野生動物にとって「におい」は重要なものです。縄張りのマーキングや異性を引きつけるためには有用なものですが、狩りの(あるいは狩られる)場合には、相手に気づかれたらまずいのでない方が良いものになります。
では人間は?
昭和の時代には、体臭のことはあまり大きな声では語られていませんでした。若い人間が腋臭を気にしてエイトフォーをシュッと吹きつける、とか、部屋の反対側でもわかるくらいに香水をつけすぎた人が顰蹙を買う、といった感じだったかな。
最近は体臭も高齢化したらしく、「加齢臭」がいつの間にか嫌われ者として定着しています。加齢臭が嫌われているのか、高齢者が嫌われているのかは、私にはわかりません(嫌っている人に分析的に丁寧なインタビューをしたらわかるかもしれません)。
ところで最近「風呂で熱心に石鹸で洗わなくて良い」という“運動”が流行っているそうです。汗なんて水をかけたら流れるものだし、石鹸で洗いすぎたら保湿成分が皮膚から奪われてしまう、ということだそうで、その主張には説得力があります。
ただ気になるのは「臭くならないのか?」。
汗腺にはエクリン腺とアポクリン腺があります。で、エクリン腺から出る汗はたしかに「水溶性」ですから「水をかけたら流れる」でしょう。しかしアポクリン腺からの「汗」にはタンパク質や脂質が含まれています(この「汗」の代表は、脇の下の汗や母乳です)。これは水だけでは落ちないでしょうし、そこに細菌が繁殖したらとても臭くなるのではないかなあ。「洗わない主義」の人も、脇の下や股は定期的に石鹸で洗った方が良いのではないか、と私には思えます。
「熱心にきれいにしなくて良い」と言えば、最近は「耳掃除」も取り上げられていますね。熱心に耳掃除をし過ぎると、外耳道に傷をつけて湿疹などの原因になるし、耳垢には外耳道の皮膚を保護する機能があるし、掃除をしなくても咀嚼運動で耳垢は自然に外に押し出されるようになっている、ということだそうです。これまた説得力のある主張です。
で、ここで私が気になるのが「耳垢栓塞」です。小児科や耳鼻科に連れてこられる「難聴になった子供」の中に、「耳掃除を嫌がるから放置していたら、耳垢で耳の穴が詰まってしまった」子がいるのです。あ、これは子供に限定しない方が良いですね。大人でも同じ“病気”を見たことがありますから。
あまり熱心にではなく、でも時々は軽くお掃除はしておいた方が良いのではないか、と私には思えます。耳垢は水をかけても流れませんから。