今日ご紹介するのは、香港武侠映画、「保鏢」 (1969年、Have Sword, Will Travel)である。監督は張徹(チャン・チェ)で、多く撮られたティ・ロンとデヴィッド・チャンのダブルキャスト作品としては、これが最初なのではないだろうか。

 

オープニングのタイトルバックはこんな感じで、ちょっとワクワクもしたりするが、

 

映画が始まると、冒頭から「あれ、アクションものじゃなかったのか」と思わせるようなシーン。花に囲まれた場所で仲良く愛を語らう2人は、

 

まだあどけない表情の狄龍(ティ・ロン)と

 

婚約者の李菁(リー・チン)。

 

「無敵荘」の主が毎年運搬する金20萬両の強奪を目論む盗賊たちと主人公たちの戦いを描いた作品だ。盗賊のボスに谷峰。

 

ここに登場してくるのが主役の姜大衛(デヴィッド・チャン)だ。どこから来たかも分からない謎の侠客に窮地を助けられた李菁は彼に恋心を抱くが、婚約者の狄龍はそれが面白くない。そんな三角関係を後半まで引きずったままで展開するので、アクション映画であることをつい忘れてしまうほど。

 

無敵荘の主人に井淼。左は鄭康業。

 

鄭雷や王光裕、

 

ボスの谷峰の手下で腕の立つ聴唖者の王鍾をはじめ、洪流、劉剛、古龍などが顔を出している。

 

中でも、盗賊一味の強者として出てきて、「えっ、もしかして?」と驚いたのが陳星(チェン・シン)。出番は実に短く、まだ表情も初々しいが、顔はすでにこの頃から濃いね(笑)

 

クライマックスとなる塔の中での死闘。ようやくアクション映画らしさが見られるものの、姜大衛は瀕死の重傷を負う。塔の階段から転落してすでに起き上がれなくなっていたはずなのに再び立ち上がって歩き出す。

 

去っていく途中で倒れ、ああここで終わりか、と思ったら、

 

再び立ち上がるので私も李菁もびっくり(笑)。で、馬にまたがるがすぐに落馬して動かなくなる。「もしかしたらまた起きたりしてね」と思っていたら、やっぱり立ち上がったよ。

 

死んだと思ったらまた起きる、の繰り返しで引っ張り続ける演出には興醒めし、うんざりしたが、張徹監督としては闘いのシーンでなく、ここが最も力の入ったクライマックスだったんだろうね。ようやく絶命し、このあと夕日のショットでエンドマークという思い入れたっぷりに終わる。このあたりが、名作をたくさん撮っている張徹監督の個人的に好きになれない部分ではある。

 

姜大衛と狄龍のコンビ作って、二枚目の狄龍がいいとこ取りするイメージもあるが、「刺馬」では狄龍がイヤな役だった。この作品でも李菁が姜大衛に奪われないかと心配し、姜大衛は盗賊の一味なのではないかと疑う器の小さいお坊ちゃんを演じているが、そんな2人に挟まれた李菁が彼らに負けじと熱演しているのが印象に残った。

 

私も齢を取って、昔は大食いだったのが最近はすっかりご飯の量が減り、器が小さくなってしまった……って茶碗の話かい!