歯周病で多数の歯を失った高齢者は体のバランスを崩して転倒しやすくなり、それが骨折につながって長期入院を強いられます。また噛む能力が落ちて食事が偏り栄養が乱れ筋力が低下したり、咬合の刺激が脳に伝達しづらくなり認知機能の低下を招く可能性があります。

 

と、ここまでは感覚的にも理解できますが、現実はこの範囲に留まらず、この20年間で歯周病と全身疾患との関連研究が想像を超えた領域まで広がっています。以下ほんの一例ですが列記してみました。

 

1)心筋梗塞を起こした心臓冠動脈の血管壁から口腔内細菌が検出されている。

 

2)心内膜炎から口腔内細菌検出

 

3)死産の胎盤から口腔内細菌検出

 

4)低体重児出産の2例に1例で羊水から口腔内細菌検出

  歯周病がある人は、ない人に比べ低体重児出産・早産が7倍多い。

 

5)レミエール症候群(殺人咽頭炎)の原因菌が口腔内細菌と一致

 

6)バージャー病(末梢動脈炎)患者の血管から口腔内細菌検出

 

7)歯周病による歯ぐきの慢性炎症がインシュリン抵抗性を低下させ、常に高血糖状態を招いている。逆に歯ぐきに炎症を起こしている糖尿病患者の歯周病治療でデータ改善を認める。

 

8)アルツハイマー型認知症で亡くなった患者の脳から歯周病菌の原因菌であるP.g.菌が産生するジンジパイン(蛋白分解酵素)が検出されている。

 

9)日本での肺炎の死亡者は年間123,000人(2015年)で死亡原因の第3位。このうち65歳以上の高齢者は95%以上を占め、日本老年医学会によると肺炎の中の70%が誤嚥性肺炎であるとされることから年間86,000人が誤嚥による死亡者と推定できる。原因菌の多くは口腔内細菌由来の嫌気性菌(酸素濃度が少ない場所を好んで繁殖する菌)。

 

10)2種類の口腔内細菌が大腸がん(Stage 0)の患部から発見された。胃液で死滅しなかった口腔内細菌が大腸へ届き細菌叢を乱し、免疫系に変化をもたらしているのではないかとの説あり。

 

11)関節内のアミノ酸(アルギニン内に移動したPg菌が別のアミノ酸(シトルリン)に変化させてしまう。身体の免疫システムがこの変化してしまったアミノ酸を異物として認識し慢性関節リウマチを発症させる。

 

12)新型コロナウィルス感染症の重症化率(人工呼吸器が必要とな状態)が歯周病がある人は、ない人の4.5倍となっている。これは、慢性炎症である歯周病の存在でサイトカインが常に過剰に血中に存在していることに起因すると考えられている。

 

 

 

上記の病因の全てが口腔内細菌由来とはいえませんが、重要なファクターであることが明らかになりつつあります。

 
 

『自身のお口の中にはそんなにたくさんのばい菌は住んでない』とお思いの方がほとんどです。けれど前々回のブログに登場した位相差顕微鏡検査を受けられると、そのお考えが衝撃とともに一瞬にして消え去ります。心筋梗塞をはじめとする心疾患、糖尿病合併症、誤嚥性肺炎等々、これら死に直結する病の原因菌があなたのお口に今日も繁殖し続けているとしたら…

 

1997年にアメリカ歯周病学会が提唱したキャンペーンがFloss or Die ! (フロソアダイ!) 死にたくなければデンタルフロスを!でしたが、この直前にニューヨークで冠状動脈内における歯周病菌の存在が発見されていました。その後次から次へと新たな口腔内細菌の“悪事”が報告されているということです。

 

厚労省歯科疾患実態調査では95%以上の方が毎日歯ブラシを使って歯磨きをしているということなので、これからは歯ブラシだけでは効果が得られない歯と歯の隙間を如何にきれいにするかが焦点となってきます。私の個人的意見ですが、アメリカ人は子供の頃から毎日デンタルフロスを使っていますので動かし方が上手です。比べて、日本人の大人が急に始めてもフロッシングは少々難しいと感じています。日本には爪楊枝の文化がありますのでどちらかと言うと歯間ブラシの方が向いているように思えます。