今日ご紹介するのは、岡本喜八監督の1967年の「殺人狂時代」である。都筑道夫の「飢えた遺産」を原作にした異色のコメディアクションだ。

 

主人公は近眼にボサボサ頭に水虫持ちと、うだつの上がらない大学講師の桔梗信治。このキャラを演じた仲代達矢が実にお見事。彼は、「大日本人口調節審議会」の男の訪問を受け、命を貰うと言われるが、逆に彼のほうが命を落とすことで、組織から狙われる。

 

人口調節を目的に世の中の無駄な人間を殺す組織。ヒットラーに心酔する精神病院の院長に天本英世、元ナテスの男にブルーノ・ルスケ。

 

主人公に協力するのがコソ泥の砂塚秀夫と、記者の団令子。2人とも大熱演で、最後まで物語の中心になって活躍する。

 

一見、冴えない大学講師の仲代が別人のようになって敵に立ち向かう展開がいい。

 

また、団令子が主人公誘惑したり敵に囚われたりと、仲代を振り回す重要な役どころを溌剌と演じている。

 

このほか、義眼の殺し屋に富永美沙子、

 

松葉杖の男に久野征四郎、

 

二瓶正也、江原達怡、樋浦勉など。風刺の効いたシュールでヘンテコな作品だが、いつのまにか岡本喜八監督の世界に引きずり込まれてしまう。映像も活き活きしていて、映画好きにはたまらなく楽しい一作である。