コンドル(9)
ツインタワー・ビルのヘリポートに白いヘリコプターが到着する。機体番号さえ書かれていない。
ブリックリン橋が見える窓辺にいるヒギンズ。そこへ公園の公衆電話からターナーが電話をかけてくる。
オペレータ室の少佐が対応する。
「こちら少佐。ニューヨーク支部につなぐ」
そして電話器は逆探知用のドック上にセットされる。
「コンドルです」
ヒギンズの部屋。窓から離れてヒギンズがデスクで電話を取る。
「ハロー,コンドル」
ターナーの声(スーパー):「お前は誰だ」
「副支部長(福祉部長ではない,あ,お呼びじゃなかったか。失礼しました。探偵)のヒギンズだ。今どこにいる」
公衆電話ボックスのターナー:「俺は暗号名なのに,お前はなぜ暗号名を使わない」
ギクッとするヒギンズ。すぐさま何かを推測する,そして平成(じゃない)平静を装って言う。
「いまどこにいる」
電話ボックスのターナーも推理する。
「ここだ」
ヒギンズ:「気分はどうだ」
ターナー:「みんな殺されたんだぞ」
ヒギンズ:「落ち着け。すぐ保護してやる」
そこへグロバーを連れたウィクスが入って来る。
ヒギンズ:「アンソニア・ホテルを知ってるか」
ターナーの声:「ブロードウェイ71丁目だ」
ヒギンズ:「73丁目だ。裏に路地がある」(注:同ホテルの裏側の通りということである。)
グロバーとウィクスもターナーの声を聞きながら資料を見ている。
ヒギンズ:「1時間後の15時30分に73丁目側から入りたまえ」
電話ボックスのターナー:「だれが来る」
ウィクスが自分を指差してヒギンズに指示。
ヒギンズ:「本部から着た君の課長が迎えに行く」
電話ボックスのターナー:「顔を知らない」
スーパー:「今君の写真を見ている」
電話ボックスのターナー:「……」何かを必死に考える。
ヒギンズ:「ターナー,ターナー」
電話ボックスのターナー:「あんたも知らない」
ヒギンズのデスク脇でウィクスが資料を検討中。
ヒギンズ:「心配ない。課長は経済新聞(ウォール・ストリート・ジャーナル)を持ってる」
電話ボックスのターナー。スーパーでヒギンズの声:「左手にな」
ターナー:「家に2人組が来た」
ヒギンズ:「なぜ家に帰った。行くなといったろう」
ターナー:「疲れたからさ。何者だ」
ヒギンズ:「仲間さ」
ターナー:「何しに行った」
なにか手立てを考えようとするヒギンズ達。
電話ボックスのターナー:「ホテル裏へは行かない。チェっ,何が経済新聞だ」
ヒギンズ:「君は今日,ひどい目にあって」
ターナー:「その通りさ」
ウィクスが資料の中の何かを指差す。
ヒギンズ:「分かった。君の友達を連れて行こう」
ターナー:「誰だ(正確には「誰が残っているのか」(探偵注)」
ヒギンズの声(スーパー):「統計係のサム・バーバー」
ターナー,何で知っているのかという顔をする:「さすがだな」
ターナー:「よし,サムならな」
ヒギンズ,指でOKの合図をウイクスに知らせ,時計を確認。
「あと60分で保護してやる。安心しろ」
ターナー:「質問してもいいか。何があった?」
ヒギンズ:「60分後に話す」
そして独り言を言う。「あと55分しかない。」
地下の装備室では連れて来られたサムに防弾チョッキが渡される。背景は射撃訓練をする別の要員。
ウイクスが万事手馴れた手順でサムに武器を渡す。45口径だ。サムは「大げさな」という。
ウィクスは自分用の拳銃を聞かれて「要らん」(イランではありませんよ,念のため:探偵注)という。
サムの身支度を手伝いながらウイクスが「コンドルとは友達だったのか」と訊く。
「大学の同級生でした。家内も一緒に」と答えるサムの表情にウイクスの声が被る「コンドルの彼女だったのか」
唖然とするサム。何かを疑い出す。
「話してください。今朝の殺しのことを」
ウイクス:「何のことだ」
ホテル裏の半地下の階段に潜んでいるターナー。
路地の真ん中に立っているサム。
ウィクスが手持ち無沙汰で煙草を吸っているサムに対する親切心に見せかけて,ゴミ用の開き缶を縦に重ねる。明らかに何かの都合に使うためだ。ウィクス自身は建物側に身を隠している。
時間通りにターナーが路地の入り口から姿を見せて呼ぶ。
「サム」
「ジョー」,サムがこちらに歩いてくる。
ターナー:「1人か?」
サムが「いや,もう1人」と言おうとしたとたん,ウイクスが缶を蹴飛ばすと同時にターナーを狙ってサイレンサーを発射する。
サム:「何してんだ,相手はジョーだぜ」
ターナーが身をかがめて弾を避けながら反撃した。ウイクスの太ももに当たる。何がおきたか分からないでパニック状態のサムにウイクスはじっと狙いを着けた。ウイクスの撃った弾は驚くサムの喉元に的中した。サムが死んだ。思いがけない展開に,ターナーはとにかく現場から一刻も早く逃げるしかなかった。