パクリ、パロディ、オマージュ、インスパイア――違いがわかりますか? | ”ミ”スターAkiraの救急救命室

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2012年初頭、“クモ膜下出血&”脳梗塞“で倒れながらも、何とか独り暮らしが出来るまでに。
この間、お世話になった病院や施設、自主トレ用に用意した用具やアイテム、「障碍者でも利用できる施設&レストラン」をDateランダムに記録した個人奮闘日記。

11/21(火) 15:11配信

日経BizGate

優れた芸術家は模倣し、偉大な芸術家は盗む

 商標を巡るさまざまな謎を解くシリーズ。今回はパクリの基準を解説します。

 パクリ商標のすべてが悪いわけではありません。そもそも「学ぶ」は「まねぶ・真似る」から来た言葉だそうです。画家のピカソも、「優れた芸術家は模倣し、偉大な芸術家は盗む」と言っています。

 ところで、「パクリ商標」とは一体何のことでしょう。商標法その他の法律のどこにもパクリ商標の定義はありません。

 こういうときは、一度分解してそれぞれの部分の意味を考えたり、似たような言葉と比較したりしていくことが効果的です。まず、「パクリ」の一般的な意味について考えます。

 パクリに似たような言葉として「オマージュ」「パロディ」といったものがありますが、ほかに「インスパイア」があります。これらについて、インターネットにこんな記事がありました。なかなか優れものなので、紹介しておきます。“Vicul.net“(バイカル・ドット・ネット)というニュースサイトに掲載されたツィート文です。原典は不明です。

 「これ2chでみつけたけど、なるほどなと思いました。
  ・バレて困るのがパクリ
  ・バレると嬉しいのがオマージュ
  ・バレないと困るのがパロディ

 そこに追加で
  ・バレたときの言い訳に使うのがインスパイア
 でどうかな?」


 この言い方によれば、パクリは盗む意味合いが強く、文字通り「盗作」という感じです。大ブレイクした芸人さんのセリフが、何々という本に書いてあるものとソックリだと言われるときなど、これに当たる場合があります。本当に盗作なら、芸人さんにしてみればバレたら困りますよね。

 オマージュを英語で言うと「homage」、「尊敬」を意味します。だから、そこに尊敬の念がないと、タダのパクリ。よく知られているものとして、映画『荒野の七人』は黒澤明監督の『七人の侍』のオマージュと言われています。『西遊記』をオマージュしたものが、マンガの『ドラゴンボール』だそうです。

 

芸能、映画...名作の多くに元ネタ

 パロディとしては、たとえばものまねタレントのコロッケさんの「五木ロボット」がそれに当たります。ただ、これは五木ひろしさんを知らない人(いないと思いますが)には全然面白くありません。だから、五木ひろしさんのパロディであることがバレないと困るのです。替え歌も、一つのパロディの形態です。「森トンカツ、泉ニンニク、かーコンニャク、まれテンプラ......」は、ブルーコメッツの名曲『ブルーシャトー』の替え歌。古すぎて元曲がワカラナイ、という指摘もありそうですが......。

 最後はインスパイアです。ホンダの車のことではありません。「感化」されることです。映画監督のジョージ・ルーカスさんは、神話学者ジョセフ・キャンベルさん(『千の顔をもつ英雄』の著者)の英雄伝説に感化されて映画『スター・ウォーズ』を作り上げたそうです。バレたときの言い訳ではなく、胸を張ってインスパイアしたことをルーカスさん自身が認めています。

 このようにさまざまな言い方がありますが、注意しなければならないのは、すべての人が同じ解釈をしているわけではないということ。また、解釈の仕方は同じでも、たとえばパクリと見るかオマージュと見るかのように評価が分かれることもよくあるということです。

 私が考える「パクリ商標」とは、偶然なのかワザとそうしたのかはともかく「商標法その他の法律に反しないで何らかの形で模倣した商標」のことです。これに対して、法律に反した模倣商標は、「悪意あるパクリ商標」のことです。

 このように書くと、「法律にさえ触れなければ何をやってもいいのか」と突っ込まれるかもしれません。ここが難しいところですが、商標の模倣に関しては、特にビジネス人にはそのつもりで商標を選択し管理してほしいという意味を込め、あえて「その通りです」とお答えします。

 『危険ドラッグ』という好ましくない薬物があります。これは、体への影響は麻薬や覚醒剤と変わらないものや、場合によっては麻薬や覚醒剤より危険な成分が含まれているが、法律による規制の対象外とされている薬物のことです。以前は「脱法ドラッグ」と呼ばれていました。

 法律が適用されるとき、通常は、これに反すれば違法で、反しなければ合法というように、結論はどちらか一つになります。ところが、その法律が作られたネライやワケを考えれば違法も同然なのに、法の脇の甘さを突いて必ずしも違法とは言えないというグレーゾーンがあります。この行為を、脱法行為と言います。

 商標法の世界でも脱法行為がまかり通ることがあるのかと聞かれたら、「ある」というのが私の答です。個人的には歯がゆい思いがありますが、真っ黒ではないので致し方ないところです。

 私から申し上げたいのは、大事なのは、ビジネス人はそうしたことをしっかりと理解したうえで、商標や商標権を扱う必要があるということです。

 なお、当然ながら、「合法」であるかどうかは、自分でそう思ったというだけではダメです。自分では「白」と思っていても、実はそれが「黒」であることもあります。「合法」「違法」の判断は必ず専門家に相談してください。どうしても白黒をつけたいなら、法の番人である裁判官にお願いしなければなりません。

新井信昭 著 『パクリ商標』(日本経済新聞出版社)から