますが、以前の真理が否定されることはありません。数学は、たとえ人間でなくても、猿や虫や植物にとっても真理です。さらに、例えば人間の存在が仮定されない場(純粋な物理空間)においても真理である事を意味します。飛躍するようですが、これは「知」の在りようの問題、つまり情報とコミュニケーションの問題なのです。(続)

まもなく新年になりますが、今年の最期は2016年12月31日23時59分60秒となります。おや?そうです時刻表示では閏秒が挿入されるのです。1秒得しましたね?(笑)