ロビンフッドの復讐
今日ご紹介するのは、「ロビンフッドの復讐」(1936年、TheRobinHoodofElDorado)である。もう90年も前の映画だ。私のブログでもいくつか紹介している監督のウィリアム・A・ウェルマンは、アクションや冒険ものでも人間ドラマとしての描き方が巧い人だ。舞台は1840 年代。メキシコがカリフォルニアを米国に割譲し、土地と金を求める米国人の流入がメキシコ人たちの土地も生活も脅かされる中、彼らに抵抗したラテンアメリカのロビンフッドこと、伝説の農夫、ホアキン・ムリエタ(ワーナー・バクスター)の生きざまを描く。百姓の娘ロジタ(マーゴ)と結婚し、粗末な家ながら幸せな日々を送っていたが、付近に発見された金鉱を目当てにやってきて、ホアキンの所有地に金鉱のあることを知った4人組(ポール・ハーストら)が彼らを追い出そうとし、夫婦に暴力を加え、ロジタは犯され殺される。妻を虐殺されたホワキンは復讐の鬼と化し、彼らを次々と追いつめては殺すうち、高額な懸賞金付きのお尋ね者になってしまう。もちろん、アメリカ人みんなが残虐ということではない。ビル(ブルース・キャボット・右)とジョニー(エリック・リンデン)とひょんなことから知り合い、唯一のアメリカ人の友となる。2人はホアキンに逃げるように勧め、田舎にある兄ホセ(カルロス・デ・バルデス)の農園に逃れるが、暴虐なアメリカ人たちの手はここにも伸び、兄は馬泥棒の罪を着せられて非業の死を遂げ、ホアキンもリンチに遭う。そのときホアキンを救ったのは「3本指のジャック」という兇賊(J・キャロル・ネイシュ)だった。ホアキンは彼らのリーダーとなり、復讐団を組織してアメリカ人たちと戦う。メキシコ人たちが羨むような生活を送っていた地主の娘ワニタ(アン・ローリング)ですら、父を殺され窮地に追い込まれており、ホアキンたちの組織に加わる。ホアキンたちが金塊を積んだ騎馬車を襲撃する際、流れ弾に当たって亡くなった乗客の若い娘(ケイ・ヒューズ)がジョニーの婚約者であったことから、ビルやジョニーはついに討伐隊に加わり、ホアキンを追う。クライマックスのアクションよりは、虐げられるメキシコ人の復讐心、恋や友情などに力がそそがれているのはウェルマン監督ならではだろう。メキシコの英雄ホアキン・ムリエタを描いたドラマはほかにもいくつか作られているようだ。