昨日に引き続き、唐寶雲(タン・パオユン)と倉田保昭コンビ作を紹介したい。日本では劇場未公開、張美君(チャン・メイシュン)監督の「大追蹤」 (1974年、Fists for Revenge)である。前回同様、画質が劣悪で天地左右も切れたりしている点はご容赦ください。

 

幕開けは監獄のシーンから。金塊を盗んで牢獄行きとなった3人組が、自分たちをはめて金塊を独り占めにしようとした仲間に復讐するために脱獄する。

 

とある一軒家で食べ物を物色していた3人組。戻ってきた主の老人(葛香亭)は親切にも見知らぬ訪問者たち3人に食べ物を提供してくれる。そのあと出かけていた孫の姉弟も戻ってくるが、

 

3人組は非情にも、老人を殺し、孫娘をレイプし、家屋を焼いて去っていく。

 

その悪い3人組が、こいつらです。左から、

 

悪いことする面構えには決して見えない唐威(タン・ウェイ)、

 

今回は中国人役(たぶん)の倉田保昭。

 

そして、悪役ではお馴染みの蔡弘。とぼけた表情や仕草など、画面でも唐威より目立っちゃう。

 

祖父を殺され、自身もレイプされた姉に唐寶雲(タン・パオユン)、小さな弟に金廷勳。2人は復讐のために三人組の行方を追う。

 

謎の男として登場するのが高強だ。探りを入れようと三人組に接近するたびに、姉弟の行く手にことごとく現れるため彼も一味だと勘違いされるが、実は犯人を追う武官であった。こう書くと、ワクワクする展開が待っているような気もするが、よく練られたプロット、巧みな伏線、観る者をあっと驚かせるどんでん返し、胸のすくような痛快なアクション、そういった類のものは一切なし。代わりに、無理のあるストーリー、あり得ない設定、都合の良すぎる展開、何度やっつけてもすぐ起き上がってくるので一向に敵が減らないアクションシーンがもれなく付いてきます。

 

リアリティのない稚拙な演出も一度容認できればOK。情報を得るために娼館に入った高強の後を追って、子役の金廷勳が髭を付けて大人に化けて潜入するシーンなどもコミカルで楽しめること間違いなし。ホンマか。

 

3人組を裏切って金塊を独り占めしたのが韓英傑(ハン・インチェ)。ワルの上を行くワルだが、本作では悪役が増えすぎるためか、3人組に殺されてしまう。

 

後半は、高強と唐寶雲が協力して敵に立ち向かうが、子役の金廷勳が余計な首を突っ込んで人質として捕らえられて足手まといになる、という予想を裏切らない展開となる。

 

地元の警備隊長に邵羅輝。三人組に抱き込まれて、高強と唐寶雲を逮捕しようとするが、土壇場で三人組を捕らえる側に回る。演出的には意表を突いたどんでん返し(強盗が主役だから強盗返しか)のつもりだろうが、この隊長、「最初はすっかり彼らに騙されてましたよ」と打ち明け、本当に武官を逮捕するつもりの間抜けだったようである。

 

アクションシーンは、よく言えばふんだんにあり、悪く言えば、ほかに見せるネタがないからと言わんばかりに続く。もうちょっとまともな映画なら、悪役3人の人物設定が細かく作り込まれて、それぞれ性格の異なる役柄の演技を楽しめるんだろう。ところが、「ただの悪い3人組」という程度のキャラ設定のため、観る側もドラマに入り込めない。だからいつでも一時停止してトイレに立ったりコーヒーを淹れに行ったりできるんである。なのに、こんな幼稚なレベルの作品がときどき無性に観たくなる私も精神的に幼いのかなと思ったりもする。もしや年寄りの幼児化?

 

本作でも熱演の唐寶雲は、主役オーラの薄い高強とタッグを組むことで、画面でのアピールの点でも悪役3人と懸命に張り合おうとしているようだ。

 

主役のオーラにもストーリーにも期待できない功夫映画は、アクションが命。唐寶雲の復讐心に燃えたアクションからも真剣さが伝わってくるが、

 

やはり、空手七段、柔道三段、合気道二段の倉田保昭が、アクションシーンの引き締め役になっているのは否定できない。次回も、現在77歳の彼が若かりし頃のキレのあるアクションを見せてくれる作品を紹介したい。身体のキレも頭のキレも失われている私にとっては、こういう映画こそが何よりの若返りの秘訣かな…って、若返ることは絶対ないけど。