ジャレド・ダイアモンド「銃・病原菌・鉄 -1万3000年にわたる人類史の謎」感想 | S blog  -えすぶろ-

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ダイアモンド博士と一緒に、この1万3千年間の地球のあらゆる時代・地域をつぶさに観て回ってきた・・・

そんな感覚さえおぼえる詳細にして充実した内容でした。

「サピエンス全史」繋がりで、「ビッグ・ヒストリー」に続き、このジャレド・ダイアモンドの代表作「銃・病原菌・鉄」を読んだわけですが、文庫本上下巻合計800頁・・・「ビッグ・ヒストリー」同様かなり手ごわかったです。それだけに最後の頁を読み終えた時にはダイアモンド博士との長い旅が終わったような感じでした。

 

農業革命・定住生活以降、世界各地の人類がたどった歴史の謎を、医学・生物学・生物地理学・環境地理学・考古学・文化人類学・言語学、そして自身のニューギニアでの体験等、あらゆる知識を駆使した学際的アプローチで解明していくダイアモンド博士の博覧強記っぷりが凄まじかったです。正に「知の巨人」という言葉がピッタリだと思いました。

 

「あなたがた白人は、たくさんのものを発達させてニューギニアに持ち込んだが、私たちニューギニア人には自分たちのものといえるものがほとんどない。それはなぜだろうか?」

ニューギニア人の政治家ヤリという人物から受けたこの質問を出発点として、現在の世界各国の間に出来ている大きな格差が生まれた要因を、地域格差のスタートラインとなったと考えられる1万3千年前、最終氷期が終わり人類が定住生活・植物栽培・家畜飼育といった「農業」を始めた時期以降の世界各地について、詳細に考察されていきます。そして、

「決して欧州の白人が優秀な人種だったわけではなく『銃・病原菌・鉄』のおかげで、たまたま5百年前の大航海時代に世界の覇権を握り、その影響が今日まで残ってしまっただけ」であり、「各地域の環境の差による様々な違いが連鎖して文明や生活の大きな差を作り上げていったのだ」ということが繰り返し繰り返し様々な角度から述べられています。

 

特に驚きだったのは病原菌=家畜由来の伝染病(天然痘・はしか・インフルエンザ等)がその免疫を持たない地域の人々に与えた影響の大きさ。死者数が半端ないです・・・伝染病こそが白人たちが意図せず持ち込んでいた「最強の兵器」だったとは。。。

 

後は、当然、日本についての記述も何ヵ所かあるのですが、下記のことについて私は知りませんでした。

研磨加工を施し、刃先の長い石器を最初に作ったのは日本人だった。これは、世界各地の人類がまだ石器を用い、鉄器について何も知らなかった時代のことで、ヨーロッパで石器が研磨されるようになる一万五千年以上も前のことである。世界で最初に土器を発明したのも日本の狩猟採集民だった。それはヨーロッパで土器が見られるようになる五千年前、南北アメリカ大陸で見られるようになる九千年も前のことである。

日本語版への序文より

結構驚きました。縄文時代について語られている事だと思いますが、これについては早速、別の本で調べてみようと思っています。

 

最後のエピローグで、およそ500年前から始まる大航海時代以降、何故、中国ではなくヨーロッパ諸国が世界の覇権を握ることができたのか?という事にも触れられていますが、これがハラリ著「サピエンス全史」の「無知を知る」ことによって始まった「科学革命」にピッタリと繋がっているように感じられました。

このハラリの「科学革命」についてはまた別の記事で書きたいと思います。

 

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