銃をテーマにしたりタイトルにした映画はいくつもあるが、やはり代表作は「セーラー服と機関銃」で決まりではないだろうか……なんていうボケはさておき、銃社会の問題に斬り込んだマイケル・ムーア監督のドキュメンタリーなど一部の作品を除けば、やはり派手なガンアクションを見どころとした映画が多いように思う。

 

今日ご紹介するのは、ジョセフ・H・ルイス監督の「拳銃魔」(1949年、GUN CRAZY)。原題の通り、銃に異常なほどの執着を持つ男が主人公だ。「銃を片時も離せないし腕前も一流なのに、殺生は嫌い」という男が、悪女と恋に落ち身を滅ぼすまでを描く。

 

少年が銃器店のショーケースを割って銃を盗むシーンから映画は始まる。

 

その直後に裁判のシーン。少年バートの姉(アナベル・ショウ)が、弟は銃なしでは生きられないくらい夢中になっているが、どんな小さな生き物でも殺せないと証言し、トラウマとなったエピソードを披露する。友人たちも同様の証言をし、主人公の銃への傾倒ぶりと殺生とは縁遠い人となりが紹介される。

 

少年院を出た後、第二次大戦に参加して復員し故郷に戻ってきたバート(ジョン・ドール)は青年になっている。当時の友人たちとショーを見に行った際、

 

射撃の女王アニー(ペギー・カミングス)と出会う。

 

射撃の腕で彼女を打ち負かしてしまったバートは、アニーに一座に誘われるが、アニーを自分の女だと考えている座長(ベリー・クルーガー、写真左)は面白くない。

 

バートとアニーは一座を去り、結婚をするが、贅沢な暮らしがしたいアニーは普通に働こうとするバートの真面目な生き方が我慢ならず、彼への愛情も冷める。

 

結局、アニーにそそのかされる形で2人は辻強盗まがいのことをして渡り歩く生活を始める。

 

警察にも追われるようになり、今の生活に早く終止符を打ちたいバートだったが、海外で暮らすため最後の大仕事をしようというアニーの提案に従ってしまう。

 

食肉加工会社での給与強奪シーンは70年前の映画という古さをまったく感じさせない緊迫感とスピード感に溢れている。

 

生き物は撃たないという誓いを守り続けたバートだが、一方のアニーはこの強盗で2人も殺してしまう。

 

車の後部からのアングルで撮られる逃亡シーンは新鮮でエキサイティングだ。

 

バートの少年時代からの親友(ハリー・ルイスとネドリック・ヤング)は彼に自首を勧めるが、

 

映画は、最後の最後まで逃げようとする2人の姿を映し続ける。

 

殺生などできない主人公が、必要であれば殺人も平気な女に恋をしたせいで犯罪を重ねるようになる。追い詰められながら愛情が一層深まっていくあたりが、何とも言えない気持ちにさせられる。実に面白く、終わった後に大きな満足感を得られる傑作である。