今年の夏もまた暑いですね。出かけると、日に焼ける。車に乗ると右腕が焼けたりするが、シミになるから、手だけでなく顔を焼くのも気をつけなければなりません。。

 

というわけで、やらなくてもよかった前振りですが、今日は「顔を焼く」じゃなくて「暗黒街の顔役」(1932年、Scarface)、ハワード・ホークス監督の代表作の一つにもなっているギャング映画だ。

 

ギャングのボス、コステロの用心棒だった主人公のトニー・カモンテ(ポール・ムニ)は、敵のボスであるロヴォに買収されて自分のボスを暗殺する。

 

ロヴォ(オズグッド・パーキンス)に認められてナンバー2の座を射止めるが、野心が異常に強いトニーは、ボスの地位も狙う。

 

ボスの反対にも構わず、北部のボスを射殺し縄張りを拡げる。さらに、ロヴォの情婦(カレン・モーリー)も自分のものにし、大きな権力を握るようになる。

 

トニーの弟分にジョージ・ラフト、トニーの妹にアン・ドヴォラック。

 

勢いの止まらないトニーを演じたポール・ムニの演技は迫力満点だが、サイレントからトーキーへの過渡期ということもあってか、演技そのものが無声映画のそれから抜け出していないのが面白い。

 

間抜けで電話もろくにとれないトニーの秘書役のヴィンス・バーネットのコミカルな演技も、サイレント映画を見ているような気分にさせられる。

 

ボリス・カーロフもギャグのボス役で出演している。

 

妹にだけは堅気の道を歩んで欲しい、と厳格な父親のような態度で接してきたトニーだが、その愛情が裏目に出る。

 

機関銃での殺戮やカーアクションシーンも散りばめ、娯楽作品としても楽しめると同時に、そうした肉親の情を描く。ちょっとしたシーンにもホークス監督の巧さが感じられる。90年前という古さをまったく感じさせない傑作だ。70年代の映画を見ると学生時代を思い出したりもするが、90年前というと当然生まれていないからね。前世の自分を思い出してノスタルジックな気分に浸ったり……するわけない。

 

この映画から約50年経って、ブライアン・デ・パルマ監督がアル・パチーノ主演でリメイクした「スカーフェイス」が作られている。50年前のことは断片的でも鮮明に思い起こされるが、「昨日食べたご飯は何だったかな」、「この部屋に何を取りに来たんだっけ」など、昨日、今日のことは不鮮明なことが多く、厄介です。