今日ご紹介するのは、「野性の叫び」(ウィリアム・A・ウェルマン監督、1935年、CALL OF THE WILD)である。ジャック・ロンドンの原作「荒野の呼び声」は、私も子供のころ読んだけど、何度も映画化されていて、1972年「野生の叫び」はケン・アナキン監督(主演はチャールトン・ヘストン)、1976年のTVM「荒野の呼び声」は、ジェリー・ジェームスン監督、1981年の「荒野の呼び声 吠えろバック」は日本製のTVアニメ、1993年の「野生の呼び声」はマイケル・トシユキ・ウノ監督、2020年の「野生の呼び声」は、クリス・サンダース監督、という具合だ。

 

舞台はアラスカ。発掘した金を持ってアメリカへ帰る途中、賭博のため有り金を失ってしまった主人公ジャックにクラーク・ゲイブル。酒場で居合わせたショーティ(ジャック・オーキー)から、金鉱を発見した男が権利を主張する前に死亡し、生前、息子あてに地図を送ったがその地図を見た、と聞いて、2人で探しに出かけることになる。

 

傲慢なイギリス人の探鉱者スミスにレジナルド・オーウェン。彼が殺そうとしている犬をジャックは引き取り、旅に加える。

 

動物文学が原作だけに、犬のバックの活躍シーンは多く、クラーク・ゲイブルと並んで主役級の存在感を放つ。

 

旅の途中、2人は狼に襲われそうになった女性クレア(ロレッタ・ヤング)を救う。彼女こそ、鉱山を発見した探鉱者の息子ジョン・ブレークの妻で、行方が分からなくなった夫を探すために彼らの鉱山発見に協力する。

 

犬のバックが瀕死のブレーク(フランク・コンロイ)を発見して、小屋に連れ帰って介抱するが、悪辣なスミスに脅されて鉱山まで道案内させた後、負傷させられたことが分かる。

 

クレアと恋に落ちたジャックだが、夫を助けたことでその恋も実らないまま、クレアは夫ともに去っていく。

 

ウィリアム・A・ウェルマン監督は、他のアクション・冒険作品においても人間ドラマの部分がよくできている、という印象だが、本作も、鉱山を探しに行くだけの話でありながら、悪役との対決、ロマンス、相棒との友情などを約80分にまとめ、最後まで飽きさせない。

 

バックが次第に野性に目覚めてゆく原作とはストーリーも趣もまったく異なるが、ジャックと愛犬バックとの友情は素晴らしい。クラーク・ゲイブルも、恋をあきらめ愛犬とも別れる寂しさを受け入れなければならない主人公を好演している。