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たつログ。keep In Touch、SMEC、CoEnglish Lab代表ブログ

Keep In Touch in kobe代表のたつしです。

これまでアメブロでブログ担当してくれていた相方からバトンを受け継ぎ、ブログ書きます。

個人的に思ったことを書いていきます。英語関係だけでなく、幅広いトピックを扱っていきます。

では、宜しくお願いします。

久々に読書感想文シリーズ。

今回は「GILT」。

高級ブランド・アパレル各社の商品を

「会員制・期間限定・オンライン」で破格のセールで売るサイト”GILT”の創業物語。

ハーバードのMBAの同窓生の女性二人が中心となり立ち上げて、破竹の勢いで急成長し、「ギルト・ジャパン」の立ち上げの時のことも書かれています。

創業のパートナー選び、資金調達、経営の舵取り。。。。etc...

起業を志す人なら誰もがピンとくるキーワードが散りばめられていて、どれも実際にあった事を書いてくれているのでとても現実に近いケーススタディーになりそうなエピソードが沢山。

映画「プラダを着た悪魔」や、「SATC」「アグリー・ベティ」が好きな人たちにはたまらない登場人物のきらびやかさも読み手を飽きさせないポイントの一つかもしれません。
(ボクはそっちの人ではなかったのでよくわからない感じでしたが・・・)


なかでも、個人的に印象に残ったのは創業期、二人をはじめとした創業メンバーが文字通り「がむしゃら」にひとつひとつのタスクを自分の許容範囲以上にこなして行く姿の描写でした。

会員制のセールをコンテンツにしたECサイトを創業する以上、もちろんサイトへの集客(アクセス数・会員数・認知度)の生命線が最も重大かつ核心になる。

彼女たちがそれを作り上げていくのに選んだのは

「自分たちの周りの人に、自分達のアカウントでメールを送る」

でした。

しかも、膨大な数に。
そして、そのメールに転送してもらうよう「お願い」も書き加えて。

コレがサイトの特性である会員制・招待制のシステムと相性が良く、口火となって広がっていきました。

この、「自分名義で知り合いにお願メールを送る。」という行為が自分たちも含めて、多くの日本のスタートアップは出来ていないんだろうな・・・と考えながら、

日本の場合、受けて側も、そのたぐいのメールを貰ってもいい気がしない文化があるのかもしれない・・と思っていたところで、日本法人立上げの時のエピソードが出てきます。

日本法人立上げに協力した桑野克己氏とGILTのチームはコレを予想して、日本市場での創業準備のサイトの認知度を獲得する戦略からお家芸でも合ったバイラルの戦略を外し、大手新聞・TV・雑誌を集めての記者会見イベントに差し替えます。

アメリカ本国のチームはこの古びた判断をにわかに信じがたい気持ちで見守るが、結果としてはアメリカでのリリース時に集まった会員は約1万。

日本のメディアでの告知の後は5万超え。

このエピソードが一番本書の中で印象に残っています。

日本のみんなのなかに染み付いた経験の蓄積として形骸化して現れる判断の常識は
「シェア」や、「バイラル」には全く友好的では無く、経費をかけてでも、従来のマスメディアに仕掛けたほうが影響力があることを見抜いたGILTの日本チームと、当時、全盛のSNS系のサービスのコスト安の魅力に打ち勝って効率と費用対効果をしっかりと打ち出したのは「仕事」のなせる所だなと感心してしまいました。

もちろん、このエピソード以外にも、二人の主人公の

「やるべきことを、やる」

の当たり前のレベルの高さに終始驚かされる話が盛り沢山です。
最も強調したいのは、彼女たちは誰にもマネできないようなスゴいことを連続で成し遂げたのではなく、

誰にでも出来るのに、殆どの人が面倒がってやらないレベルの事に対して、ものすごく高い確率で「やる」という決断を下して、「やった」ということ。

そして、二人を中心とした創業チーム4人に明確でハッキリとした役割があり、裁量が分担され、得意とすることの「違い」が明らかであったこと。

ひとつの問題に各々の方向からみんなで立ち向かい、
互いに失礼のないコミュニケーションを終始徹底して心がけることを実践し、
相手に自分が今、この事業の「どの部分の、何をしている」ところなのかが常に見えるように配慮することを最優先して行動して仕事をしたことで、お互いの余剰時間が生まれ、おもいやりによって助け合えるキッカケを毎日の中で恒常的に創りだして行ったこと。

コレは書くのは簡単だが、全員がコミュニケーションを「余分に取ろう」と心掛けていくことを日常のなかで当たり前レベルでやらないと出来ない。

ザッポス・サウスウエスト航空・星のや旅館・カヤック

これらの有名企業に共通するのは「採用」の時点を最重視すること。

いくつもの記事や文献で目にするだけでは表面的にしかわからなかったが、今回のこの本を通して、「コミュニケーション能力」といま、世間で言われていることの多くは、


・複数の役割を同時に進行しながら、「どこにも」支障を来さないよう、事前にまたは臨機応変に「相の手」を差し出すことを積極的に出来る事。

であると仮定することが出来たように思う。

これも、大きな収穫のひとつだった。

そして、最後にリーダーシップの発揮の仕方についてもまとめられている。

リーダーシップはスキルではなく、ある種の状態であることは大学の研究でも取り上げられてきているが、この本の中でも、十人十色のリーダーシップ(人の導き方)を参照している。

つまり、チームが、チームメイトの特性を十分に理解して、互いにその特性を本人の出来る範囲以上に引き出す環境を互いに整え、調整していくことが最も大きなチームダイナミクスを起こしうる環境であり、それを「作る」以上に彼女らは「保つ」努力を怠らなかった。

「リーダーの指示に従う」という概念とは全く逆の

「リーダーをリーダーたらしめるのは環境であり、その環境とは自分たちの言動である。」という考え方で動いているチームこそがリーダーシップを機能させること可能にする。

本当にその通りであることはほとんどの人が経験から身を持って知っているだろうと思う。しかしながらこれも、実現するためには相手のことを考えた行動を自分らしく実践する事が求められる。

個性と協調の素晴らしい共存は、

「相手を理解し、活かす」ために「自分の出来る事を、相手に伝わる形で表現する」

という2つが同時に機能してはじめて動き始める。

これらの点からGILTのチームがいかに非凡に凡事をこなし、優れた能力を互いに引き出し合い、いかんなく発揮したのかが伺える一冊となっている。

終わりに付いている解説は孫泰蔵氏。

彼女たちを手本に挑戦の闘志をかき立てられるのが起業家だけでなく、大手企業の会社員であったとしても、投資家からの資金調達や、顧客の誘導、チームへの配慮はそのまま
、上司への承認の依頼、社内での根回し、同僚への協力の依頼へと置き換えれば誰もが応用可能なエピソードばかり。という読者を励ます一節は清々しい読後感を与えてくれました。

ファッショニスタ、起業家、そして挑戦するサラリーマンにオススメ出来る一冊。

GILT(ギルト) ITとファッションで世界を変える私たちの起業ストーリー