若い頃の話で一つ申し上げますと、
私は人付き合いが得意ではなかったんです。
夕方になると同僚や先輩が目配せをして
一緒に飲みに行ったりする。
「あんなにうまく融けこめるかな」
と思うと、とても不安でしたね。
いまのようにお酒も飲めませんでしたから。
そんな時、出典は忘れましたが、こんな言葉に出合いました。
『穴は深く掘れ。直径は自ずから広がる』
これを自分なりに解釈したんです。
「穴を深く掘れとは、仕事を一所懸命深掘りすることだ。
深くなればなるほど直径は広がっていく。
この直径は人の輪、交流だな」と。
交流を先にやるのは苦手なものだから、とにかく仕事を懸命にやろう。
それなら俺にだってできる。
そう思うと何か精神的に救われたような気がしました。
<中略>
以来、私はそのことをずっと心懸けてきました。
すると不思議に人脈もでき人付き合いも上手になりました。
九州電力 松尾新吾会長 月刊『致知』2010年8月号より
『穴は深く掘れ。直径は自ずから広がる』
この言葉自体、含蓄深いいい言葉です。
一つのことに一所懸命に打ち込むことの大切さが説かれた言葉です。
仕事でいうなら、先日記事に書いた
下足番を命じられたら、日本一の下足番になってみろ。
そうしたら、誰も君を下足番にしておかぬ。
小林一三
という言葉とも合い通じるものがあります。
この言葉を当時30代だった松尾会長は
「穴を深く掘っていけば=自分の仕事に打ち込んでいれば
直径=自分の苦手な人脈や人との交流は自ずと広がる」
と、自分なりに解釈して仕事に没頭した結果、
言葉通り、「自ずと」人脈も増え、人付き合いも上手になった
という体験談です。
仕事と言っても色々な仕事がありますが、
どんな業種・職種といった『穴』であれ、
松尾会長の体験した人付き合いや
それ以外の『直径』は
深く掘ることに没頭すれば
確実に広がる、
私も自分のわずかな経験を省みても
つくづくその通りだなと思います。