70年代の映画はかなり観ているけど、まだまだ紹介していないものもたくさんあります。
今日は、ポール・ニューマン監督2作目、「オレゴン大森林/わが緑の大地」(1971年)。オレゴン大森林地帯を舞台に伐採者一家を描いたドラマである。
全組合員がストライキを強行する中、スタンパー一家は取引会社への納期を死守するため、町中を敵に回して伐採を続けていた。まず彼らの顔ぶれが素晴らしい。息子のハンクにポール・ニューマン。
頑固一徹を絵に描いたような父にヘンリー・フォンダ。
ハンクの妻にリー・レミック。
従兄弟のジョーにリチャード・ジャッケル、その妻にリンダ・ローソン。
ある日、ハンクの腹違いの弟リーランド(マイケル・サラザン)がやってきて家業を手伝い始める。
大自然の中での彼らの1日が描かれる。向こう見ずで頑固な一家、特に父親はリーランドの長髪でヒッピーのような風体が気に入らないが、少しでも人手が必要な状況でもあった。懸命に働くリーランドの存在は、男尊女卑を絵に描いたような一家に徐々に変化をもたらしていく。
スタンパー家の行動に我慢ならない組合員たちに、ジョー・マロス(右)、チャールズ・タイナーなど。
これだけの役者が揃うと、それで満足してストーリーや演出の細かいところには目をつぶる気にもなろう。敵対する組合員たちにトラックも破壊され、伐採した大木を川に直接落とす作業中、父が大怪我を負う。
同じタイミングでリチャード・ジャッケルも大木の下敷きになってしまう。アカデミー助演男優賞にノミネートされた素晴らしい演技だが、それ以上に衝撃的なシーンで、何ともやりきれない気持ちにさせられる。ちなみに、ヘンリー・マンシーニの主題歌も歌曲賞でノミネートされている。
ヘンリー・フォンダは黙っていても存在感がある。彼の出番がなくなるまでは、ポール・ニューマンも随分控えめだ。
マイケル・サラザンは、70年代に「ロイ・ビーン」、「黄金の指」、「またまたおかしな大追跡」、「激走! 5000キロ」などさまざまな映画で活躍したが、特に演技派というわけでもなく、主演作品でも何となく掴みどころのない存在であった。だが、芸達者な役者たちに囲まれると、彼のそんなところが逆にいいんである。フォンダ、ニューマン、ジャッケルの存在感は言うまでもないが、映画ってそれだけではないのだろうなぁ。空気のようなサラザンが、とにかくいい。
クライマックスで表現されるのは、まさに「男の意地」であり、今の時代にはそぐわないテーマなのかもしれない。
学生時代に地方の映画館で公開され、限られた小遣いの中から「どの二本立を見るべきか」と悩み、ワクワクしながら多くの作品や俳優に出会った。70年代の映画は私にとってそんな身近で特別な存在であり、DVDなどでいつでも手が届くのは確かに幸せなことなのだ。とはいえ、あれから50年が経っている。この作品にしても、80年代にフォンダ、90年代にレミック、ジャッケル、2000年以降、ニューマン、ローソン、サラザンと、スタンパー家の全員が亡くなってしまい、今ではこんな素敵な俳優たちに、こういう形でしかお目にかかれないのだと思うと、何とも言えない気持ちになります。