中華系映画の紹介が続きます。今日は功夫ものじゃないけど、ルー・チューアン(陸川)監督の「ココシリ」(2004年、可可西里、Kekexili: The Mountain Patrol)を取り上げたい。舞台は、チベット最後の秘境の地「ココシリ」。海抜4700メートルの厳しい自然の中、密猟団から絶滅の危機に瀕するチベットカモシカを守る民間の山岳パトロール隊たちの日々を描いたドラマだ。


密猟団を見つけた山岳パトロール団員が、逆に密猟団に殺されるシーンから映画は始まる。実話を基にしたというが、幕開けから身の毛がよだつシーンだ。

 

パトロール隊のリーダーにデュオ・ブジエ(多布傑)。

 

取材のため北京からやってきた記者のガイ(張壘、チャン・レイ)はパトロール隊に密着同行する。

 

隊のリーダーの娘が登場するのを最後に、厳しい旅がスタートする。

 

チベットカモシカの違法屠殺を撲滅するために設立されたパトロール隊は、自費で組織された任意団体に過ぎない。たった1人で監視基地を守る隊員もいる。

 

1980年代、チベットカモシカの毛皮の利益を狙った密猟者が増加、チベットカモシカは絶滅危惧種に指定された。密猟者たちは武装しており、パトロール隊の目をかいくぐってチベットカモシカを大量に捕殺していく。

 

記者であるガイ彼の目を通して、映画は密猟者とパトロール隊との闘いや、想像をはるかに超える厳しい現実を突きつける。密猟事件は100件以上、押収されたチベットカモシカの毛皮は4000枚近くに及んだとされている。

 

密猟者たちを捕まえる隊のリーダーだったが、彼らは生活のために皮をはぐ、いわゆる下請けに過ぎず、密猟団のボスを捕らえない限り、何も解決しない。

 


食料も燃料も尽きた隊は、彼らを釈放せざるを得ず、過酷な大自然の中に置き去りにする。

 

燃料がなくなり死んでいく隊員もいれば、負傷した隊員を病院に運んだ帰りに流砂に飲み込まれて死ぬ隊員(キィ・リャン、奇道)もいる。

 

厳しい大自然の中、密猟者たちをひたすら追い続ける旅は極めて過酷だ。

 

隊員の恋人(チャオ・シュエジェン、趙雪瑩)の口からも、チベットカモシカを守るため、武装した密猟者や過酷な自然を相手に無給で働く男たちはなぜ命をかけて闘うのか、が問われる。

 

映し出される自然は美しいが、隊員たちにとっては、密猟者たちとの闘い以上に厳しい。

 

とにかく有無を言わせず、厳しい現実を突きつけ、ただただ圧倒される作品だ。私の駄文では、うまく表現できないが、そもそも余計な解説を加えるよりは、観ていただくしかない、という類の映画です。