今日ご紹介するのは、小津安二郎の「戸田家の兄妹」(1941年)である。裕福だった戸田家の当主が心臓病で亡くなり、しかも大きな借金を抱えていたため、建物や土地などをすべて売り払うことになる。



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長男、長女、次女には家庭があるため父の死を冷淡に受け止められるし、次男は地方への転勤を決めるが、実家で暮らしていた母(葛城文子)と三女の節子(高峰三枝子)は行き場を失い、兄・姉たちの家をたらい回しにされる。



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長男(斎藤達雄)とその妻(三宅邦子)、長女(吉川満子)、次女(坪内美子)とその夫(近衛敏明)と、母親や妹を厄介者扱いする彼らの言動を通して、愛情を失い絆の崩壊した家族が描かれる。女たちはことごとく意地悪く、男たちは臆病で卑怯である。2人は寂れた別荘地で貧しく暮らすことを決めるが、



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父親の一周忌に駆けつけた次男(佐分利信)がそれを初めて知り、冷たい親子関係や兄弟たちの誠意のなさに怒りを爆発させる。ドラマの流れが急に勧善懲悪調に変わって、個人的にはそういう爽快感の与え方にちょっと戸惑いも覚えるが、まあ、こういう形でなければ救われない結末になるんだろうなぁ。



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同じように不自由なく育った子供たちのはずだが、長男や長女、次女と対照的に、三女の高峰三枝子は母親思いで心清らかな、お嫁さんにしたいナンバーワン的な女性として描かれる。



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彼女が働く決意を表明したとき、親友の時子が、あなたは育ってきた環境が違う、と言う。そんなちょっとしたシーンがいい。ちなみに、この桑野通子は、桑野みゆきの母親である。


しかし、裕福な人が没落した生活を送るのも大変である。私は明日の米もない時期こそあったが、裕福な思いを一度も経験したことがないから、その点、気楽だな。



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