ありとなし | § IIko ∞ Talk §

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いかがお過ごしでしょうか。


明日から困ったなぁ

こんなに遠くまで来たのに何も収穫なし
我が家に帰っても安息の地はなし

雨に備える為に知らないあり達と一緒に
扉を頑丈にするのも嫌だしなぁ


ありはなるべく匂いを残さないように
考えられない頭で考える素振りをしていた


世に言う働きあり達は
仲間達と共に仲間達の為に
そして愛しの女王ありを生きる糧に
横の繋がりを大事に匂いを残す


ありはいつまでも結論の出ない事を
考えられないのに出そうとするので

働きあり達には気づかれなかった


いったい何回太陽が
近づいて離れていったろう


自分の位置さえもわからぬまま
太陽を見上げる

今日の太陽は格別大きい

あれ
太陽じゃない

それはそれは巨大な隕石のような塊が
ありの触覚をかすめて落ちてきた


物思いにふけていなければ
さようならありさん
になっていたかもしれない

危機一匹



あら
ありさんごめんなさいね

お詫びにコレをあげるわ



あり時間では計れないスピードで
巨大隕石が何かに変わった


変わった何かは
それはそれは芳醇な甘い匂い
ありの大好きな匂い
 


これはナシのシンよ
どうせ捨てるけど
まだ食べるところいっぱいあるでしょ
ありさんなら

ちなみに持って運ぶには
いくら力持ちだって言ったって
流石に無理よね
良かったら家まで運びましょうか


  ありがとう


つい言ってしまった
なんだかすごいいっぱい話す人間に
ありがありがとう言ってしまった


人間は気づかない様子で
早く家を教えてとせがむ


どうしよう

家教えたら潰されるかもしれない
水入れられるかもしれない
仲間が踏みつけられるかもしれない


少女は考えた

このありがシンを処理してくれたら
ゴミ処理のコストカットになると

なかなかあれにはコストがかかるのよね
早く教えてくれないかしら家
仲間達いっぱいいるでしょきっと
みんなでナシのシンを喜んで処理して
ウィンウィンの関係になるわ

だって私のナシは世界一
誰もいらないなんて言うはずない


少女はギラギラした目でありを見つめる

ありは太陽に追われているような
身体が熱くなるのを感じた

やっぱり
ひとかけらだけで
いいです

こんな小さなありには
もったいないです


か細い声で呟くと
あり30匹分位にカットして
ズルズルと引きずりながら草むらに
消えていってしまった


ナッシ売りの少女は驚愕した

信じられない
このナシを
たったの3センチ分しかいらないなんて

なんなんあのあり


少女はコナ袋に手を入れた
袋はもう何日も前から空っぽだった

落ち着いて焦らない
慌てずに
叫ばない

保険入っておけばよかった






ありは念願の甘い塊を手に入れて
涙が出るほどうれしかった

さっきなんだか不意に
仲間の心配をしたけど
なんでだろう


家に帰ればわかるかな



これからもずっと

ありは一匹で歩いていく






ナシのシンは
くたびれた茶色になって

そろそろ諦めて土に還る準備を始めた




どこからともなくやってきた

いつかの掃除夫が

大事そうにチリトリに

そっと収めた







おしまい