メグレ警視
そろそろ本題に戻らないと依頼者がなくなってしまうのでは,という売れない探偵事務所のバカ室長(ワタシのこと)の不安(ファンではない)から,シムノンの産み出したメグレ警視について書こうと思う。ワタシの兄(6つ上)は早くからシャーロック・ホームズの(つまりドイルの)熱狂的ファンで,先ごろ逢う機会があったとき聞いてみると「シムノンはやりきれない話ばかりで好きになれない」とのことだった。スリルとサスペンスそして帰納的推理の典型シャーロック・ホームズと,演繹的推理のポアロ,推理というよりは社会派のシムノン。好みはさまざまだろう。同じベルギー人(メグレ警視はフランス人になっているが,シムノンはベルギー人,ポアロはベルギー人という設定)でありながら,アガサ・クリスティは推理のみに集中して決して人間の弱さ,醜さには深く切り込まない。一方でメグレ物は殆どやりきれないような犯罪者ばかり出てくる。なぜか。シムノンの場合,答えは本の外にある。フェリーニとの書簡で彼は概そ次のように言っている:「私のことを既成宗教(カトリックのこと:室長注)の信者だと思っている人がいるようだが,それは違う。私の宗教はそれより上の本源にある。」
とはいえ,カトリック信者であるため子沢山になってしまった,という設定や料理好きの奥さんを愛しているところなど,メグレ警視シリーズにもほのぼのとした面は数多い。
現在,フランスで放映されたメグレ警視シリーズDVDの全巻(10ボックスある)を買おうかどうか悩んでいる。うちの奥さんはおそらく許してくれそうにないから。