今日ご紹介するのは、ウィリアム・ワイラー監督の「探偵物語」(1951年)である。シーンの8割はニューヨーク21分署の刑事部屋。そこでの一日を描いたシドニー・キングスレーの舞台劇を映画化した作品である。
冒頭、初めて万引きをして捕まった女性（リー・グラント)が分署に連れてこられる。刑事部屋では日々、どんな出来事が起こっているのか、観客はまさに彼女の目線で映画を見ることになる。
鬼刑事、マクラウドを演じたカーク・ダグラスが大熱演。これだけでもこの映画を見る価値があるといっていいだろう。
その妻には、エレノア・パーカー。彼女が最終的にはマクラウドに扱っている事件に絡んでくるのが実に面白い。
マクラウドが何とかして証拠を掴んで刑務所に送りたい堕胎医にジョージ・マクレディ。
会社のわずかな金を使いこんだ、真面目そうな青年にクレイグ・ヒル。彼女の恋人の妹にキャシー・オドネル。この青年に温情のこもった態度で接する人情家の刑事にウィリアム・ベンディックスなど。
宝石強盗の2人組にジョセフ・ワイズマンとマイケル・ストロング。罪を犯した人間たちと刑事たちとのやりとりが1つの部屋で行われる様子が描かれる。
多忙極まりない刑事部屋の様子を、複数の事件をうまく観る側を引き付けながら撮っておいて、しかも徐々にマクラウドの事件と心情に照準を合わせていく。ワイラーの職人的な技とカーク・ダグラスの気合いの入った演技が見事にマッチした佳作だと思う。ダグラスはゴールデングローブ賞、パーカーはアカデミー賞にそれぞれノミネートされているが、同じくゴールデングローブ賞にノミネートされたリー・グラントも含め、俳優陣がすべていい存在感を出している。
映画好きには一度見ておきたい作品の1つであろう。
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