今日が人生最後の日だとしたら | S blog  -えすぶろ-

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-人は年をとるから走るのをやめるのではない、走るのをやめるから年をとるのだ- 『BORN TO RUN』より
走りながら考える ランニング・読書のブログ

 人皆生を楽しまざるは、死を恐れざる故なり。

 死を恐れざるにはあらず、死の近き事を忘るゝなり。


      『徒然草』第九十三段より 吉田兼好


吉田兼好が残したこの言葉、今も昔も変わり無く

最も大切なことのようです。

「今日が人生最後の日かも知れない。」

と死を間近に感じることで今、生きていることの

大切さ、かけがえの無さ、有り難さが身に沁みます。

アップルの創業者スティーブ・ジョブスが

スタンフォード大学卒業式で行ったスピーチが

ユーチューブにアップされてますが

彼は兼好と同じことを語っています。



17才の時私はこんな文章を読みました。
「一日一日を人生最後の日として生きよう。
いずれその日が必ずやってくる」
私にとって強烈な印象を与える言葉でした。
そしてそれから現在に至るまで33年間、
私は毎朝鏡を見てこう自問するのを日課としてきました。
「今日が人生最後の日だとしたら、
今日やることは本当にやりたいことだろうか?」・・・


この気持ちを維持するのは難しいですが、

間違いなく生きている我々全員にいつか訪れる『死』を

身近に感じ、だから、今日を精一杯に生きようと毎朝決意する。

見習うべき態度だと思います。



兼好の文章全文も載せておきます。

この「生と死」について説く人と、それを嘲る人々とのやりとり

という構成が見事です。


『徒然草』九十三段全文

「牛を売る者あり。
買ふ人、明日、その値をやりて、牛を取らんといふ。
夜の間に牛死ぬ。
買はんとする人に利あり、売らんとする人に損あり」
と語る人あり。

これを聞きて、かたへなる者の云はく、
「牛の主、まことに損ありといへども、また、大きなる利あり。
その故は、生あるもの、死の近き事を知らざる事、
牛、既にしかなり。人、また同じ。
はからざるに牛は死し、はからざるに主は存ぜり。
一日の命、万金よりも重し。
牛の値、鵝毛よりも軽し。
万金を得て一銭を失はん人、損ありと言ふべからず」
と言ふに、皆人嘲りて、
「その理は。牛の主に限るべからず」
と言ふ。

また云はく、
「されば、人、死を憎まば、生を愛すべし。
存命の喜び、日々に楽しまざらんや。
愚かなる人、この楽しびを忘れて、
いたづがはしく外の楽しびを求め、
この財を忘れて、危く他の財を貪るには、志満つ事なし。
行ける間生を楽しまずして、死に臨みて死を恐れば、この理あるべからず。
人皆生を楽しまざるは、死を恐れざる故なり。
死を恐れざるにはあらず、死の近き事を忘るゝなり。

もしまた、生死の相にあづからずといはば、実の理を得たりといふべし」
と言ふに、人、いよいよ嘲る。



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