年賀状じまいに思う現実と不安~金田一コラム | KCR総研代表 金田一洋次郎の証券アナリスト日記

年賀状じまいに思う現実と不安~金田一コラム

 年賀状じまいをする人が増えている。今年は、一層増えたかなという感じ。ビジネスの年賀状はともかく、親戚、友人、近親者などが増えているようだ。

 全国的にこの傾向は続いているのだろう。インターネットで、メールやSNSが普及し、減少するのは当たり前のような気もするが、年賀状のピークは、2003年のようで、44億5,936万枚が発行されたそうだ。

 今年の発行枚数は、14億4000万枚とのことで、昨年の16億7691万枚から更に激減している。実に14.1%の減少率で、前年が、12.1%の減少率であったことから加速していることが分かる。

 しかも、まずいことに今年の秋ごろより、ハガキが現在の63円から85円になることを日本郵便Gが発表している。実に35%にのぼる値上げであり、これにより一層、年賀状離れが加速することは間違いない。

 ハガキの値上げは30年ぶりというが、これまで悪税である消費税の値上げにより都度都度、値上げされている。近年では、2017年の値上げが記憶に新しい。52円から62円に引き上げたもので19%の値上げだった。

 私は、郵政民営化は失敗だったと本ブログで述べているが、はっきりいって、ユニバーサルサービスをあっさりと捨て、国民生活を益々不便にする日本郵政は、迷走以外の何物でもないと思っている。

参照:「郵政民営化は失敗だったのではないか!?」
https://ameblo.jp/kcr-inc/entry-12670018358.html

 仮にこのまま、平均減少率を15%として、年賀状枚数を計算すると、現在の14億枚が、2030年には5億4千万枚に、そして2040年には1億枚となってしまう。

 2050年には2100万枚、2069年69万枚、2100年には6千枚と、ほぼ消滅していることになる。

 まあ、年賀状は、あわただしい年末に書くのも大変だし、コストもかかる。いずれなくなるのは仕方ないとしても、日本郵政Gのプレスリリースによれば、「年賀状による年始のごあいさつは、伝統文化として日本に定着し、多くの方に年賀はがきをご利用いただいています。お年玉くじ付きの年賀はがきが 1950 年用として最初に発行されて以降、70 年以上の歴史があり、毎年年始には日本全国にお届けしています。こうした伝統文化の振興と支援を目指すため、日本郵便は「Action! 伝統文化」の取り組みに協力してまいります」とある。

 「Action! 伝統文化」に関しては、説明を省くが、ようは、日本の伝統文化を支援して守りましょうということである。その伝統文化を、自らの手で、加速して減少させようというのだから、日本郵政Gにはあきれてものが言えない。

 とはいえ、もはやこの傾向を覆すことはできまい。しかし、年賀状じまいにも一点、気がかりなことがある。長年、会わずとも、親戚、友人、近親者など、これまで年賀状のやり取りだけの方は、住所、電話番号ぐらいしか情報がないことだ。

 メール、SNSなどでつながっていれば、まだしも、住所などは数年は、そう変わるまいが、転居などで行方不明になることも、当然想定される。年賀状は、伝統というより、親しい人が無事でいることの証でもある。年賀状じまいとは別だが、突然、年賀状が来なくなる人もいる。突然、年賀状が来なければ、心配するのは人の常。人それぞれで、知られたくない事情もあるかもしれないが、やはり残念な気持ちになる。

 年賀状は、その人が元気でしっかり生きているという便りの意味が一番、大きい。欧米に「Out of sight, Out of mind」という諺があるが、まさに然りで、日本で言えば、去る者は日日に疎しが当てはまるだろうか。人づきあいは、疲れるものだが、人がいるからこそ、生きてもいける。自分もいつかは、年賀状じまいをする時が来るだろうが、ちゃんとしたしまい方ができるかどうか、この国の年賀状の行く末を鑑みても、一抹の不安な気持ちになる。

金田一拝