歯周病治療の最も大切な決まり事がプラークコントロールです。プラーク、つまり細菌数をコントロールできなければ、それ以降のインプラントやブリッジ、あるいは義歯治療にしても長期にわたる成功へとは導けません。今回は基本的なところから解説させて頂きます。
1. プラーク(バイオフィルム)とは
歯の周りにくっ付いているネバネバした白いカスのようなものをプラーク(バイオフィルム)と言います。歯の垢と書いて歯垢(しこう)とも呼びます。成分のうち80%は水分、残り20%のうち殆どが細菌と細菌が作り出した代謝産物が占めます。つまり(バイオフィルム)は食べカスではなく細菌そのものなのです。
プラーク(バイオフィルム)1㎎中に細菌は1億~10憶個存在します。このうち虫歯菌群は歯の表面にべたっと貼り付き、酸を出しエナメル質や象牙質を溶かして虫歯を作ります。また、歯周病菌群は歯ぐきの免疫系を乱して炎症を起こし、歯周組織(歯肉や歯槽骨など)を破壊して歯周病の原因となります。(参考:1㎎とは塩つぶ10個の重さに匹敵します)
細菌は凝集してバイオフィルムという細胞外粘性多糖体によるネバネバの膜を作り出します。(フィルムというと硬い膜を想像しますが、硬くはなくただのネバネバです)この膜に守られながら増殖を繰り返しているのです。細菌は一晩で1,000倍にまで増殖する事実を押さえておかなければなりません。
つまり、プラークコントロールとは歯ブラシと歯間ブラシなどを使い、このバイオフィルムを壊して細菌数を発症レベル以下に保ち続けることと言い換えられます。
2. プラーク付着の図
歯肉縁上プラークには比較的酸素を好む好気性菌が多く、歯肉縁下プラークには酸素が嫌いな嫌気性菌が多い傾向にあります。
お口の中に住みついている約500~700種類の細菌中の一部が病原菌ということになります。比率では善玉菌:悪玉菌:日和見菌=2:1:7くらいです。日和見菌というのは環境によって善玉菌側についたり、悪玉菌側につく所謂「日和見」ポジションをとる菌のことです。お口の健康を保つにはこの日和見菌を味方につけておくことが重要です。
また縁上プラークと縁下プラーク、あるいは善玉菌と悪玉菌は敵対関係にある訳でもなく、それぞれの菌が出す代謝産物が別の菌のエサになるなど共生関係にあります。そして人類誕生以来、ヒトと口腔内細菌も共存関係を続けています。
歯周病の発生は、この共存関係が増え過ぎ、悪性度が増したプラーク(バイオフィルム)によって均衡が崩れて起こります。これをマイクロバイアルシフトと呼びます。言い換えればマイクロバイアルシフトが起こらなければ歯周病は発生しません。
では実際の歯周ポケット内部の様子を九段ブルー歯科の内視鏡で撮影した臨床画像でご覧下さい。
3. プラークの付きやすい場所
(1) 上顎奥歯の頬側
(2) 下顎前歯の裏側
(3) 上下の歯の歯頚部と隣接部
隣接部(歯と歯の隙間)のプラークは歯ブラシだけでは50%程度しか落とせません。歯間ブラシやデンタルフロスの補助清掃用を用いなければ80%以上は除去できないのです。
4. プラークから歯石へ
2~14日間でこのプラークに唾液中のミネラル分が沈着して石灰化が起こります。これが歯石です。歯石の76%はリン酸カルシウムで出来上がっています。歯や歯根表面に沈着したばかりの歯石はミネラルの密度が低いので歯科医院で簡単に除去できます。
ガリガリと削られるような音を聞きながら30分以上にわたり“拷問“のような歯石取り(スケーリング/ルートプレー二ングと言います)を経験した患者さんで歯医者がすっかり嫌いになったケースは、沈着して時間の経過した硬い歯石だった筈です。
5. 歯石写真
歯石はご自身では歯肉縁上の軟らかい部分を除いて殆ど取り去ることができません。
6. 結論
7. 補足
よく患者さんから「毎日磨いて縁上プラークだけきれいにしても、縁下プラークが残っていては意味がないのではないか?」というご質問を頂きます。
答えは、「縁上プラークだけ落とすのも大きな意味がある。」ということです。
昔からいくつかの興味深い研究が行われてきました。その一部をご紹介します。
1) Lindhe 1989年 プラークコントロールの不良により歯周病は進行するが、歯肉縁上の良好なプラークコントロールを維持できれば初期の歯周病は改善がみられる。
2) Magnusson 1984年 中等度以上に進行した歯周病に歯石取り(スケーリング/ルートプレー二ング)を行ったところ、歯肉縁上プラークコントロール不良のケースでは改善が認められなかったが、良好なケースでは改善した。






