映画「1984」:(10) ビッグ・ブラザーを愛するようになるまで(2)
オブライエン,その本当の名は?
愛情省の建物は首都の何処からでも見える巨大な建物であった。その方形の塔の四方の壁麺からは常にビッグ・ブラザーが鋭い視線を人民に対して向けていた。
ウィンストン・スミスは執事に案内されて愛情省の奥深い場所にあるオブライエンの執務室に入った。エレベータ内はもとより,廊下の到るところにテレスクリーンがあり,そこではアンパーソンの新たな対象者が次々と読み上げられていた...
オブライエンは「文書の検閲」作業を続けていた。
-この見解には6ダブルプラスの馬鹿げたクライムシンクすれすれの... 削除せよ。ピリオド。-
スミスに気がつくと,彼は「かけ給え」というように手で指し示した。
執事が二人のグラスに酒を注いだ。
「これはワインと言う飲み物だ。残念ながら党の外部までは行き渡らないのでね。」
「我々の指導者に,乾杯!」
オブライエンは振り向くと,折しもゴールドスタインが映し出されているテレスクリーンのスイッチを切った。
「あなたはスイッチを切ることができるのですか?」
オブライエンは語りだした。
「レジスタンスを続けているソートクリミナルは実際にはいない。しかし,どうかそれが実際にいると信じてくれ,ウィンストン。おそらく君はそれがどのような働きをするのか良く知らないだろう。」
「私はいつもニュースに耳を傾けています。」
「そうか。おそらく君は陰謀を企む巨大な集団を想像しているだろう。何か残虐な行為を働いたり、社会の道徳や秩序を弱体化させようと企むような。しかし,実際はもっと、ずっとぼんやりしたものだ。もしゴールドスタイン自身がソートポリスの手に落ちたとしても、彼は自分達のスパイのリストを提出することはできないだろう。そのようなリストは存在しない。それは通常我々が知っているような組織ではないのだ。
実体ではなくて、概念に過ぎないのだから。
彼らが望むような変化は彼らの生きているうちには起こらないだろう。ソートポリスを前にすれば、彼らは集団として行動することは不可能だ。1人一人ばらばらに、お互いを騙しあい、事実を曲げ、脅迫し、そして子供たちをスポイルする。病気や売春を広めるのがせいぜいだ。
知識の普及という名の下に、世代から世代へと。
そして、やがて千年もするうちに…」
ああ,もう時間だ。その本は君が関心を持つと思うよ。持って行きたまえ。」
オブライエンは振り向くとテレスクリーンのスイッチを再び入れた。画面いっぱいにビッグブラザーの顔が現れる。
オブライエンは最後に言った:
"Good bye, brother."
(続く)

























