映画「美しき諍い女」物語編(10) | 映画探偵室

映画「美しき諍い女」物語編(10)

何曜だい 「何曜だい?」

「月曜。」

「完全に忘れていた。」



「こちら,マリアンヌ。」

「すまなかった。」

「こっちがニコラだ。」

「ああ,ひどい記憶力だ。]

「恥ずかしいわ。」

「許せんな。しかし暑いね。」

忘れてた マリアンヌよ

ニコラだ 暑いね










愚痴をこぼすのは 来た理由は











「愚痴をこぼすのは終わりよ。」
「来た理由は分かっている。さあ,行こう。」
立ち上がる ヘンなことが起こりそう








「何か妙よ。きっと変なことが起きるわ。」
どこへ2 どこへ1











階段を上り始めたころ,教会の鐘が鳴り出した...
手をつなぐ それにしても二人は仲が良い。


「いつか展望台をつくる。望遠鏡つきだ。」(フレンホーフェル)

「1回使うと10フランでしょ。」(マリアンヌ)

「すばらしい景色が見られるわ。」(リズ) 注1)


「景色は後回しだな。」(バルタザール)

「行こう,早くみたいだろ。あっちだ。」(フレンホーフェル)
南仏1 景色は後回し










そこだ









「そこだ。」

そこだそこだ2












そこは 閉ざしたままになっていたアトリエの内部は...


「教会みたい。」
「元々は納屋で,下は馬小屋だ。」





アトリエ1 ここがアトリエか










怠け者2 君なら











「君ならここで,どんな絵を描く?」


「私はずっと来ていない。」

「怠け者になったわ。」

「約束を忘れたのは... 怖れていたからだ。君たちのことをね。しかし,誤解しないでくれ。リズと私は二人きりで完全に安定した生活を送っている。幸せといえる。」
二人きりで 不幸を運ぶ








「君たちが不幸を運ぶんだ。」

「どうかしてるわ。」 「非難してるわけじゃない。非難じゃない もう君もあとには引けん。」

「ルーセルのところで飲んだのね?」

「この家に混乱を招くが,君らも不幸になるぞ。」

「邪魔する気はなかったが,あなたが招待した。」



「その通り。絵を見て学びたいか?私の絵に興味があるんだね?」「そうです。」
その通りそうです










君には無い
「最近は?」

「君にはない。」


「ニコラ,来たまえ,一番古い絵だ。乱雑だろ。」


ふと気がつくと,リズは何かの絵を熱心に見ていた...





一番古い絵だ リズが見ているのは











上のほうが 二階へ












「上のほうがもっときれいよ。」
二階の二人ポーズするリズ










置かれた絵 先史時代だ







これは

「これは?」

「先史時代の作品だ。12歳だった。」
「あれは?」 

「悪くはないが平凡だ。」





「おっと,これは自画像だ。ノーコメント。」
自画像だ 不安げに見下ろす








階下では


「これはどうだい?」

「すばらしい。」

「悪くはないが,ダメだ。血の気がない。」

これはどうだい すばらしい










血の気が出る 「仕上げれば血の気が出るんだが。」

「望みすぎでは?」

「まさか。」









血が通ってる 「”美しき諍い女”は血が通ってる。」








「”美しき諍い女”とは?」

「5年ぶりだぞ。」

「忘れていたんだ。」

「これも気に入っている。どうだ?」

諍い女! これも気に入っている











「その絵が見たい。」

「存在しない。構想半ばで断念した。」
あるわ
「あるわ。ここにあるでしょ。」





「なぜその題を?」

「別に,17世紀にいた娼婦の商売名だ。」





それを言うな 娼婦の











カトリーヌ・レスコー 「カトリーヌ・レスコー,突飛な生涯を送った。

本を読んで急に画きたくなった。」(注2)






「朝の3時なのに全然眠れなかった。」

「あたしを思って?」


俺は見た 朝の3時











君のせいだ 私を思って













諍い女とは 「君のせいだよ。」

「あたしの?」
「そうだ,君こそが”諍い女”だ。」





「”諍い女”とは?」
知ってるわ 「知ってるわ。4年いたケベックではよく皆が使っていたわ。」
けんかッ早い 「知ってるのか?そうだ,”けんかっ早い女”とか...」


そして二階を見上げて付け加えた。

「うるさい女のこと。」







「その絵がある。」  「ないと言ったろ!」

その絵がある無いと言ったろ











ぼうぜん 強く言い過ぎた










「いい加減で食事にしましょ。もうできてるころよ。」
食事にしない できてるころよ










振り返るもしかしたら











あの女こそ シルエット










もしかしたら,あの女が諍い女ではないのか?


注1:ここは南仏のプロヴァンスである。有名な丘陵地帯でぶどう酒の有力な産地である。ゴッホの愛した地域はここよりまだ南東にあたる。

注2:バルザックの短編を指している。