今日はサルコイドーシス
サルコイドーシス(sarcoidosis)というのは
ラテン語で「肉のようなものができる病気」という意味
目に見える大きさのものから顕微鏡でやっと見えるようなものまで
大小様々な類上皮細胞肉芽腫(るいじょうひさいぼうにくげしゅ)という
「肉のかたまりのような」組織ができる病気
癌とは全くちがって悪性疾患ではないのでご安心を
感染症でもないので、他人に感染する心配はない
■病気の定義
サルコイドーシスは原因不明の多臓器疾患
全身の色々な臓器に結核を始めとする感染症によく似た病巣を作る
一般にそのような病巣を類上皮細胞肉芽腫(にくげしゅ)と呼んでいる
でも、原因はよくわかっていない
よく認められる症状は
目のかすみ、視力低下、咳、呼吸苦、色々な皮膚の発疹、不整脈など
肉芽腫が出来た臓器の障害として出現する
一定の病変の拡大が認められる前は多くは無症状で
患者さんの約40%は気付かないので住民検診や職場検診は重要なのだ
患者の発生状況は世界的に北に多く南に少ないといわれ、日本でもその傾向がある
1991年の実態調査では新発見数(罹患率)は北海道は人口10万に対し1.6、九州では0.9
喘息の人口10万人あたり約3000人に比べるとずいぶん少ない
日本全体のサルコイドーシス患者数(有病率)は不明だけど
推定では人口10万に対し7.5~9.3
男女比はほぼ同じかやや女性に多い
1991年の調査では男性900人に対し女性は1,500人
発生年令は、男性では20才代にピーク
女性では20才代と50~60才代に二峰性のピークだけど高年齢層のピークが著明
両側肺門リンパ節、肺、皮膚の罹患頻度が高いけど
肝、脾、リンパ節、唾液腺、心臓、神経系、筋肉、骨やその他の臓器が罹患することもある
■疫学
発生率には地域差があり,北に多く南に少ない
日本国の有病率は10万対1.7~0.3 で平均0.7
■病因
原因は不明
結核を始めとする感染性肉芽腫性疾患の組織像が大変似ていることから
以前より何らかの感染症が関与しているのではないかと考えられてきた
現在日本では抗酸菌,α溶連菌と嫌気性菌のPropionibacterium acnesとp. granulosumの遺伝子が
肺やリンパ節などがら証明され、これらの菌が原因菌の一部として研究の対象となっている
欧米ではLー型結核菌、ウイルス、自己免疫などとの関係の報告もある
一般的にはサルコイドーシスは遺伝しないと考えられている
同じ家族で発症した例がごく少数報告されているけど
ほとんどの人は血縁内に同じ病気の方がいない
でも、地域差、人種差、家族内発生、難昜度などの差が報告されている
これは他の病気と同様に罹りにくい人と、罹り易い人、また、治りにくい人と、治り易い人と云うような体質(感受性)の遺伝子があるためと考えられている
現在その点についてもHLA遺伝子の研究が進んでいるが、明確に解析されてはいない
■症状
症状は罹患臓器によって異なる
肺、心臓、肝臓、腎臓、唾液腺、涙腺、皮膚、筋肉、骨、リンパ腺、眼、神経、など全身のあらゆる臓器に起こりうる
しかし、全ての患者さんが全身の臓器に病変を持っているわけではない
病気のおこる頻度の高い臓器は、肺および胸部のリンパ腺(80%)、眼(50%)、皮膚(20%)など
肺病変の自覚症状は咳、呼吸苦などがある
肺炎や喘息などとちがって、咳や息切れといった呼吸器症状がでることはむしろ少ない
かなり肺の病気が進んだ場合には呼吸困難を感じるようになる
リンパ腺では首や脇の下、脚の付け根のリンパ腺が腫れることがある
ほとんどの場合痛みがない
眼では多く場合が「ブドウ膜炎」
霧視(霧がかかったようにぼんやり見える)
羞明(まぶしい)
飛蚊症(ちらちら視野に小さいものが移動する)
視力低下
などが出現
皮膚では各種の皮疹が出るが
結節型(円形~楕円形の隆起した紅色~暗紅色の鱗屑を伴う硬い皮疹)
局面型(円形~楕円形の辺縁の隆起性で内面は萎縮性の柔らかいの皮疹)
などが多いらしい
赤い隆起性病変であることが多く、痒みや痛みを感じないことの方が多い
とくに顔にできたときは美容上問題になる
心臓での自覚症状は不整脈が最も多い
軽症では軽い心電図異常程度だが、
実際に脈がとんだり急に遅くなったり、不整脈を自覚するようになったら注意が必要
重症になると心臓が正常に働かなかったり、突然心臓マヒをおこすことがある
実際、サルコイドーシスによる死亡の半数以上は心臓に関係するもの
患者さんの側でもお医者さんの側でも、心臓にかかわる症状には細心の注意が必要
肝臓では病変が広範囲であっても、
それによって肝臓の機能が低下したり、黄疸が出たりすることはあまりない
腎臓ではサルコイドーシスの活動性がかなり高い患者さんでは、
腎機能が低下していることが少なからず見られる
神経の場合、多くは神経マヒの症状がでる
そのなかでも多いのは顔面神経マヒと聴覚神経マヒ
ある日突然、顔の一部が動かなくなったり、耳が聴こえなくなっていることに気がつく
脳下垂体に病変ができると、尿崩症といって通常の5~10倍もの尿が連日続くことがある
筋肉では多くの場合、腫瘤状(こぶ)になる
実際に感覚異常や運動障害をおこすことは多くはない
唾液腺、涙腺では、唾液や涙の分泌がそれぞれ減る
口の渇き、眼の乾きを自覚するようになる
虫歯ができやすくなったり、眼に異物感をいつも感じるようになることもある
骨では骨髄中に肉芽腫が形成されるために、骨が腫れたり破壊され、痛みを伴う
しかし、骨病変の頻度は日本では1%前後と低い
カルシウム異常
サルコイドーシスでは、体内のカルシウムのバランスが崩れることがある
このため、血液中のカルシウム濃度の上昇や、尿中カルシウム排泄量の増加がおこり、
骨が弱くなったり(骨粗鬆症)、腎結石ができる原因となる
腎臓を痛めることもある
その他には咳,全身倦怠が多く
発熱,結節紅斑、関節痛などもある
しかし約40%の患者さんはほぼ無症状のまま健康診断で発見されている
■診断
サルコイドーシスの診断基準による
眼サルコイドーシス及び心サルコイドーシスについては各々診断の手引きがある
血液検査ではとくに「アンジオテンシン変換酵素(ACE)」がこの病気の活動性の指標として重要
胸部のX線やCTで肺の細かい病変を調べる
気管支鏡検査では、肺の中をうすい食塩水で洗って、その成分を調べる
組織検査
サルコイドーシスは、類上皮細胞肉芽腫という顕微鏡で確認される組織所見を確認することで診断される
そのためには、気管支鏡検査で肺の一部をとって調べる(経気管支肺生検という)
もし、皮膚病変が認められるのならその一部をとって調べる
触れてみて腫れているリンパ腺があればその組織検査で診断を行うこともある
また、これらの検査で診断がつかないときや、腫瘍性病変や他の間質性肺疾患も疑わしいときなどには、
縦隔鏡検査や胸腔鏡下肺生検などの外科的処置を必要とするときがある
罹患部位から採取した組織標本に非乾酪性類上皮細胞肉芽腫が存在すれば確実となる
その他:尿検査、腎機能検査、肺機能検査、心電図なども欠かせない検査
心電図で異常が見つかれば、循環器科でさらに詳しく調べてもらうことになる
また、全身のサルコイドーシス病変部位を調べるために、ガリウムシンチという放射性同位元素をつかった検査をすることがある
診断のために7日くらいの検査入院が必要となる
既知の原因による肉芽腫と局在性サルコイド反応は除外する
免疫学的には、しばしば、皮膚の遅延型過敏反応の抑制と
病変部位におけるCD4陽性T細胞/ CD8陽性T細胞比の増加がみられる
B細胞活性化を示唆する所見もときに認められ
その1つとして血中免疫複合体を認めることもある
その他の検査所見として
血清アンギオテンシン変換酵素(S-ACE)活性の上昇
Gaの取込みの増加
Ca代謝の異常
蛍光血管造影所見の異常
がある
Kveim-Silzbachテストは良質な検査液が使用できれば診断の一助となりうる
■経過
肺の付け根にあるリンパ腺(肺門リンパ節)が腫れているのが
胸部レントゲン写真で発見された人で、肺そのものには異常がなく
また、肺以外の臓器にも異常がない人は、
100人中およそ80人くらいの割合で、診断されてからおよそ5年以内に自然に治る
それ以外の人は慢性化し、これから「上手なおつき合い」を考えねばならない
慢性化しても症状のでない人が大部分でが
数%の人で肺や心臓の病気が進み、ときには命にかかわる事態にいたることがある
欧米では肺移植により元気になった人がいる
■治療
サルコイドーシスの診断は専門医であれば比較的容易にできる
でも原因が不明な現在、真の治療は出来ない
ただし、約9割の患者さんが治癒または通常の生活に支障を来すことなく毎日を送っている
患者さんの約70%は症状の有無に係わらず経過観察されている
治療は症状の出現が毎日の快適な生活を障害するか、放置すると生命の危険が推測される場合に行われる
一般には許されるかぎり3~6カ月は細心の注意を払い経過観察し治療適応を決める
この決定は熟練を要するので専門医に相談すること
治療の第一選択薬はステロイドホルモン
副腎皮質ホルモン剤は症状を改善させ,肉芽腫形成を抑制し
S-ACE値とGaの取込みを正常化する
治療法は臓器の種類と重症度によって投与方法、量、期間、中止の目安などが異なる
前眼部病変には,ステロイドの点眼・結膜下注射のほか,散瞳剤を併用する
ぶどう膜炎が激しく網膜・硝子体・視神経に著明な病変があり
局所療法に抵抗して改善のみられない場合は,ステロイドの全身投与を併用する
心病変、中枢神経病変、進行性難治症例及び自覚症状の強い症例にはステロイド投与が必要
心病変(特に完全房室ブロック)に対してはステロイド治療と共にペースメーカー装着が必要な症例もある
再発症例、難治化症例などでは免疫抑制剤なども使用される
でも、原因が不明のため、肉芽腫抑制効果が認められるステロイドも
その使用にあたっては賛否両論があることから,最小限にとどめるのが原則
肺門及び縦隔リンパ節病変のみの症例はステロイド治療の対象とはならない
◆ステロイド剤に替わる治療薬剤
ここ数年、注目を集めている薬にメソトレキセートという薬剤がある
免疫抑制剤の仲間で、ごく少量使う
すでに慢性関節リウマチでは治療効果が認められ、保険適用にもなっている
1週間に1~2回のむだけでよく、ステロイドの長期服用で出てくるような副作用が全くない
効果はステロイドと同等あるいはそれ以上が期待されている
副作用として、白血球が減ったり、生殖細胞に影響がでたりするため、
男女を問わずとくに若い人には使いにくい面があるというのが難点
■予後
2~4年で無治療経過観察例の72%は治癒軽快する
残りの23%は進行せずにそのまま継続するが生活には支障ない
残りの5%は長期経過後新しい臓器病変の出現か、現病変の増悪で治療を要するようになる
初診時より治療を必要とした症例は65.5%が治療によって軽快または治癒する
残り34.5%の症例は治療にも係わらず遷延化または増悪
全サルコイドーシス患者さんの約10%の症例が治療中止が困難か、進行性の患者さん
でも、死亡する症例は大変稀であり、多くの症例は問題のない症例である
結節性紅斑を伴う急性発症例や無症状の両側肺門リンパ節腫脹の例は
通常は自然経過で消退することが多いが
潜行性発病例,特に多臓器に肺外病変のある例は慢性に進行することが多い
肺やその他の臓器の線維化に進展することもある
稀な症例として、心臓病変による突然死、肺病変が進行し肺線維症で死亡する症例がある
◆特定疾患(難病)認定について
サルコイドーシスは特定疾患いわゆる難病に指定されている
診断がついたら特定疾患申請用の診断書をお医者さんが用意してくれるので
もよりの保健機関(保健所もしくは役所の保健課)に申請しよう
認定されれば、重症度に応じて医療費の自己負担分の全部または一部が国の負担になる
参考サイト
難病情報センター:特定疾患情報 サルコイドーシス
http://www.nanbyou.or.jp/sikkan/043.htm
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
http://jssog.com/
サルコイドーシス友の会
http://www.ne.jp/asahi/h/sato/
サルコイドーシスという病気
多くは胸部X線写真でリンパ節が腫れているのが見つかって診断されるという
でも、
罹患するのは10万人に2~3人とごくわずか
重症化したり死に至るのはさらにその10%以下
だから、わずかな症例の中で
患者さんもお医者さんも正しい知識をもって
冷静に適切に対応することが必要なのだ
実際、多くの患者さんが普通に生活できるんだし
しかも、まだ原因不明なんだから
わずかな症例をもらさずすくって
原因究明のために情報交換などがスムーズに行われることが大事
難病認定されて治療費が出るだけで済むことではないのだ
というわけで
今日は初めて難病について調べてみた
めったにかからない病気こそ
かえってその知識には希少価値があり、重要度を増す
お金にならないから専門医がいなくなるような制度では
危なくって住んでいられなくなる
保険みたいな発想で生活を保障していくには
戦略的に考えることが必要
平和にも戦略が欠かせないのだ
と、改めて思った
では、今日はこの辺で
おやすみなさい☆