郵政民営化は失敗だったのではないか!? | KCR総研代表 金田一洋次郎の証券アナリスト日記

郵政民営化は失敗だったのではないか!?

 日本郵政への批判の声が大きくなってきている。買収したオーストラリアの赤字事業を売却し、実質的に6000億円がパーになったからだ。

 海外M&Aの失敗に先立ち、それ以前にも、かんぽ生命の不祥事等、かなり印象が悪化していただけに、ここへきてその迷走ぶりが目立つ。楽天グループへの業務提携も、今後どのような形で収益が実現化していくのか見えにくいところがある。

 そもそもコロナ禍において、企業業績は明暗を分けているが、日本郵政グループはどこに向かっているのかが分かりにくい。傘下に巨大なゆうちょ銀行とかんぽ生命を抱え、黒字の金融部門で赤字体質の日本郵政部門を補う企業構造を持ち、何といっても国が過半数以上の大株主。今後も売り出しされるであろうから、市場需給にとっても悪影響を及ぼすことは必至なのにユニバーサルサービスの足枷をはめられ法律に縛られる。

 上場した以上は、投資家の期待に応えなくてはならない。そのため成長戦略を描く必要があるが、その答えが、新規事業や国際戦略としてのM&Aという結論だったのだろう。トールの買収失敗による2017年の赤字計上からここ3年間は、企業業績は横ばい、そして、今回の損失でまた低迷する。

 国内は少子化で、郵便局が多すぎるのではないかという意見もあるという。しかし、ちょっと待てと言いたい。郵便局を使う方からは、サービスがどんどん悪化しているからだ。郵便局は最寄りが強みである。最寄りにあるからコンビニ以上に便利であって、地域に密着している。収益アップのためにこの強みをなくす意見もあるという。郵便局が減れば地域としてのサービスはどんどん下がる。ハガキなどのサービスを値上げしたらという意見もある。消費税増税もあって、ハガキ代もそれなりに値上げしてきている。

 細かい値上げだから、切手を貼るのも大変。土日の配達をやめることが決まり、ゆうちょ銀行は、サービスが時短になり、しかも、拡大されたとはいえ預入可能な通常貯金の上限額が一律 1300 万円であり、挙句の果ては、国際送金サービスまで辞めてしまった。

 はっきり言って、小泉改革の掲げた郵政民営化は失敗だったと思う。今のままでは、収益アップを旗印に、地域のサービスは一層悪化し、必要なサービスも維持することは難しく、楽天などの民間企業にいいところだけ持っていかれることになるのではないだろうか。何でも民営化すればいいという考え方には納得できない。

 郵政などのライフラインとなるところは、競争が想定以上の悪影響を及ぼすことがある。日本郵政の在り方については、もう一度、検証も兼ねて国民的な議論が必要な時に来ていると思う。

金田一