コンドル(13)
探偵としてはお二人にできるだけ時間をあげたい気持ちなので,この間を利用して野暮な話を片付けてしまいたい。
実は先ほどの工作会議で,勘のいい観客には,「敵」そのものを除き,今後の展開がほぼ推理できるようになっている(ただし原作とは異なる)。
ターナーの経歴や事件の経過を説明するヒギンズが報告者の位置に,そして本部長を真ん中にお歴々がずらりと並んで検討が開始される。この本部長は「第一次大戦時から諜報に従事している」という男で,老人にしては血色も良く,悠々,堂々としている。報告を受けながら時折り挟み込むコメントから,視野が広く,思考が柔軟であることが伺える。「悩ましい男だ」と言ったのはこの本部長だった。途中で電話が一本入る。全く顔色を変えることなく,「ターナーの経歴に銃の腕が書いてないことは信じられない」という意見に対し「報告書が改竄されていたのかも知れない。何か対策はあるのかね,副本部長?」であった。これで決まった。副本部長がどう答えるかに関わりなく…
そして,
次の,つまりターナーとキャシーの場面の次の場面は,この作戦副本部長があの殺し屋と並んで歩く夜のワシントンの街となる。
「まずいことになった」
殺し屋(マックス・フォン・シドー)が答える。
「彼は素人だ。緊張もしている。それだからこそ常識に当てはまらない動きをする。ウィクスとは違う」
「ウィクスをオトリに使って呼び出そうか」
「無理だろう。あの男には通用しない」
「時にターナーに殺された男は何者だ?」(この発言に注意:探偵)
そばをアベックが通ると,突然二人の会話がフランス語になる(それを補うように英語のスーパーが出る)。
「サム・バーバー,彼の親友だ。ただの会計係だ。何で興味がある?」
「みんなまとめて始末するためだ。ウィクスで失敗したからその埋め合わせに」
「それは困る」
「大丈夫,無料にする。」
ここで観客は気づかなければならない。あの本部長への電話は何と言っていたのか。そう,本部長からマックス・フォン・シドーに直接連絡が取れた,という報告である(探偵の推理)。とすれば,本部としての本当の標的が誰になったのか。マックス・フォン・シドーは夜の闇に再び消えた。ターナーの最大の敵がこの男であることは疑えないが(野暮な話が終わって次に続く)。