大阪市解体の「大阪都構想」に反対する108名の学者の所見②からの続きです。

国土・都市計画論

「大阪都構想では、大阪市を廃止し、現区役所を出張所に変え、従来型まちづくりの延長であるカジノ誘致、高速道路などのインフラ整備を進めようとしている。このような大阪都構想では大阪の活性化は望めず、破綻への道を歩むことになるだろう。」中山 徹 (奈良女子大学・教授) 都市計画学

「いま大阪に必要なのは分権型のまちづくりであり、大阪都(府)に一元化された巨大プロジェクト中心主義の集権型都市計画ではない。大阪市24行政区に都市計画権限を委譲し、市民の生活空間を住民主体のまちづくりで充実させることこそが、大阪の「都市の品格=都市格」を取り戻す道である。」広原盛明 (京都府立大学・元学長) 都市計画

「いま大阪に求められているのは、庶民の暮らしを守り、伝統を守り、未来を展望できる都市計画ではないでしょうか。」宗川吉汪 (京都工芸繊維大学・名誉教授) 生命科学

大阪市という大きな活力を携えた共同体の解体で、それによって支えられていた大阪、関西、そして日本の活力と強靱性が毀損し、大きく国益が損なわれる。藤井 聡 (京都大学大学院・教授) 公共政策論、国土・都市計画

大阪の長期衰退の原因は,西日本における中心性の低下,国土の双眼構造の崩壊に他ならない.府と市をくっつけて都を名乗ればそれで解決できるようなレベルではない構造的な問題が既に発生して(いる)。首都圏と関西圏では新幹線をはじめとする広域交通インフラの差が歴然としており,これが西日本における中心性を失っている主因である」波床正敏 (大阪産業大学・教授) 交通計画、国土・都市計画

大阪市が分割されると、政令指定都市という保護枠組みの中で大阪市が維持してきたまちづくりの力が大きく損なわれることになります。福田健太郎 (近畿大学・准教授) 法律学

防災論

「防災・減災は選挙の票につながらないと素人政治家は判断し、今回の大阪都構想における大阪市の区割りや大阪府との役割分担において、防災・減災は全く考慮されていない。河田恵昭 (京都大学・名誉教授) 防災学

「「二重行政解消」を声高に叫ぶことは,市民のくらしをないがしろする維新の政治姿勢を自ら暴露するものに他ならない。危機管理の基本は「ダブルチェック」,東日本大震災の経験から導かれた減災の基本は「多重防御」であることを思い起こして欲しい。」 遠州尋美 (大阪経済大学・教授) 地域政策学

「5つの区への再編というのは市町村合併と同じで、地域自治を破壊し、災害時に大変な困難をもたらすことが、東日本大震災で明らかです。」 塩崎賢明 (立命館大学・教授) 都市計画学

教育・研究論

「大阪都になれば、政令指定都市として有していた独自財源の多くが府=都に吸い上げられる中で、政令指定都市が有していた優秀な教員確保のための採用や研修の権限は喪失し、同時に学校設置運営に関わる学校の条件整備はより劣化し貧弱になっていくことは明確である。」小野田正利 (大阪大学・教授) 教育学

「橋下氏自らが立ち上げた「大阪府「大阪府市新大学構想会議」の「提言」によれば…(中略)…大阪府大及び大阪市大の二つの大学は、教育と地域貢献の二つの面から、公立大学としての役割を立派に発揮してきたことは明らか…(中略)…橋下徹氏の知事当時からの主張である大阪府下にある「府・市公立大学の二重行政」なる批判は、その正反対の評価」(である)小林宏至 (大阪府立大学・名誉教授) 農業経済学

「大阪の教育はこの6年間の誤った教育市政によって,すでに大きく揺らいでいます。…(中略)…学問や教育は効率性だけで語られるものではありません。石上浩美 (大手前大学・准教授) 教育心理学・教師教育学

「大阪に府立大学と市立大学が存在することは決して無駄な重複が温存されているわけではない。…(中略)…府立公衆衛生研究所と市立環境科学研究所も府民、市民の健康と環境を守るためいっそう拡充を図るべきである。これらを浅薄な「効率性」のみを追求して統廃合するなら、府・市民のみならず国民的損失となるだろう。岩本智之 (京都大学・元助手) 気象学

「大阪市は環境分野の専門技術者を育ててきた。大阪市立環境科学研究所もその一つである。これ等の専門家集団は都市環境を守るために大きな役割を果たしている。大阪市の解体は、この専門家集団の解体につながる。いったん解体すると専門家集団の再育成には数十年の年月を要する。」 河野 仁 (兵庫県立大学・名誉教授) 大気環境学・気象学

「大阪市民の健康を守るため…(中略)…大阪市全域を管轄する環境局を存続・強化することが不可欠である。大阪市を特別区に分割することは上記の施策の継続と逆行(する)」 喜多善史 (大阪大学大学院・元助手) 大気環境学

「この大阪のまちで本気になって取り組まなければいけないことは、そのような「いのちのサイクル」を支える営みを豊かにすることであって、それを深く傷つけたり、ましてや破壊することではありません。」住友 剛 (京都精華大学・教授) 教育学

「「本当に強い大學」には市大と府大が共にランキングされている。この活力と研究の場が引き継がれている。…(中略)…大阪の為に共に発展させるべきである。」樋口泰一 (大阪市立大学・名誉教授) 化学

伝統・文化論

(大阪の伝統・文化の実例を列挙した上で)「これらは大阪市の優れた文化的伝統です。大阪市を解体・分割すると言うことは、これらの優れた伝統を断ち切る働きをすると危惧します。」鰺坂 真 (関西大学・名誉教授) 哲学

「大阪都構想」は、図書館、博物館、美術館だけでなく、文楽など伝統文化をふくめ、大阪ばかりか、上方の文化を破壊する危険性をはらんでいます。日本文化、伝統文化を守る立場から、「大阪都構想」に対して重大な疑義があると考えます。」 奥野卓司 (関西学院大学・教授・大学図書館長) メディア表象論

「いまの大阪に必要なことは、住民同士が互いに親しみや誇りを持てる地域を基盤に、長い時間をかけてこそ培われる伝統や文化を生かし、それを地域経済の礎とできるようなまちづくりであり、それは大阪市の廃止ではないでしょう。」菊本 舞 (岐阜経済大学・准教授) 地域経済論

「1925年、大阪市は面積を3倍に拡大する市域拡張を行いました。対象となった地域には、大量の農地が含まれていました。…(中略)…このとき形成された大阪市域は、現在のそれとほぼ一致しています。100年近くにわたり営々と築かれてきた大阪市の財産を解体することに、どのような意味があるのか、大阪市民の皆さんがよく吟味され、賢明な判断をされることを期待します。川瀬光義 (京都府立大学・教授) 財政学

大阪が目指すべきは,「大阪」という文化のもとで,大阪に暮らす人々にとって誇りが持てる「大阪」であり,それは「東京化」を進めることによってもたらされるものではない高橋 勉 (岐阜経済大学・教授) 経済学

「自治体は区域と住民そして自治体政府だけで成り立っているわけではない。その地で起きた歴史的事件やできごとの記憶が紡ぐ「わがまち」への想いがあって、その存在の重さと現実感がある。…(中略)…いまその「大阪市」を市民の投票で廃止することは、私には、人々の記憶や「大阪」の歴史的存在をも消し去ろうとしているように思えてならない。辻山幸宣 (中央大学・元教授) 行政学

「大阪市は戦前の関一市長の為政はじめ、先駆的な施策の伝統をもっている。また新憲法下では市長と市議会の選挙をくり返し、市民の願いを積みあげてきた歴史がある。それを崩そうとするねらいが、露骨に見えるのが今回の「構想」だ。中林 浩 (神戸松蔭女子学院大学・教授) 都市計画学

大阪市民が、歴史と文化、伝統ある大都市自治体を失う痛手ははかりしれなく大きい。」 広川禎秀 (大阪市立大学・名誉教授) 日本近現代史

『都構想』は大阪の歴史、伝統、文化等をも破壊する内容を含んでいます。」 和田 武 (立命館大学・元教授) 環境学