暖かな風が吹く海沿いのホテルで一人、
遠くに見えるヨットが風に踊っているのを彼は見つめていた
思い出は打ち返す波のように過去と未来の狭間で揺れながら
伸ばした手は宙を彷徨っている
静かな昨日は未来へと憧れて
後悔したままのあの日の色を今も鮮やかに映し出すんだ
まさにあの日のあなたの眼差しのような優しさに似て、
彼が捜し続けるための道しるべみたいだ
いつになれば届くのだろう?
こんなにも想い焦がれた願いは彼を縛り付けて
「どうして?」と繰り返す子供みたいに今日を問い正していく
忘れたくないときつく抱きしめたはずの瞬間を 人はいつもどこかに置き忘れてしまう生き物なんだね
答えはきっと風の中に漂い続け、
愛はいつも離れず寄り添っている
そう、離れることのない自分の影のように。
このバルコニーから見えるすべてに許されたような気がして
彼は少し独りごちていられたんだ
誰もが通ってくる時間のトンネルの中で見つけられるものと失ってしまうもの。
その出逢いの中で育んでいく”心”そのものが、リアルな今の彼の姿なんだけれど、、、。
みんな迷って傷ついて、誰かを傷つけながら本当を知っていく
わがままな生き様に意地を張る夜もあるけれど
それでも”あなただけ”にはわかって欲しいと願っているのは、やっぱりただのわがままなのかな?
この優しい風の中で、転がっている今日を拾いながら
また新しい想いに出逢えると彼は信じている
それはどんなにも続いて行く世界にあてがわれた性のように
今日という確かな舞台に彼がいる真実なのだから、、、。