今日ご紹介するのは、ジョセフ・L・マンキーウィッツ監督の「記憶の代償」(1946年、Somewhere in the Night)である。

 

大戦中、主人公は手榴弾の直撃を受けて記憶喪失になる。

 

回復後、主人公(ジョン・ホディアク)は、自分の名前がジョージ・テイラーであることを知り、除隊する。仲間らしきラリー・クラバットという男からの手紙を頼りに、自分の正体を探ろうとするサスペンスだ。ホテル、銀行、ナイトクラブなど手がかりを追ううちに、クラブのウェイターは殺され、自らも暴行を受けるなど危険にさらされ始める。

 

テイラーは、ナイトクラブの歌手クリスティ(ナンシー・ギルド)に出会い、すべてを打ち明ける。

 

彼の力になろうと、クリスティは友人のフィリップス(リチャード・コンテ)に協力を請う。

 

フィリップスは親しいケンドール刑事(ロイド・ノーラン)とテイラーを引き合わせる。主人公のテイラーは自分が何者かを知っているであろうラリー・クラバットが大金をナチスから強奪し、さらに殺人容疑で指名手配されている男だと知る。

 

自分が何者かを知るためにラリー・クラバットを探すテイラーは、フィリス(マーゴ・ウッド)という女と知り合ったのがきっかけで、

 

自分を袋叩きにしたアンゼルモ(フリッツ・コルトナー)の一味に再び接触し、さらに真相に近づいていく。

 

当時の犯行の目撃者コンロイの娘(ジョセフィン・ハッチンソン)から、目撃者である父親が療養所に収容されていることを知るが、

 

コンロイ(ハウスリー・スティーヴンソン)も監視状態にあった。

 

自分が何者かを突き止めようとするうちに、次々と怪しい人物が現れ、謎の男にずっと尾行されるテイラー。

 

金の隠し場所を突き止めた主人公がクリスティとスーツケースを見つけた途端に銃撃に遭ったり、

 

間一髪でフィリップスが助けに来るなど、謎解きが進行しながらも、スリリングなシーンが続き、画面から目が離せない。

 

彼らが逃げ込むBrother Williams Mission (日本語訳では教会救済所)のシーンもいい。

 

コンロイの娘を演じたジョセフィン・ハッチンソンも印象的だが、ヒロインのナンシー・ギルドが表情から仕草までいい。まあ、個人的に好みのタイプというだけですが。

 

主演コンビとしては何となく釣り合っていないように見えるが、主人公は「友人が犯罪者なら、自分も仲間だったかも」に始まり、「どうやら自分が殺人犯のラリー・クラバット自身だったようだ」と思いこむというふうに展開していくので、悪事を働きそうにない顔立ちの俳優はNGなんだろうな。

 

配役が素晴らしく、特に助演陣がいずれも活き活きと演じているのが印象的。エンディングなどはロイド・ノーランが締めくくります。

 

10枚組で2,000円程度のBOXということもあり、ハズレでも劇場未公開作品が見られるし、2つか3つ、当たりの作品があれば、ついまた買ってしまう。本作はまさにその「当たり」の一作であった。