今日は、久しぶりのアメリカ映画です。「エルマー・ガントリー 魅せられた男」(1960年)を紹介したい。私の好きなリチャード・ブルックスが監督しているが、日本人には馴染みのない信仰復興(リバイバル)をテーマにした映画であることもあって、これまで観ていなかった。

 

主役のエルマーを演じたのは、バート・ランカスター。自らを偽善者と呼ぶセールスマンが、清純な女性教祖の魅力に取りつかれ、口八丁手八丁の才能を駆使して、信じてもいないキリスト教の教えを説き、伝道団きっての弁士になっていく。

 

伝道師のシャロンにジーン・シモンズ。個人的には、史劇によく出てくる女優というイメージだった。エルマーが彼女に惹かれたのは、単に好色漢だからということでなく、宗教に対する敬虔な想いもある、というあたりが巧く描かれている。

 

新聞記者を演じたアーサー・ケネディは、エルマーの偽善を見抜き過去を暴きつつ、彼に惹かれてしまう重要な役どころを演じる。

 

伝導団の中で歌の巧い女優がいるなと思ったら、ジャズシンガーのパティ・ペイジではないか。映画に役者として出ているのは初めて知りました。

 

ディーン・ジャガーのほか、ジョー・マロス、エドワード・アンドリュース、ジョン・マッキンタイアなどが脇を固めている。

 

昔、エルマーに遊ばれて捨てられ、娼婦になったルル(シャーリー・ジョーンズ)は、聖人君子のよう人間になりすまして有名になったエルマーを窮地におとしいれる。

 

リバイバリストの活動自体、馴染み薄く、なかなか理解できないこともあって、各地でテントを仮設して伝道して回る彼らの信念、苦労のようなものとはかなり離れたところで画面を観ているような気分になる。

 

エルマーの尽力もあって、長年の夢であった自分の教会設置がようやく実現できたシャロンだったが、

 

シャロンは焼け死に、エルマーは頂点からどん底へと突き落とされる。バート・ランカスターは本作でアカデミー主演男優賞を受賞した。個人的には、女性伝道師との出会いの中からエルマーが真の愛に目覚めていく過程よりも、昔、ひどい仕打ちを受けたルルが最後にはエルマーをかばい、またエルマーも罪を悔い改める、というところのほうが印象的だったなぁ。ちなみに、ルルを演じたシャーリー・ジョーンズも、助演女優賞を受賞している。

 

余談だが、童話・ボンゴ(子ぐま物語)の執筆、ノーベル文学賞受賞、ピューリッツァー賞の辞退をはじめ、さまざまなエピソードのある原作のシンクレア・ルイスの65歳の生涯も興味深いものがあるなぁ。