愛国心を裏切られた天才
愛国心を裏切られた天才 ノーベル賞科学者ハーバーの栄光と悲劇 (朝日文庫)
814円
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昨日の夜は、帰宅して15分だけのつもりが1時間以上読書をしてしまい、気がつけば12時を回っていたので、ブログがアップできず…
今日は仕事の合間をみてポスターの貼り替えに行こうと思ったのに雨が降る…
ということで、次の仕事まで昨日の読書の感想を書いておこうと思います。
本書の帯には『本書を読むことは、科学史を学ぶ者にとって限りない学びと教訓をもたらすことになる』と書かれていますが、科学史を学ぶ者でなくとも、数奇な運命に翻弄されたハーバーの人生を思う時、何かしらの教訓が得られると感じます。
私は科学のことは科学を学ぶ者同士でなければ真に理解し合え無いのではなかろうかと思うのです。これは科学に限らずどんな分野でも言えることかなぁと。
ハーバーの妻クララはハーバーと同じ科学者でした。
ハーバーは「空中窒素固定法」で(第一次世界大戦後)ノーベル賞を受賞しますが、第一次世界大戦の折にドイツの為に毒ガスを開発していきます。その過程で妻のクララは正に自死という決死の方法でこれに抗議するのですが聞き入れてもらえませんでした。
同じ科学者であったからこそ分かり合える部分、同じ科学者であったからこそ反発し合う部分、全体としてお互いがお互いの境界線も無くなり一体化した世界観の中で起こった悲劇でしょう。
科学の研究が戦争に利用されるのは例を挙げれば枚挙にいとまがありませんが、ハーバーの場合もそうでした。
ハーバーはユダヤ系ドイツ人なのですが、ハーバーの研究は最終的にはヒトラーに利用されてしまいます。
なんとも皮肉な結果です。
科学の進歩は人々に恩恵をもたらしますが、一旦戦争の為に利用されるととんでもない悲劇を生み出すことをこの本は示唆しています。
そしてハーバーと日本との関係などが書かれていますが、皮肉な関係は日本と世界の科学者の間にも生じてきます。
是非手に取って読んでみて欲しい一冊です。
ハーバーの墓には「ハーバー、妻のクララと共に眠る」と記されているそうです。
科学の進歩を戦争や人を殺したり傷つけたりすることに利用しない世界になりますように。