コンドル(6) | 映画探偵室

コンドル(6)

いつものハンバーガー・スナックで「博士」というあだ名を持つターナーが冗談をとばしながら機嫌よく昼食から帰る頃には雨は上がっていた。

そしてまたいつものように監視カメラに向かってピース・サインを送る。ドア・ロックの解除を知らせるブザーは鳴らない。しかし,ドアを見るともう少し開いている。不手際を冗談の種にしようとしてターナーはドアを開けながら言った。

「警備システムの故障か?」

惨劇が起こった。いや,起こりつつあった。警備員が死んでいる。階段では博士が死んでいる。振り返れば女性受付係も死んでいる。この瞬間,ターナー自身が優秀なCIA要員に変貌した。2階からは読み取り機の音が聞こえている。そして用心深く階段を上ってまず発見したのは,虫の息の恋人だった。彼女を抱き上げた時,その温かみから,まだ敵がいる可能性を想定に入れた。他のメンバーは全員死亡していた。しかし,抱き上げた瞬間彼女は何もいえないまま息を引き取った。トイレのドアの弾痕,女の背中に残る弾痕,そして階段の弾痕が映される。つまり,これらの縦弾が氷かどうかをターナーが確認した,ということであり,観客は自分で判断してください,ということである。動き続けている読み取り機から打ち出されつつある文字が何であるかは通常の観客には読めないだろう。ワタシも皆さんに教えるつもりはない。ワタシは整体治療師の回し者ではないからだ。

敵はまだ近くにいる。監視カメラの映像では外は異常が無い。連絡を取ろうして受付係の電話に手を伸ばすが止める。盗聴を恐れているのだ。受付係だった女の胸には喫いさしの煙草がまだ燻っているのである。ターナーは引き出しの中からコルトを取り出し自分の身に着けた。それから用心深く外へ通じるドアを開ける

ここからがターナーと「敵」だけでなく,映画の作者と観客,そして当探偵と読者との間の枕較べ,じゃなかった読み較べになる。

CIA側に犯人がいることはもう分かっている。ターナーの情報分析からいって(ターナー自身は知っているわけだから),いわゆる「アラブ側」がターナーたちの暗殺を計画する理由がないことは明白だ。しかし,うかつに連絡してもいいものかどうか。本当の「敵」は誰なのか,どのレベルなのかは分からない。1人1人の一挙一投足,1つ1つの言葉がすべて「暗号」なのだ。ここからは背景の画面と台詞だけを繋げて行こう(もうちょっと待ってね,昼食の時間になったので。また後でね)。