担当OFCの巡回の時そんな話をして、お互い違った意味で笑った。



私はアラアラやる気出させちゃったなぁって苦笑いだったが、OFCはこれでオーナーを引き止めれるって感じの喜びに満ちた笑いだったようだ。






火が点いたMGからはOFCでは突かない細かな分類や単品での話や経費の話、現状のダメ出し…が次から次から出てくるようになった。



少しのお世辞とともに…






俺が過去に持っていたやる気や行動力を呼び覚まし、刺激したいのだろう。



最初に会った時から、せめて5月位から、そうであったら私の気持ちも違っただろうに。








それからも度々来るようになり、私は真摯に彼の話を聞いた。



話を聞いたからと言って、簡単に気持ちは変わらないがお互いが腹を割った話は気持ち良くもあった。



それに彼等も開き直り、露骨に引き止める言葉が出てくるようになった。
人間(嘘でもお世辞でも)、必要とされて気分が悪くなることはないから…ね。






そんな商談を数回続けた後、MGから電話が鳴った。

「RMGがどうしてもオーナーと会ってお話をしたいと」
人の誤解とはきっとじっくり話さないから生まれるのだろう。



相手を目や表情や、時には書面で判断し、頭にこんな人だと先入観がインプットされる。
少し話しただけではその先入観で相手の言葉を判断しがちになる。


そして、勝手に人物像を作り上げてしまう。


何度も何度も話せば、印象は違うものになるだろうし、言葉も違った意味に聞こえてくるだろうけど。

ビジネスの場ではお互いを理解する時間すらない場合もある。







私もMGに対して、会社の方に顔を向けた真面目な人、ビジネスと割り切った冷徹な人との印象を持っていたし、MGもやる気のない、辞めたいオーナーとの印象を持っていたのだろう。


数時間、2人で話すうちにお互いの印象が変わり始め、どこか噛み合わなかった引っ掛かっていたものが失くなって行っている気がした。




暫くの沈黙があった後、



MGは
「オーナーのこと、引き継ぎの資料を見ただけで判断して誤解していました。これまでに何回か話していればオーナーのことや店のこと理解できたはずです。申し訳ありませんでした」



あの会社しか見ていない(と思っていた)MGからまさか謝罪の言葉が出るとは思わず、ビックリした。



続けて、
「私もOFCとしての経験もありますし、それを生かさせていただけたらと思います。それにオーナーの改装や店に対する熱い気持ちも解りました」



私は口を挟まず彼の話を聞く。



「これから何回でも足を運びます。オーナーがやる気がでるよう売上が上がるよう協力させてください。もう一度チャンスを下さい」




そこまで言われて嫌とは言えない。
私も彼の上っ面だけみて誤解していた訳だし。


私は
「今は9:1(で辞める気持ち)だけど、MGのことも解ってきたから話は聞きましょう」
と答え、会談を終えた。
えっ?
って顔をした理由は前MGと前OFCの引き継ぎと報告書に原因があったらしい。



なんでも私が改装を嫌い、ごねた。
だから改装には触れていけないと伝わっていたらしい。



期末にMGと担当OFCが入れ代わったりと、当店のことについては口頭で引き継ぎがほとんどできなく、書面で把握するしかなかった。
書面だけを見る限りでは当店の実情や事情を理解しきれなかったそう。

それにその報告書には『とりあえず、もう3年やってみる』と言うような私の発言の記録があったらしく、MGはやる気に疑問を感じていたようだった。







共存共栄や共同経営を理念に入れながら、そこに携わるサラリーマンの引き継ぎとはこんなものか…






辞める話をしにきたのに、店やチェーンに対する想いをぶつけたから(しまったから)、改装に対する想いに関しては報告書を見ただけでの判断で誤解があり私に対する見かたが変わって、えっ?って顔になったみたい。







MGの顔付きが変わったのは解ったが、私は
『引き継ぎが上手く行った行かなかったじゃなく、MGなら足を運んで店の状況を把握するのが仕事でしょ?うちに何回来た?』
と、ちょっと前にも言ったことをもう一度ツッこんでみた。