前回は位相差顕微鏡で口腔内細菌の素顔をご覧頂きました。しかしこれだけでは歯周病を引き起こす“犯人グループ”の有無は確定できません。そこで細菌のDNAを数時間で数十万倍まで増幅させ菌種を特定することができるPCR法を利用した細菌検査を行います。
指名手配されている“犯人グループ”は通称Red Complexと呼ばれている3種類の菌です。
Prophyromonas gingivalis略してP.g.菌
Tannerella forsythensis 略してT.f.菌
Treponema denticola 略してT.d.菌
レッドコンプレックスは歯周組織(歯肉、歯根膜、骨)を短期間にかつ不可逆的に破壊します。
これら以外にも歯周組織に害を為す菌の存在は数種類知られているのですが、先ずはこの3種類が潜んでいるか捜索してみましょう!
この患者さんの初診時での歯周ポケットは左下奥歯で4㎜を記録しました。この場所に紙こよりを差し込んで検査センターへ送付します。2週間後にPCR法の判定結果が送り返されてきます。
さあ、結果は・・・居ました、居ました。P.g.菌とT.f.菌です。2種類とも現時点での菌量は少ないですが、細菌は簡単に増殖します。つまり歯磨きが不足すればあっと言う間に歯周病リスクが増大してしまうという事ですので、菌量よりもレッドコンプレックスの全菌に対する比率が肝心です。判定結果は1.9%と良好~注意(=危険)の中間でしたが、潜伏していることは事実ですので決して安心はできません。
九段ブルー歯科(市ヶ谷)での当患者さんへの対応は、
①ブラッシング強化と歯間ブラシなど補助用具のご指導
②短期集中的な歯周ポケット内のクリーニングGBT*実施
③まめな(1~3ヶ月に一度くらいの)歯周病メンテナンス
*GBTとはガイド・バイオフィルム・セラピーの略
歯周病の根本原因であるネバネバした細菌塊を
取り除くことを指します。(詳細は後日UPさせて
頂きます)
ということになります。このように指名手配犯が居るか居ないかを明確にし、その上で治療方法や歯周病メンテナンスの頻度を決定することは大切な指針と考えます。
もし犯人グループがもっと多数だったら上記の対応に加え抗菌剤という機動隊を投入して排除します。ただし、現在の医学では完全滅菌は不可能ですので定期的なメンテナンスは欠かせません。
もし、犯人(Pg菌)が居ない事が解れば定期健診の間隔は6ヶ月~1年でも大丈夫です。
次回はRed Complexに関してと、歯周病が全身にどのような悪影響を及ぼすのかについて解説させて頂きます。
【2022年5月追記】
2022年より上記のPCR検査は、2週間という長い時間と患者さんのご負担額がかさむことから中止しております。代わりに、最凶最悪のPg菌検出に特化したPCR検査により実施しています。40分間で結果が得られるのは朗報です。(初回無料)


