石川啄木 『一握の砂』発刊100周年 | S blog  -えすぶろ-

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-人は年をとるから走るのをやめるのではない、走るのをやめるから年をとるのだ- 『BORN TO RUN』より
走りながら考える ランニング・読書のブログ

石川啄木の歌集『一握の砂』は

明治43年1910年発刊だと昨日ある本を読んでいて気付きました。

今年で100周年。

100年前の歌と思えない

今の私達の心にしっくりとくる歌が多く

再度、この機に沢山の人に読まれるといいと思います。




いたく錆びしピストル出でぬ
砂山の
砂を指もて掘りてありしに

たはむれに母を背負ひて
そのあまり軽(かろ)きに泣きて
三歩あゆまず

こみ合へる電車の隅に
ちぢこまる
ゆふべゆふべの我のいとしさ

「さばかりの事に死ぬるや」
「さばかりの事に生くるや」
止せ止せ問答

はたらけど
はたらけど猶わが生活(くらし)楽にならざり
ぢつと手を見る

この次の休日(やすみ)に一日寝てみむと
思ひすごしぬ
三年(みとせ)このかた

たんたらたらたんたらたらと
雨滴(あまだれ)が
痛むあたまにひびくかなしさ

友がみなわれよりえらく見ゆる日よ
花を買ひ来て
妻としたしむ

何事も金金とわらひ
すこし経て
またも俄かに不平つのり来(く)

近眼(ちかめ)にて
おどけし歌をよみ出でし
茂雄の恋もかなしかりしか

ふるさとの訛なつかし
停車場の人ごみの中に
そを聴きにゆく

かにかくに渋民村は恋しかり
おもひでの山
おもひでの川

石をもて追はるるごとく
ふるさとを出でしかなしみ
消ゆる時なし

ふるさとの山に向ひて
言ふことなし
ふるさとの山はありがたきかな

新しきサラド(サラダ)の皿の
酢のかをり
こころに沁みてかなしき夕(ゆふべ)

公園の隅のベンチに
二度ばかり見かけし男
このごろ見えず



名作ぞろい

もっとあります。


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