あの時あの暑い夏の日
後輩たちが無心でボールを打ち合っている最中
私達はジャグのキンキンに冷えた麦茶をしばいて涼を取っていた
あの日あの時あの暑い夏の日
私はいつも以上に暑かった
なんだかイライラしていたんだ
生理前だったかもしれない
暑い暑いあついあつい
まじであついしぬ暑い
座り込みながらずっと騒いでいた
みんな我慢できるはずがない
真っ赤な顔で辛そうだし
後輩達は無心でボールを打ち合い続けている
部長の私がこんな調子でいいのだろうか
私達の学年はマネージャー入れてたったの5人
ちょうどダブルスができる人数しかいない
ところが1年と3年はそれぞれ20人近くいた
私達の代が入部する時の先輩達は50人はいた
体育館での新入生勧誘コンペの会では
テニス部は異常なほど熱気があった
キャピキャピしているグループもいれば
本粋の真っ黒筋肉引き締まってるアスリート風も揃っていた
なんせ紹介の仕方が激しかった
各々フレッシュ女子達がステージ前にラケットとボール片手に並んで
新人ホヤホヤ高一の私達に向かって
男子女子構わずボールをビシバシ打ち込んでくる
ほらっ
とってごらん
ボールをキャッチできたら入部だからねーと
ほぼ顔がこわばっている新入生に向けて
無茶振り勧誘スタイルカンナムスタイル
誰一人ボールをキャッチしようとしない
キラキラ可愛いテニス部のイメージと程遠い
なかなかスパルタンな未来を想像させる勧誘劇が繰り広げられた
それも理由だと思うが
10人位からスタートして
残った根性ある変わり者5人で
3年間青春を謳歌した
5人しかいないし一人マネージャーだし
だれか部長にならなくてはならない
私はいやだったし
彼女の方がテニス経験者だったのに
顧問は私達のクラスの担任も兼務していて
授業中彼女が寝ていても
彼女は朝早くからバイトして頑張って学校来てるからとゆう理由で怒られなかった
私だってバイトしてるし頑張ってるのに
彼女はそんな訳で忙しいから
あなた部長やりなさいと
半ば強引にやらされた訳で
部長とゆう立場で
ダラダラと暑いことを理由にサボるのは良くないことはわかっている
ただ彼女は副部長とゆう立場で
どこか涼しい顔で他の部員達と楽しそうにキャピキャピ笑ってる
イライラする
しゃがみ込んで下向いてうずくまって
感情を抑えるのに精一杯だった
その時
頭の上からなんだか冷たい物が
スーッと顔を伝って流れていった
何かと思って上を見上げると
笑う彼女が
キンキンに冷えた麦茶を
私の頭に躊躇いもなくかけていた
は?何してるの
私は信じられなかった
ただ静かに彼女の顔を見上げた
暑いんでしょ
冷やしてあげてるの
なにこいつ頭おかしい
冗談にならない
私がイライラしてるのわかってて
喧嘩売ってるとしか思えない
笑えない
信じられない
そんな一言だけ呟いて
タオルで頭を拭いて
部長と副部長のその光景は
他の部員達にも伝わって
あの日あの時あの暑い夏の日一瞬
テニスコートに冷たい空気が流れた
そのまま振り向かず帰ったと思う
彼女は焦って
笑って欲しかったからーとかほざいてたけど
聞きたくなかった
許せなかった
頑張ってるのは彼女だけじゃない
私だって同じ位
それ以上に
いろいろやってきたのに
麦茶を
ジャグの麦茶を
頭からかけられるなんて
しかも飲みかけの
プンプンだぜ
ってゆう
記録